バリアのない社会になってほしい―。
17歳の頃に突然、脳出血で倒れ、左半身まひになった百武桃香(ひゃくたけ・ももこ)さん。「左半身麻痺のmomoちゃん」として、ユーチューバーやモデルなどとして前向きに生きる姿を発信し、同じような境遇に悩む人など多くの方を勇気づけています。
ことし、momoちゃんはどんなチャレンジをしていくのか。活動を始めた2019年から取材を続けている竹野アナウンサーが伺います。
「Welcome back to happy momoちゃんねる!皆さんこんにちは。」
momoちゃんこと、百武桃香さん、25歳。佐賀や福岡を拠点に、SNSでの発信やモデルなどとして活躍しています。
高校3年生になる直前。突然、激しい頭痛に襲われて倒れ、救急搬送。「脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)」というまれな病気が原因の脳出血でした。
頭蓋骨を開く4度の手術と1年以上の入院生活を経て一命を取り留めましたが、左半身にまひが残り、左手足はほとんど動かすことができません。
それでも前向きに、リハビリに奮闘する様子や、グルメを楽しむなど、明るく生きる姿を発信。
SNS発信に加え、脱ぎ着しやすい服やまひがある人が使いやすいつえの「モデル」としても活躍。佐賀県内のバリアフリー店舗の紹介や中高生に自身の体験を伝える授業など、幅広く活動しています。
竹野「いまの自分の仕事をどう受け止めていますか。」
百武桃香さん(以下、momoちゃん)「私自身がやりたかったことが形になっていっているのかなって思います。 自分がまひになってから、いろんなお店に行く時に、例えばトイレはどうなっているんだろうなどすごく不安に感じることがあったので、(そうした時にどうしたらいいかということの)発信をユーチューブでしています。」
竹野「3つのテーマでお話を伺っていきます。 まずは闘病です。突然倒れたのは高校3年生になる前の17歳の頃でした。 」
momoちゃん「そうですね、そのときは思い詰めることもあったんですけど、家族や友人に支えてもらっていたので、笑顔を忘れずに。ひとりでいる時はよく泣いたりとかしていたんですけど、家族や友人には涙を見せることはなかったです。」
入院生活を通じて、家族や高校の友人たち、看護師、医師など、さまざまな人たちに支えられたmomoちゃん。周りに心配をかけまいと気丈にふるまううちに明るい自分に変わっていきました。
momoちゃん「みんなに『頑張れ』と応援してもらっているからこそ、まひも治していきたい。」
momoちゃんを支えた家族のひとり、5つ上の姉、凛那さん。かつてNHKのインタビューに答えてくれたことがありました。闘病中は、妹の気持ちを察して、自然体で接してきたといいます。
凛那さん「ことの重さを重くとらえなくて、よくもわるくも、ももちゃんが好きなもの、音楽かけたりとか、普通の話をしたりとかして、(高次脳機能障害の影響で)ももちゃんがももちゃんでなくなっていたけど、普通に接するようにしていました」。
横で聞いていたmomoちゃんが見せた涙。闘病の厳しさと家族の思いが思い出されました。
momoちゃん「バレエの先生だったりCA(キャビンアテンダント)になるのが夢で、もともとそれを目標として頑張ったんですけど、それが難しいって分かったなかでも、私自身、誰かに支えられているなというのを感じ始めた時に、ネガティブになる必要ないなって感じて、頑張ろうって思っていました。」
退院から2年あまり。徐々にリハビリの成果も出てきて、杖を使えば歩けるようになり、生活もほとんど自分でできるようになりました。
竹野「そして、次のテーマ『発信』。4年前の2019年から、事務系の仕事をしながら、SNSでの発信を始めました。 始めた理由というのはどういうところですか。」
momoちゃん「病気になってから、自分の置かれた状況が把握できない方が多いと思うので、そういった方が、まひのこととか脳内出血というのを検索した時に、闘病生活を経たあとも、明るく元気に、旅行に行ったり、おいしいものを食べたりすることができる可能性というか、希望を持ってもらえたらいいなと思って発信を続けています。」
momoちゃん「入院生活している方から『お先真っ暗』みたいな感じのコメントをいただくので、いろんな施設に行ってもバリアフリーが充実したりとか、心のバリアフリーがあるから、外に出ていっても不自由は少しあるけれど、楽しんで生活できるよっていうのを、ユーチューブだったりインスタグラム、ブログのほうで発信しています。」
2021年には、こんな発信も。「エスカレーターには止まって乗ってほしい」ということを、自身がケガをしそうになった経験も踏まえて呼びかけました。
momoちゃん「バリアのない社会になってほしいなと思っています。 エスカレーターは、私が右手しか使えないので右側に立ってしまうんですよね。そういった中で、なぜ私が右側に立っているかを考えずに、いきなり『急いでいるからどいてくれ』とか『邪魔だ』っていう言葉をかけてくる。」
momoちゃん「『なんでこの人、右側に立っているのかな』ということを1回考えてもらえたらいいなって。発信することで、左半身にまひがある人がいるとか、見えにくい障害を持っている人がいるっていうのを少しでも多くの方に知ってもらいたいなと思っています。」
竹野「最後のテーマは『挑戦』。 なかでも「できることを増やしたい」と続けている先進医療に注目しました。」
先進医療は、「再生医療」と呼ばれるものです。自分の幹細胞を一度取り出してから、培養して増やし、体に再投与。組織を修復することで、まひの治癒を目指しています。
2021年の春に、福岡市のクリニックの試験的なプログラムに応募しました。
竹野「効果があるかわからないという状況の中で、1年以上継続しています。全身のリハビリと組み合わせて取り組んできて、効果をどう実感していますか。 」
momoちゃん「歩くスピードだったりとかバランスのとれた体を作ることができたりとか、まひの手をごはん中にテーブルの上に添える時間が増えてきたりとか。これまでリハビリずっとしている中で、5年間リハビリしていても何も変わってなかったものが、再生医療をすることで、少しずつステップアップできているので、徐々に変わってきているなって感じられます。」
効果を実感したいと、2022年の末、ハワイで開催された「ホノルルマラソン」に挑戦。10kmの部門は、制限時間なく挑戦でき、弟に支えてもらいながら参加しました。
実は、2019年にも挑戦して完歩していたmomoちゃん。タイムは、2時間59分(2019年)→2時間11分(2022年)と40分以上の短縮となりました。
竹野「ライブ配信したところ、2500人以上(1月18日時点での再生数)が見守りました。どんな応援の声が寄せられたんですか。」
momoちゃん「『自分も挑戦してみたい』っていう方もいらっしゃいましたし、あと『毎日ウォーキング頑張ってみます』など、リハビリを頑張りたいっていう言葉をいただきました。誰かの一歩、背中を押してあげたいなと思って発信しています。」
竹野「ことしも挑戦が続きますが、2023年どんな年にしたいか、抱負をお願いします。」
momoちゃん「歩くとかリハビリに関しては、『走れるようになりたい』というのが目標としてあるので、ジョギングくらいのスピードで足をうまくコントロールできるようになっていったらいいなっていう目標。あとモデルとしてタレントとして活動しているので、その幅を広げていけたらいいなと思っています。もともと旅行が好きだというのもあるので、各地を回りながら発信して『いろんな違い』というのもユーチューブ等で発信しながら、バリアが少しでも減っていけばいいなと思っています。」
【竹野アナより】
会うたびにパワーアップしているmomoちゃん。優しい社会の実現のための活動を応援しながら、今後も取材を続けていきます。
(この記事は、1月18日に放送したニュースただいま佐賀「ギュッとーく」をもとに、過去に放送リポートなども含めて再構成したものです)