定置網漁3代目と新人さんに密着!
地域に根づいて活躍する人に密着して、その人や地域の魅力を紹介する「ジモ×トモ」。
今回は2回目の登場となる唐津市高島の定置網漁3代目の野﨑清美さんと、このほど新しく漁の仲間入りした塩﨑伸次さんです。
清美さんは去年8月の放送で漁の仲間を募集していましたが、秋になって塩﨑さんが応募し新メンバーとなりました。
前回担当した平井カメラマンが再び高島に行き、ふたりに会ってきました!
舞台は2度目の高島
去年秋に新しくなった定期船で高島に再び向かいます。
3代目との再会と新人さんとの出会い
船を下りてすぐ、港で立ち話をしている野﨑清美さん(50)を発見!
あいさつをすると明るく大きな声で「元気です!」との返事。相変わらずパワフルです。
新人さんについて尋ねると横にいる塩﨑伸次さん(52)を紹介してくれました。
漁の先輩たちは50代後半から70代前半なので塩﨑さんは若手になるということです。
海のそばで暮らしたい
塩﨑さんは大分県津久見市の海辺の集落に生まれ、高校を卒業するまで暮らしていました。その後、就職で愛知県に移り住みます。
自動車関連の仕事に長年携わっていましたが、海に関わる仕事がしたいと去年11月に高島にやって来ました。
出漁は午後11時 経験と体力はやはり必要
出港時間は午後11時です。
去年秋から福岡市の魚市場にも魚を卸すようになったため出港時間は早まっています。
3月の狙いは高値で取り引きされるサワラです。
定置網に到着すると塩﨑さんは慌ただしく船内を動き回ります。
先輩たちが作業しやすいようサポートに回り、指示を待つのではなく率先して動きます。
今回も漁を手伝いましたが、網を手繰るのが遅かったため塩﨑さんから「もっと速く」との指示を受けてしまいました・・・
重たい網をハイペースで引きあげるのは筋トレのようなもので体力が必要です。
春はサワラやブリなど大きな魚がよく網に入ります。
この日はヒラメがよくとれたほか、秋に多いタチウオが珍しく入っていました。
タチウオが入ると清美さんの得意技が出ます。
前回の放送でも紹介した「手づかみ」です!
タチウオは歯が鋭く素人には危険ですが、頭をつかめばかまれることはないということです。
先輩たちが魚をタモですくい始めると塩﨑さんは氷を準備します。
定置網漁は直前まで生きていた魚を市場に出せるのが強みで、鮮度を保つために魚を氷詰めする作業は欠かせません。
船長で2代目の野﨑清市さん(73)も新人にしては手際がよいと塩﨑さんの仕事ぶりを認めています。
夏はアジなど小魚が多いため魚種を分ける作業は骨が折れますが、この時期は大きな魚が多いため手間はかかりません。
この日は魚の少ない3月にしてはまずまずの数がとれました!
作業を手伝っていると清美さんがまたもやカメラマンに!
私がテキパキと動けるようになったと撮影されながら褒められますが、塩﨑さんからは「あと3か月はかかる」とダメ出し・・・
魚種を間違えずに大きさごとに分けるのは見た目以上に難しいです。
漁に携わるこその“ぜいたく”
漁が終わったのは午前2時でした。
塩﨑さんは帰宅してすぐに船長からもらったブリをさばき始めます。
実家が魚の養殖業をしていたこともあり、魚をさばくのはお手のものです。
刺身やたたき、それに煮物と、ブリづくしを私もごちそうになります。
とれたてのブリの刺身は歯ごたえがあり最高でした!
塩﨑さんの趣味は釣り
日曜日は市場が休みのため前日の土曜日は漁がありません。
塩崎さんは決まって釣りに出かけます。
子どものころに親しんだ釣りを再開し、島暮らしの趣味にしています。
私も釣りに誘われ、2人で25センチ前後のメバル9匹を釣りました!
釣った魚でご近所づきあい
塩﨑さんが釣りをするのにはもうひとつ理由があります。
釣った魚を仲のよいご近所さんに配るためです。
向かったのは島に来てすぐにあいさつを交わすようになった野崎スミエさん(83)です。
漁でとれた魚は唐津の市場に運ばれるため、高島では新鮮な魚がなかなか手にりません。漁をしない島の人たちは日頃、唐津のスーパーなどで魚を買っています。
スミエさんは新鮮な魚を渡されると大喜びで、何度も感謝の言葉を繰り返していました。
高島暮らしに満足
塩﨑さんは前職では人間関係でストレスを感じていましたが、インタビューではかつての生活とは一変し高島での生活に満足していると穏やかに話していました。
魚のロスを減らす取り組み
一方、野﨑清美さんは魚のロスを減らそうと市場に出しづらい傷の入った魚を加工用に回しています。
加工に必要な免許を取り、島の売店やインターネットで販売しています。
傷の入った所のみを切りとれば全く問題はなく、刺身で食べられる魚を使ったフライは好評です。
島の子どもたちに魚を好きになってほしい
清美さんは加工した魚を定期的に島の小学校に届けています。
子どもたちに魚を好きになってほしいと、利益はありませんが1年以上前から続けています。
タチウオのフライは給食の人気メニューです。
新鮮な魚を使ったフライに臭みはありません。
子どもたちは皆「清美さんのとった魚はおいしい!」と喜んで食べていました。
島留学生として福岡から来た6年生の齋藤梓悠さんは、高島に来る前までは魚が苦手でしたが、清美さんのフライがきっかけで魚が食べられるようになりました。
清美さんはおいしそうに食べている子どもたちを見て「新鮮な魚を子どもたちに食べてもらいたいので加工も頑張ってやっていきたい」と意気込んでいました。
編集後記
新人の塩﨑伸次さんは高島での生活はまだ4か月ほどですが、穏やかな性格もあって漁の仲間やご近所さんとすでに打ち解けていました。印象的だったのは漁での身のこなしです。指示されることはなく作業の先を読みながら動き回っていました。子どものころに魚の養殖業を手伝っていた経験が生かされているようです。
3代目の野﨑清美さんは相変わらずパワフルでした!網を手繰るスピードは速いしタチウオを手づかみするし・・・前回の清美さんのキーワードは「食いしん坊」でしたが、今回は「もったいない」でした。魚のフライを作る際、傷が入っても新鮮な魚には変わりはなく、市場に出せないから捨てるのは「もったいない」と何度も話していました。冷凍加工にすることで高島の魚を全国に届けることができるようになっただけでなく、海洋資源のロスを防ぐ取り組みにもつながっていると思います。