(池野)きょうの『いまサガ』は、来年、佐賀で開かれる国スポに向けた取り組みについてです。
こちら、『SAGAスポーツメンター制度』。国スポで活躍が見込まれる選手が、佐賀に移住するなどして競技を続ける取り組みで、佐賀県勢の上位浮上には欠かせません。
メンターというのは、『導く人』『助言する人』という意味です。スポーツメンターは、みずからの記録向上に加え、▼国スポの周知や▼競技の普及などにも取り組みます。その多くは、中高生の指導や研修会への参加などによるものですが、ちょっと変わった形で活動するスポーツメンターもいます。
男子砲丸投げの岩佐隆時(いわさ・りゅうじ)選手。6月1日から大阪で開かれている、陸上の日本選手権にも出場します。岩佐選手、スポーツメンターとしての取り組みが人気を集めているんです。
【国スポ優勝を目指す 24歳“怪力”アスリート】
(岩佐隆時選手)
「男子砲丸投げの、岩佐隆時です。日本選手権でも国スポでも優勝を目指します。パワー!」
岩佐隆時選手、24歳。強じんな体格から生み出される“パワー”を生かし、スピードを保ったまま、ダイナミックに砲丸を投げていきます。
(岩佐隆時選手)
「砲丸投げは、鍛えれば鍛えるほど記録が伸びるし、成長していくのが楽しいです。」
砲丸投げを始めて10年あまりの間トレーニングを積み上げてきた岩佐選手。その体重は、115キロ。胸囲は、124センチを誇ります。
福井県出身の岩佐選手。高校時代はインターハイ優勝。
大学生日本一を決める『全日本インカレ』でも、2位を大きく引き離す記録で優勝。それぞれの年代でトップに立ってきました。
大学卒業後も競技を続けたいと考えていた岩佐選手。そこに声をかけたのが、佐賀県スポーツ協会でした。国スポを控えた佐賀への移住に迷いはなかったと言います。
(岩佐隆時選手)
「陸上の選手って、競技を続けていける環境の企業に就職するのは難しい。(佐賀県スポーツ協会が)すごくよい環境を提供してくれると聞いて、よしみたいな。」
【競技普及のために 砲丸投げの魅力を発信】
多くの人に、競技について知ってもらいたい。岩佐選手が、スポーツメンターとして取り組んでいることがあります。
それが、動画の制作。動画投稿サイト『youtube』に、160本あまりの動画を投稿してきました。
動画制作のスキルはすべて独学。撮影から編集まで、ひとりで行っています。練習の合間などに立ち寄る飲食店などの紹介や・・・
(動画より)
「(視聴者のコメント)優勝は本当にすごい事ですが、砲丸投げは華が無いですね」
「(岩佐選手)分かるー」
競技のイメージを覆そうと、みずから取り入れているトレーニングメニューを公開。砲丸投げの選手が見せる、『身体能力の高さ』が人気を集め、10万回以上再生された動画もあります。
(岩佐隆時選手)
「砲丸投げは知名度があまりない競技なので、自分で頑張って広めていくしかない。まずは知ってもらわないと、こういう人間がいることを。」
(動画より)
「(視聴者のコメント)中学生です、ウエイトトレーニングをできる環境がないのですが、ウエイト以外でやった方が良い練習はありますか?」
「(岩佐選手)階段ダッシュ超おすすめ!」
スポーツメンターとして、これまで培ってきた知識や技術のアドバイスもしています。視聴者とのつながりが、競技の普及に結びつくと考えているからです。
(岩佐隆時選手)
「砲丸投げのすごさも伝えられると思うし、アスリートとして知名度は欲しいですね。自分が有名にならないと、競技も有名にならないと思うので。」
砲丸投げを知ってもらうために、みずからの知名度も高めなければならないという岩佐選手。志は高く、日本記録をも上回る、こんな数字を目標に掲げています。
(岩佐隆時選手)
「19メートルを超えることが第一、どの大会でもいいから早く超えたい。国スポでは、それで優勝したいです。」
国スポ開催まで、1年あまり。岩佐選手は、トレーニングをさらに積み上げ、記録向上に励んでいきます。
(池野)スポーツメンターは、現在、陸上など20の競技で60人あまりの選手が活動しています。佐賀県スポーツ協会の担当者は、今後の期待について、次のように話しています。
(佐賀県スポーツ協会 川内野修 常務理事)
「佐賀で、日本のトップクラスの選手が練習して、アスリートとして活躍することで、子どもたちが、『僕たちもこういったトップの選手になりたい』という動機づけになってくれればと思います。このあと、オリンピックもありますし、世界に向けたアスリートが、佐賀を拠点に頑張ってくれることを期待しています。」
【取材後記】
岩佐選手が投げていた、成人男子用の砲丸の重さをご存知でしょうか?
重さは、7.26キロで、ボウリング場のいちばん重たい球(16ポンド)と同じなんです。
これだけの重量のものを20メートル近く投げるという、砲丸投げのすごさを伝えていきたいと、岩佐選手は話します。投擲(とうてき)そのものは一瞬で終わってしまう競技だからこそ、日常のトレーニングから垣間見える『過酷さ』を知ってもらいたいという思いを、取材を通して感じ取ることができました。
今回の日本選手権に向けて、非常によいコンディションで練習を積むことができたという岩佐選手。これからのさらなる成長に期待しています。