切削大好き!高校生が挑む“コマ大戦”(2022年11月18日放送)

NHK佐賀放送局記者 真野紘一
2022年11月20日 午後7:52 公開

あっと驚くような才能や特技などを持つ県内の若者を紹介する「さがミライビト」。

今回取材したのは「ケンカゴマ」の全国大会に九州から唯一挑む、鳥栖工業高校機械部の生徒たちです。将来の日本のものづくりを担う高校生たち渾身の「コマ」とは・・・?

「はっけよーい、のこった!」。

8月に行われたケンカゴマの佐賀大会。土俵上のコマはすべて高校生たちの手作りです。「直径2センチ以下」の条件以外、材料や形は基本的に自由。先鋒・中堅・大将と1人1つずつ、あわせて3つのコマで戦います。

佐賀大会を見事制したのが鳥栖工業高校機械部。今月26日、愛知県で開かれる高校生の全国大会に九州から唯一出場します。

チームの大将、2年生の陣内一貴さんです。

(陣内さん)「(自分のコマが)佐賀県内で通用してちょっとうれしかったですね。精度が求められたり、ギミック(仕掛け)とかも求められたりして、コマに関して考えることも楽しいです」。

自慢のコマを見せてもらいました。

(陣内さん)「取っ手のところは指を回す時により力がかかるように、滑り止めをかけました」。

チームメイトが作ったコマを見てみると・・・。

(2年生・西牟田麗王さん)「軸はアクリルでつくりました」。

軸と胴体で重さの差をつけることで、遠心力を大きくする狙いだそうです。コマによって異なる多種多様な工夫に驚きました。

(陣内さん)「遠心力って偉大で、僕とは違ってずっと回り続けているんで僕もやりたいです」。

(西牟田さん)「(自信は)まあまああります。絶対勝ちたいです」。

私(真野)もコマを借りて何度も投げてみましたが・・・。コマを土俵にうまく着地させるのが非常に難しく、うまくいきませんでした。コマを作るだけではなく、投げる方も相当の練習が必要なのです。

大会に向けて新作開発中!

陣内さんはいま、全国大会に向けて新たなコマづくりを進めています。それは「なるべく相手にぶつからずに粘り勝ちするコマ」。

コマは大きく分けて「攻撃型」「持久型」の2種類あります。

佐賀大会で使ったのは「攻撃型」。胴体に厚みを持たせ、重さで相手の回転を止めます。

一方「持久型」は、土俵と接する部分がとがり、胴体は薄く・軽く作られています。回転数を増やすとともに、コマが土俵の内側に行かず外側でとどまって相手とのぶつかりを避け、「持久力」で勝つ作戦です。

これまでチームには攻撃型しかありませんでした。そこに持久型を加えることで、戦い方の幅が広がると考えたのです。

試作品を作る様子を見せてもらいました。

まずは「圧入」です。コマは遠心力を大きくするため重さの違う2つの金属を組み合わせて作るのですが、軸の直径は胴体の内側の直径よりもわずかに大きくなっています。そこで機械を使って圧力をかけ、はめ込むのです。

(陣内さん)「スカスカすぎると投げるときに抜けるし、太すぎても入らない。(太すぎると)割れたり曲がったりして大変なことになります」。

圧入のあとは「切削」。筒状になった材料を「旋盤」でゆっくりと時間をかけて削っていきます。切削は「100分の1ミリ」単位の作業です。

(陣内さん)「大好きです。ずっとやっていたいです。もう夢中ですね。何も考えていないわけじゃないですが、心がどんどんになっていって、そしたらできていますね。楽しいです」。

試作品 できはいかに・・・?

「持久型」の試作品を試してもらいました。

(真野)「綺麗に回っているように見えるけれど・・・?」。

(陣内さん)「実はこれ失敗なんです。本当は外側をゆっくり回る感じがいいのですが、これは真ん中に行っているので、相手のコマとぶつかってこちらが先に負けてしまいます。今の状況だと完全に失敗なので、20(点)とか10(点)くらい」。

妥協を許さない陣内さんのことばは、もはや職人のようでした。

大切な仲間たちといざ大会へ

さらに、大会ではコマの精度を上げるだけでは勝てないといいます。土俵の直径は25センチ。プレッシャーがかかる場面でも自分を信じて投げ切る強い「心」が必要です。

さらに力をコマに伝える指先の力も欠かせません。勝つためにはいずれも高いレベルが求められます。

(陣内さん)「自分の作ったコマの精度より投げる時の回転方向とか、投げる軌道とかの方が重要になってくる場面もあったので、そういうところをちゃんと研究しなきゃいけないなと思いました」。

(陣内さん)「強豪校に勝って、1位をもぎ取ってやろうと思います。仲間は本当に大切で大好きです。団結力なら絶対勝てると思っています。将来の夢はほかに負けない技術力を持って世界に挑んでいきたい。千分の1(ミリ)とか、万分の1とか、そういうところに行ってみたいです」。