交通死亡事故相次ぐ ”横断中の事故”を防げ(2022年11月24日放送)

記者・下平明隆
2022年11月28日 午後3:08 公開

【県内で相次ぐ交通死亡事故”6”】

”6件、6人”。

10月以降に佐賀県内で発生した交通死亡事故の件数と死者の数です。

2019年以来となる「交通死亡事故多発警報」が出されるなど深刻な状況になっています。

被害を防ぐにはどうすればよいのか、増加する事故の現状と動き出した対策を取材しました。

11月2日の午後6時前、佐賀市の道路を横断していた80代の女性が右から来た車にはねられ死亡しました。

現場に行ってみると信号機や横断歩道がなく、夕方の時間帯は帰宅ラッシュで交通量も比較的多いことがわかりました。

県内では交通事故で10月以降、あわせて6人が死亡。

2019年以来の「交通死亡事故多発警報」が出る事態となりました。

【警戒強める警察に密着】

警察は歩行者への呼びかけに力を入れています。

死亡した6人のうち5人が道路を横断中の事故でした。 

(歩行者に呼びかける警察官)

「横断歩道を渡られる際には“ハンドサイン”と言って、手を挙げて渡られるようにお願いします。あと夜中は危ないので反射材の着用もお願いします」

警察からの呼びかけを受けて、道行く人たちは、手を挙げて安全を確認しながら、横断歩道を渡っていました。

(50代の男性)

「車がスピードを緩めて渡れるかなと思って渡ろうとしたときにそのままスッと行かれるときが怖いですね。手を挙げて、目立つような形で渡るように言われたので、意識していこうかなと思います」

(30代の女性)

「最近暗くなるのが早くなったので、子どもたちの下校の時間も暗くなることが予想されます。ハンドサインや反射材の着用は大切なんじゃないかと思います」

(6歳の女の子)

「私の父が反射材をもらってきたので、それを着けて外に出るようにしています」

(10歳の男の子)

「右左を見て、気をつけながら手を挙げて渡りたいと思います

【暗闇に潜む危険性とは】

6件の死亡事故のうち4件は、夕暮れ時から夜間に発生しています。

こちらは、ドライバーからの歩行者の見え方を検証した動画です。

画面左が「反射材なし」、右が「反射材あり」。

画面右では、早めに人の存在に気づくことができますが、反射材をつけていない場合、近づいても歩行者の発見が難しいことがわかります。

実際、死亡した人のほとんどが反射材をつけていませんでした。

【横断中事故 取締り強化・変わった対策】

県内のドライバーにも注意してほしいことがあります。

法律で定められている歩行者がいる場合の横断歩道での一時停止です。

JAF=日本自動車連盟によりますと、県内では、信号機のない横断歩道で車が一時停止する割合は、25点1%。

全国でも4番目に悪い状況です。

この日も、このルールを守れていないとして検挙されるドライバーもいました。

警察によりますと、歩行者がいるにも関わらず、一時停止しなかったとして10月末までに2240人のドライバーを検挙したということです。

実に5年前の2倍以上に増加しています。

(佐賀南警察署・交通課 岡健太郎 指導係長)

「ドライバーの違反意識の低さが、停止率が低い原因なんじゃないかなと思います」

こうした中、対策も始まっています。江北町の現場に行ってみました。

横断歩道が赤く塗装されている以外は一見ふつうの横断歩道ですが、実は路面が10センチほど盛り上がっています。

これは、横断歩道全体を高くすることで、ドライバーに減速を促す実証実験です。

(江北町・基盤整備課 渕上和剛さん) 

「ドライバーと歩行者の双方に安全に対する意識を高めてもらうというのが、やっぱり大事だと思います」

さらに、横断歩道から100メートルほど離れた場所には、この日、カメラが新たに設置されました。

通過する車のスピードをAI・人工知能で測定します。

今後設置予定の電光掲示板で、スピードを出しすぎているドライバーに警告するということです。

(装置を設置した企業 緒方剛さん)

「自動車対歩行者の事故では、30キロ以上の速度になると歩行者の致死率が急激に上昇します。速度を30キロ以下に落としてもらうことが目的です」

【県警はさらに警戒継続】

慌ただしくなる年末を前に、警察はドライバーと歩行者の双方に改めて注意を呼びかけています。

(佐賀県警察本部・交通企画課 香月誠事故分析官)

「ドライバーは、横断歩道を通る際は、減速して歩行者の有無を確認。歩行者がいれば“一時停止”するようにお願いします。歩行者も横断する際には、手を挙げて、または、ドライバーの目を見て“ハンドサイン”を実施して頂き、横断の意思表示をしてください。これらを実施して頂ければ、事故は防げると思います」

【ドライバーと歩行者への”お願い”】

事故を防ぐためには、私たち1人1人ができる対策をしっかり実践することが大切です。

改めてポイントを確認します。

まず、ドライバーです。

▼横断歩道などに歩行者がいる場合、必ず一時停止、周囲の安全確認をお願いします。

▼日没時刻も早くなるので早めのライト点灯を心がけましょう。

続いて、歩行者です。

▼道路を横断する際の「ハンドサイン」。手を挙げてドライバーに意思表示をすること。

▼夕暮れ時以降に外を出歩く場合、反射材の着用を徹底してください。

自分たちの命を守るためにもこれからの時期、事故へのいっそうの注意をお願いします。

【取材後記】

警報発令をきっかけに警察などを取材する中で、“夕暮れ時の横断中事故”が多い実情を知り、特に横断歩道などでの車の一時停止率の低さに課題を覚えました。

生まれ育った佐賀にUターンして半年以上がたちました。

私自身、生活上車は欠かせませんし、週末は家族で散歩に出かけることもあるため、場面によってドライバーでも歩行者でもあります。

12月は、1年の中で最も交通事故が多い月です。

事故を起こさない、被害にあわないという自分ごとの意識で悲惨な事故を防ぎましょう。