今回お伝えしたのは、駅名の変更について
江北町の「旧・肥前山口駅」です。
西九州新幹線で停車する駅の近くにあり、町では知名度の向上を狙って、
開業のタイミングで「江北駅」に駅名を変えました。
駅はJR沿線をたどる、あるルートの“終着駅”としても知られ、鉄道ファンにとっては「聖地」のような存在でもありました。
肥前山口駅、最後の日の様子をお伝えします。
それでは、出発進行!
【100年余りの歴史 最後の日には大勢のファンの姿が】
駅名「肥前山口」最後の日となった2022年9月22日。
午前10時に肥前山口駅に到着すると、驚きの光景が・・・
駅の南北通路には人、人、人!
昼前の時間帯、いつもならお世辞にも人でにぎわっていると言えない駅ですが、
この日は大勢の人の姿が。
なんと切符売り場から伸びる長蛇の列でした。
なぜ?疑問に思った私は切符の購入客に話を聞きました。
「肥前山口としての印字がきょうで最後。
記念として切符を買いに来ました」
そのほか、聞いてみると
「入場券を買いに来ました」
「肥前山口から早岐経由の肥前山口駅着の切符を買いに来ました」
「肥前山口から嬉野温泉駅の切符を買いに来ました。
システムが変わる前だから、江北と印字されないのです」などなど・・・
なるほど、こういった楽しみ方もあるのかと新たに学んだ瞬間でした。
記念に私も取材後、買ってみました。(肥前山口駅ではなく佐賀駅での発券ですが・・・)
【究極の鉄道旅の終着駅としても最後・・・】
肥前山口駅、この日はもうひとつの最後を迎える日。
全国のJR鉄道網を“一筆書き”でたどるルート「最長片道切符の旅」の終着駅としてもラスト。
一度通った駅は二度通らないルールに従い、始発の北海道・稚内駅から終点の肥前山口駅まで全国のJR線およそ1万1000キロ余りを旅します。
“究極の鉄道旅”ともファンの中では呼ばれています。
2004年にNHKで放送された旅番組で、このルートが広く知られました。
この日は、最長片道切符の終着駅として最後の日というのもあり、
北海道・稚内駅から、このルートをたどって駅に到着した人が次々と到着。
その旅人の一人にお話を聞くと、
「当時4歳のころ、2004年のNHKの番組の最長片道切符の旅の中継を見て、
いつか自分もやってみたいと思って。
大学4年の最後の夏休みの思い出として、この旅に挑戦しました」
切符を見せてもらうと、無数の途中下車印、
中央には旅の終わりを意味する肥前山口駅の無効印が。
途中下車を繰り返すことで、旅の良さを感じたと話します。
「途中下車してみないとわからない駅が多くて、それで初めて知る知識というか、
現地の人と出会って地域のことについて知ることができました」
「特に最初の途中下車駅の北海道・音威子府駅。8月のお盆の時期で大雨が降って、
いきなりバスの代行運転になりました。当時はどうなることかと思ったけど、
今となっては良い思い出ですね」
終着駅というのもあってか、同じルートをたどり、
旅先で2度(群馬県の前橋駅・京都府の城崎温泉駅)出会った友人と、再開したのです。
最後は二人で最長片道切符の旅の終着駅のモニュメントの前で写真に収まりました。
この直後にお二人から出てきた言葉が印象的でした。
「終わっちゃったね、終わったんだな。宝のような時間だったのかもしれないですね」
偶然にも、2004年のあの番組の最終回で、関口知宏さんが肥前山口駅に到着した後に発した言葉と同じだったのです。
それだけ、この稚内駅から肥前山口駅までの日々が濃密だったのかもしれません。
ただ、この終着駅。
次の日(9月23日)、新たに西九州新幹線が開業。それに伴って、一筆書きのルートが変わり、長崎県の新大村駅に終着駅の座を譲ることに。
記念碑、いったいどうなるのか?
駅を訪れた江北町の山田町長に突撃しました。
「最長片道切符の旅の終着駅じゃなくなりますけど、記念碑はどうするのですか?」
「もちろん撤去は致しません。これは私たちの駅の大事な歴史の一つだと思いますし、
それこそ宝だと思っていますので、これからもしっかり残していきたい」
多くの人に親しまれてきた「肥前山口」。
これからは「江北」として出発です。
【動画はこちら】
【こちらもぜひ】
「NHK佐賀発!鉄道150年 列島縦断 鉄道12000kmの旅 最長片道切符でゆく42日」
終点・肥前山口駅に到着する最終回を「NHKプラス」で配信中※別タブで開きます
(佐賀放送局・保田一成)