“博士が子どもだったころ”特別編 夢は粘菌博士!?片岡連さん・習さん

NHK
2022年11月19日 午前8:00 公開

人類誕生の遥か昔から地球に生息している、原始的な生き物「粘菌(ねんきん)」。  ゾウリムシやミドリムシと同じ、「単細胞生物」です。

たった一つの細胞で生きているにもかかわらず、あるときは黄色いねばねばした姿、あるときはカラフルでかわいいキノコのような姿になるなど、一生の中で、ダイナミックに姿を変える不思議な生き物。このことから、「変形菌」とも呼ばれているんです。 

世界中の研究者が粘菌に魅了され研究を進めている中、粘菌にただならぬ情熱を注いでいるのが大阪府に住む片岡きょうだい。兄の連さん(取材時:中2)と、弟の習さん(取材時:小4)は、「将来は、粘菌の博士になりたい」と、今から粘菌の研究に取り組んでいます。

父の祥三さんとともにお話を伺い、粘菌に魅了された“小さな博士”たちの思いに迫りました。

― 粘菌に興味を持ったきっかけは?

兄・連さん:元々、僕がミジンコやプランクトンが載った図鑑を見て、「アメーバ」という生き物を好きになったんです。クリスマスプレゼントに生物顕微鏡をお願いして、採取したアメーバを観察するほど好きになりました。そして、小学生のころに連れて行ってもらったイベントで粘菌の変形体と初めて出会いました。一目見て「大きなアメーバだ!」と夢中になりました。

父・祥三さん:その時のイベントスタッフの方が「どこにでもいる生き物なんだよ」と教えてくれたんですが、夢中になった連くんが「見つけるまで帰らない」と言って、夜までイベントの会場で粘菌を探しました(笑)

兄・連さん:その日は結局見つけることができなかったんですが、ずっと探し続けて、2か月くらいたって初めて粘菌を見つけることができました。見つかったのは大きな変形体で、じっくり観察するために、虫かごに入れてお家に持って帰りました。

弟・習さん:僕が初めて見つけたのは、ウツボホコリという赤いもじゃもじゃの子実体を作る粘菌でした。

― 弟・習さんが粘菌に興味を持ったきっかけは?

弟・習さん:お兄ちゃんが変形体を虫かごで飼っていて、それを見せてくれたことがきっかけです。

父・祥三さん:習くんの場合は、先にお兄ちゃんが好きになっていたこともあって、物心ついた時から粘菌が身近で当たり前にいる存在だったと思います。ケンカもするけど、粘菌に関することは手を取り合って、いつも2人で取り組んでいますね。

― 粘菌のどういったところが魅力?

兄・連さん:家で飼うことができて、観察できるということが、自分の中では1番の魅力だと思っています。毎日エサをあげて、ちゃんと湿度と温度を管理してあげれば、粘菌は飼うことができます。

弟・習さん:エサはオートミールをあげているんですが、粘菌によって好きな食べ物が違ったりして、食べてくれないこともあります。食べてもらうために、オートミールを細かく砕いてみたり、全く違う食べ物を与えてみたり、いろいろ試してみることが楽しいです。

兄・連さん:粘菌が好む環境もだんだんわかってきて、いい環境で飼うことのできている粘菌は、もう5年くらい生きているものもいます。

父・祥三さん:現在、粘菌を飼い始めて8年ほど経ちますが、今では容器50個分の粘菌を自宅で飼っています。年々増え続けて、今では粘菌の温度と湿度を管理するために使っているワインクーラーが4台になってしまいました(笑)。二人ともマイワインクーラーを持っていて、自分で捕まえてきた粘菌を飼育しています。

― 2人の取り組みに対してご家族の反応は?

父・祥三さん:はじめは、粘菌のことを全く知らなかったのですが、子どもたちに「粘菌はどこにいる?」とか「これは何という粘菌?」と聞かれるたびに、本を読んで勉強していました。そしていつの間にか粘菌に詳しくなって、私も粘菌にハマってしまいました(笑)。今では、3人で粘菌を探しに旅行に行ったりしています。

兄・連さん:家族には、いつもたくさん協力してもらっています。今年の夏は北海道の阿寒の森に連れて行ってもらいました。気候が全然違うので、家の近くで探すよりも見たことのない種類の粘菌を見つけることができました。

弟・習さん:北海道では珍しい粘菌を見つけることができるから、まだまだ探し足りないくらいです。今回は見つけることのできなかった、キイロタマツノホコリを探しにまた行ってみたいです。

父・祥三さん:2017年にイギリスに行って、粘菌を探したこともありました。観光地には目もくれずに、3人で公園などに粘菌がいないか探し回りました。

弟・習さん:切り株にススホコリという30㎝くらいの粘菌を見つけたことが一番記憶に残っています。

父・祥三さん:お母さんも私たちの粘菌好きを応援してくれていて、旅行で撮影した粘菌の写真を友だちに見せたりしています。

- お二人の将来の夢は?

兄・連さん:粘菌だけじゃなくて、虫やカタツムリ、ウミウシなどいろんな生き物に興味がありますが、将来は粘菌の研究者になりたいです。

弟・習さん:粘菌の研究者になって、新種をたくさん見つけてみたいです。

父・祥三さん:二人とも粘菌が好きで将来は研究者になりたいと言っているので、今のうちからできる限りサポートできればと考えています。例えば、人前で発表する経験をさせてあげたいと思って、粘菌好きの集まるトークイベントなどに参加して、粘菌の魅力を発表する機会を設けたりしています。

他にも、キノコを食べる変形体の被害に困っている農家の方に頼まれて、大好きな粘菌を殺さずに退ける方法を3人で試行錯誤するといった取り組みにも今から挑戦しています。

弟・習さん:お茶葉とか豆腐の汁や納豆をあげてみたり、いろいろ試しました。

兄・連さん:今のところ明らかに粘菌が避けることが分かったのは、「コーヒーの残りかす」でした。明らかな結果がでたら、まとめてみようと思います。