みなさんは「ハゼクチ」という魚を知っていますか。
(写真:鹿島市干潟交流館)
有明海に生息する、日本最大といわれる「ハゼ」です。大きいものでは50センチを超えるといいます。一般的なマハゼは20センチ前後ですから、2倍以上の大きさです。
佐賀では、昔から天ぷらや煮付けで親しまれてきたというハゼクチ。秋から冬には、釣りで狙えると聞き、挑戦してきました。
挑戦当日、天気は雨…。2月10日、佐賀県内はこの時期としては珍しくまとまった雨が降りました。晴れていると釣れない!なんてよく言いますが、少し降りすぎ…。
気を取り直して、まずは情報収集です。佐賀市内の釣具店に向かいました。
店員の三ヶ島勇美さんに、ハゼクチを釣りたいことを伝えると…。
え、もう終わりですか!?
実は、店員の三ヶ島さんは、ハゼクチ釣り名人です。
有明海沿岸の鹿島市出身で小さい頃から毎年のようにハゼクチ釣りを楽しんできました。その三ヶ島さんいわく、今の時期、数多くは釣れないが、釣れたら大物が期待できるとのこと。ハゼクチは「食べておいしい、身近なエリアで釣れる」というのが魅力だと言います。
しかし、あいにくの雨ということで、どうしたら釣れますか…?
辛抱強く待つことが大事だそうです。
では、おすすめされた白石町の漁港へ。ちょうど満潮に向かう絶好のタイミングでした。
釣り方はシンプル。さおにおもり付きテンビン、キス針にイソメ。いわゆる「ちょい投げ」です。(※白石町、県、漁協に許可を得て撮影しています。釣りをする時は、自治体や県などのルールをしっかり守って行うようにしてください。 )
海に投げ入れ…
さお先につけた鈴がなるのを待つだけです。
この日の満潮時刻は、午前11時半すぎ。
もう釣れる時間帯のはずですが、全く当たりがありません。それどころか、次第に雨風も強まってきました。寒い…。
待っている間、とても時間があったので、ハゼクチについて調べたことをまとめました。
ハゼクチは1年魚。1年で生涯を終える魚で、産卵期の冬の時期にかけて最大になります。だからいま、1年のなかで最大のサイズが狙える時期なのです。
そして、生息地。有明海など一部の干潟にしか日本国内でも生息していないということで、ワラスボやムツゴロウなどと一緒で、この有明海ならではの生き物であるということなのです。
そうこうしていると、ここで…!!!
え、何も聞こえなかったですけど…上げてみましょう。
ドキドキしながら引き上げます。
…何の手ごたえもありませんでした。
その後もそんなやり取りが続き、思わせぶりな巻き上げに、カメラマンも。
風や波によって時折感じた鈴の音の気配はすべてハズレ。カメラマンに、釣れる気配がするかと聞くと。
カメラマンよ、そんなに強く言わなくてもいいですよね。
気づけば2時間。とうとう釣れる時間帯の満潮が過ぎてしまいました。
あきらめて、締めくくりのコメントを撮ります。
「残念ながらハゼクチを釣ることはできませんでした。…以上、ハゼクチ釣りチャレンジでした」
さおを片付け始めたその時でした。
「ちょっと待って、ついてない??」
「えーーーー釣れたー--!うそお!ハゼクチ釣れました!!
いま回収しようとしてたんたん◎△$♪×¥○&%#…」
釣れたのは、まぎれもなくハゼクチ。聞いていたものよりだいぶ小ぶりの20センチ超でした。喜びを釣具店の三ヶ島さんに伝えると、「奇跡的ですね、本当に釣れたんですね(驚)」と。釣れてくれたことに大感謝。大切に食べようと思います。
ということで、すぐに佐賀市内に戻り、調理室へ。
釣れたハゼクチを天ぷらにして食べることに。
まずは、さばいていきます。大きいものは三枚におろすと聞きましたが、今回は小さいのでそのまま丸ごと。
油に入れた瞬間、香りが部屋いっぱいに広がりました。
せっかくなのでご飯にのせて「ハゼクチ天丼」の完成です。
1匹でもこの存在感。大葉の天ぷらで彩りも添えました。
「いただきます。」
驚いたのはそのやわらかさ。そのまま揚げたので骨が気になるかと思いましたが、ほとんど感じることなく、ふんわりしていました。
うまみのある白身は、同じく白身のキスと比べても脂がのっていました。
一時はどうなることかと思ったハゼクチ釣りチャレンジ。冬の終わりに、有明海ならではの旬の味覚を堪能できました。
「ごちそうさまでした」。
ちなみに、県有明海漁協によるとハゼクチの流通量は年々減っていて、有明海沿岸の直売所などでごくたまに出回るとのこと。見かけたらラッキーです。
ぜひ現場の興奮が伝わる動画でもお楽しみください。