塩が生み出す地域のにぎわい 伊万里市波多津町(2023年2月3日放送)

カメラマン・北島大和
2023年2月14日 午後7:17 公開

塩づくりに密着!

伊万里市波多津町はかつて各家庭でも作られるほど塩づくりが盛んな土地でしたが、戦後、安価な塩が流通するようになると塩づくりは途絶えてしまいました。

時を経て、地域の町おこしにつなげようと復活した塩づくり。地域の人たちの手によって作り出される優しい味わいの塩が、今、地域ににぎわいを生み出しています。

伊万里市波多津で生まれる塩

今回の主人公、田中久俊さん(73)です。

地元の町おこしグループの一員として、塩づくりに携わっています。

「空だきしないように注意しています」(田中久俊さん)

かつて塩づくりが盛んだった波多津

伊万里市北部に位置する漁師町、波多津町。

かつて塩づくりが盛んで、各家庭でも作られていました。

しかし戦後、手ごろな値段で塩が買えるようになると塩づくりは途絶えます。

高齢化が進み、町が衰退していく中、地元の人たちが町おこしにつなげようと

目をつけたのが塩づくりの「復活」でした。

波多津町の浦地区で作られていることから「波浦の塩」と命名し、以来14年間、

この場所で塩が作られています。

海水をくみに「いろは島」沖へ

塩づくりに使う海水をくみに行くというのでついて行くことにしました。

船を出してくれるのは、町おこしグループの1人、田中茂樹さんです。

船で進むこと10分。着いたのはいろは島の沖合です。

豊かな自然に囲まれたこの場所の海水を使うことで、ミネラル豊富な

おいしい塩が生まれるといいます。

海水は塩づくりの田中さんのもとへ届けられます。

塩づくりは朝6時半から

塩づくりは朝6時半から始まります。

1回の塩づくりに使われる海水はおよそ1.5トン。

大量のまきをくべ、朝から夕方まで火にかけます。

作業は3日間、計20時間ちかく炊き続けることで海水をじっくり濃縮させていきます。

海水を炊き始めてから15時間後、もくもくと立ち上る湯気の向こうで手招きされました。

すくい取られたのは、

塩化マグネシウムや硫酸カルシウムなどの不純物。

触ってみると、ぼそぼそしています。

なめてみると口の中に苦味が広がります。

「粉っぽいでしょ、苦くて粉っぽいでしょ」(田中久俊さん)

不純物を丁寧にすくい取ることで、雑味のないまろやかな味に仕上がるといいます。

そして炊き続けること20時間、窯の海水は白く濁ってきました。

すくい上げると真っ白な塩があらわれました。

1,5トンの海水を3日間かけて煮詰め、ようやく25キロの塩が出来ました。

できたてを味見させてもらうとえぐみを感じない優しい味でした。

町おこしメンバーの力を合わせて生まれる

塩は町おこしメンバーと協力して作られています。

塩づくりに欠かせない大量のまきは地元の製材所や解体業者から無料で提供されます。

まき割りや塩の選別まで自分たちで行うのは、

1度は途絶えた塩づくりを、大切に守っていこうとする思いが込められています。

えぐみを感じさせない優しい味わいの塩の評判は広がり、

今では全国から注文が入るほどの人気となりました。

塩は地域のきずなの証しとなっています。

塩が活躍する「カキ小屋」

この時期、塩が最も活躍するのがカキ小屋。

製塩所のすぐ隣に建てられています。

冬の間、田中さんを含めた地元の人たちの手によって週末だけオープンします。

地元で採れた新鮮な海産物や肉の味付けに田中さんの塩が使われ塩がおいしさを引き立てます。

さらに人気を集めているのが、塩がまぶされたレモンを使った「レモンサワー」。

塩がレモンの酸味を際立たせます。

波多津で生まれた塩が、

地域ににぎわいをもたらします。

「みなさんから喜ばれるようなおいしい塩を作るということですね。

 みなさんからうまかったとか、ぜひ使いたいと言われるとうれしく思います」

(田中久俊さん)

編集後記

今から14年前、塩づくりを復活させようとしたとき、集落には塩の作り方を覚えている人が残っておらず、大分県まで視察に出向き、作り方を覚えて帰ってきたそうです。地域を大切に思う気持ちがこめられた優しい味わいの塩。1番のおすすめの食べ方は塩おにぎりだそうです!

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