佐賀・小城ようかん 20歳の後継ぎに密着!(2022年12月2日放送)

アナウンサー・小林将純
2022年12月6日 午後2:25 公開

小城ようかんの職人に密着!

佐賀県・小城市と言えば、「ようかん」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?
約20のようかん専門の菓子店が軒を連ねる小城。毎年秋には、ようかんの祭りも開催されるほど!
そんなようかんの街、小城で気になる店を、カメラ片手に密着取材しました。
何を隠そう、私、小林、大のようかん好きなんです。
小城のようかん専門の菓子店には全て行ったことがあります。そんな私が、いま気になる店を訪ねました。

密着1日目/20歳の後継ぎ・石川純平さん

向かったのは、若い青年がようかん作りに励んでいるという噂の店。
午前9時。開店と同時にのれんをくぐると、若い青年が!

いらっしゃいませ!
明るく元気な接客で出迎えてくれたのは、石川純平(いしかわ・じゅんぺい)さん。
実は石川さんは20歳。老舗ようかん店の5代目として祖母から店を継いだのです。
密着した日は、店の看板商品、黒いちじくが入ったようかんを作る予定でした。

石川さん)「味には自信があったので、完璧に自分が継承できれば、ようかん屋としてはやっていける!

開店後、さっそくようかん作りへ。

まずは、一晩つけておいた寒天と水を大鍋へ投入。
火にかけ、ひと煮立ちしたら材料を混ぜ合わせます。よく混ざったのを見て、今度は砂糖に、白あんと加えていきます。
開店から30分。手際よく作業を進めていきます。

火にかけること20分。ここでようやく主役のお出まし!

自家製の黒いちじくのジャムです。ジャムの重さは6キロ以上。
ようかん1本につき、いちじく2個使われています。

ここで、気になる動きが…。
石川さんが、木べらを使って、ようかんを持ち上げては下ろし、また持ち上げては下ろしと何度も繰り返していくのです。

実は、この動作がとても大事なんです。
この店のようかんの特徴は、しっかりとした歯ごたえ。
水分を飛ばすことで、ようかんはしっかりとした歯ごたえになります。
木べらでようかんを持ち上げていたのは、手に伝わるようかんの固さや目で見てようかんの粘りを確認していたのです。

石川さん)「うちのようかんが自分で食べてもおいしいなと思えるようかんなので、やっぱり(ようかんを)作っている時が一番楽しい」。

火にかけ続けること、約1時間。
ようやく火を止め、ようかんを鍋から上げました。ようかんが固まるまで待ちます。

「祖母の味を残したい」揺るがぬ思いを胸に…

石川さんがこの世界に飛び込んだのは、祖母・ユキ子さんの影響でした。

幼いころからおばあちゃんっ子だった石川さん。
ようかんは、ユキ子さんとの思い出の味だと言います。

石川さん)「毎週泊まりに来るくらいおばあちゃん家が好きだった。弟と2人で泊まりに来て、朝出来上がったばかりのようかんを食べることをよくしていた」。

ところが、ユキ子さんは体調不良で店を畳むことになります。
100年の歴史が途絶える前に、石川さんは店を継ぐことを決意したのです。

石川さん)「昔から作ってきた祖母の味が僕の中では一番おいしいようかんだと思っている。ようかん自体の味だけは絶対に変えたくない」。

祖母の味を守りつつ、新しいチャレンジを!

午後2時すぎ。石川さんは、ユキ子さんの味を生かした新しい商品を作っていました。

1人でも食べられるように小分けにし、小城ようかんならではの白い結晶をまとった、黒いちじくのようかんです。

正確に、かつ素早くようかんを切り分けていく石川さん。
あまりに手際よくこなしていくので、私も石川さんに許可を頂いて体験しました。

これが思いのほか難しい…。
包丁の刃が長い分、なかなかまっすぐに刃を当てることもできません。
ようかんに付けた小さなくぼみを目印に、ようやく刃をまっすぐに当てるも…。
小林)「結構重い…」。
しっかりとした歯ごたえのようかんを切るのには、力も必要です(ちなみに、石川さんは、「きょうのようかんはいつもよりもやわらかく、切りやすかった」ということです…)。

休むことなく2時間切り続けた石川さん。
全てを切り終えると、思わず笑みもこぼれます。

一晩乾燥させれば、小城ようかんのシャリっとした食感が生まれます。
ようかんを切り終え、掃除などを行い、店を閉めたのは午後6時でした。

密着2日目/一筋縄ではいかない店の切り盛り

翌日。一晩寝かせたようかんに問題が…。
水分が抜けきらず、思っていた固さになっていなかったのです。
原因は、ようかん製造の際に火を止める時間が早かったことだと考えられます。
もう一度、乾燥室に入れてようかんを乾燥させることに…。
一筋縄ではいかないようかん作りです。

勿論、ようかん作りだけではありません。
接客も、石川さんの大事な仕事です。
ほどよく乾燥したようかんを袋詰めしている間も、客は次から次へと訪れます。

お客)「午後に来たらなかったので…
石川さん)「申し訳ないです。できるだけ切らさないようにしています」。
待たせた客には、ようかんの試食のおもてなしも行います。

接客も行いつつ、何とかようかんの袋詰めを終え、開店時間に商品を補充できました。

20歳のようかん職人に密着してみて…

祖母の味は守りつつ、新しいことに挑戦する石川さんに密着取材して感じたのは、何と言っても、ようかんに対する誠実さでした。
ようかんの粘りを見極めたり、ようかんを手際よく切り分けたりする姿には、二十歳ながらも職人の貫禄も感じました。

石川さんの素顔や新たな取り組みも!

今回の密着取材では、石川さんの1人暮らしの家にも突入!
ようかん作りのパワーの源が分かりました。
また、記事で紹介した小分けのようかんの新商品以外にも、新たな試みも行っています。
詳しくは、動画をご覧ください。