「ファーブルが来た!昆虫新伝説」制作ウラ話

NHK
2023年12月3日 午後8:00 公開

◎制作こぼれ話「いつものダーウィンとちょっと違う“昆虫特別回”ができるまで」

ファーブルの『昆虫記』、一度は読んだことがあるのではないでしょうか。古い異国の本でありながら今も日本で読み継がれ、影響を与え続けている『昆虫記』。取材でお世話になった方々は大人も子どもも『昆虫記』の名を出すと顔が明るくなり、やはり日本に虫好きが多い理由の一端を担っているのだなと実感。私もまさにその一人で、物心ついた頃に昆虫記やファーブルの伝記を読み「こんな知らない虫の世界があって、それを初めてファーブルという人が発見したんだ・・・」という感動が記憶に残っています。ところが、改めてファーブルのことを調べてみるとびっくり。ファーブルの人としてのすごさや、昆虫記で描かれている虫の世界の深さと広さ、そして読み物としての抜群のおもしろさに衝撃を受けました。大人になってこそ昆虫記の深い魅力に触れてほしい、との思いで企画がスタート。とはいえ昆虫の話題は一般的に敬遠されがちで地味なテーマが多いのも事実。「ダーウィンが来た!」で成り立つのか・・・。そんな中、番組の核になったのはミニコーナーでご紹介したダーウィンとの手紙のやり取りでした。あの有名なダーウィンとファーブルが実は尊敬し合う仲で、同じ時代を生きた地続きの人間だったことは、私にとって胸が熱くなる事実でした。当初は今回、フランスに保管されているダーウィンがファーブルへ宛てた手紙の原本を撮影できるはずだったのですが、生誕200年を機に資料保存のための修復・スキャン作業が行われており、現物を撮影することは叶わず。でもこの事実をご紹介できただけでもよかったと思っています。

昆虫記は全部で10巻221章の超大作

ファーブルの住居「アルマス」に展示されている手紙のレプリカ

◎制作の現場から「幻の“ゴミムシ”を追って」

今回ぜひ撮影したかったのが、死んだふりをする昆虫です。中でもオオヒョウタンゴミムシという虫を追いかけました。なぜかというと、実はファーブルが死んだふりに興味を持つきっかけとなった虫が「オウシュウオオヒョウタンゴミムシ」という種で、それに近い仲間「オオヒョウタンゴミムシ」が日本に生息しているんです。写真の通り、メタリックな体にクワガタみたいな大アゴ、カッコイイ虫ですよね!専門家みなさんの力をお借りし、いざ撮影を試みたのですが、この虫のロケは一筋縄ではいきませんでした。というのも、過去に観察された場所へ向かうも見つからず、別の候補地へ行ってもさっぱり見つからず。どうやら姿を消してしまったらしいのです。彼らが生息する環境は砂浜と草地が隣接する比較的平らな海岸線。しかし訪れてみると、砂浜が波によって大きくえぐれていたり、車が入り込んで深い車輪の跡ができていたり、防波堤が建設されて環境が変わったり。さらにはトラップ(昆虫を捕獲するためのワナ)が設置された形跡も至るところで発見。専門家によると明らかにオオヒョウタンゴミムシを狙ったものだということでした。もともと個体数は少なかったそうですが、一層数を減らしていることを実感。最終的に4か所目でようやく2匹を見つけ撮影には成功したものの、複雑な気分になりました。今年いた昆虫に来年また同じ場所で出会えるとは限らない時代になっています。身近に当たり前に虫がいることの貴重さにハッとしたロケでした。

アゴを持ち上げ威嚇のようなポーズをとるオオヒョウタンゴミムシ

◎ディレクターのお気に入り「さらに深く、ファーブルの世界へ・・・特集番組のお知らせ!」

「昆虫といえば、夏。なんで12月の放送なの?」と疑問に思われた方もいるのではないでしょうか。実はファーブルの誕生日は12月21日。誕生月に合わせた放送を目指していました。そしてもう一つ別の大きな理由が・・・特集番組の制作です!「ファーブルが来た!」と同時に、ファーブル生誕200年の特集番組を一年がかりで制作していました。今回ご紹介した虫をさらに深く掘り下げ、他の虫の話題も盛りだくさん、番組尺はなんと89分!ファーブルが発見したフェロモンの最新研究に、ファーブルの志を今に伝える会の活動、昆虫と少年の一年の思い出などなど、ぜひともご覧いただきたい内容です。中でも一押し映像が、生誕200年を記念して盛り上がるアルマスです。ファーブルが昆虫記のほとんどを書いた住居はアルマスと呼ばれ、今は博物館として公開されています。今回、アルマスが生誕200年を機にリニューアルオープンするタイミングに合わせて取材させていただきました。おそらく本邦初公開、最新のアルマスの姿をお見せします。普段は立ち入り禁止の「あの部屋」にも入っちゃいました。放送は新しいBS4K【BSP4K】で、12月8日(金)夜9:05~10:34。ぜひご覧下さい!

庭から見た ファーブルが晩年暮らした家

ファーブルの研究室。この机で昆虫記を書いた

この特集番組ができるまでには、本当にたくさんの「ファーブル好き」の皆さんにご協力いただきました。ファーブルに対して抱く共感や憧れなど、みなさんの強い思いに私自身が動かされ、一つの番組として完成したのだと思っています。フランスで200年前に生まれた人が、今もこれほどまで日本で愛されているなんて・・・。「昆虫記」が読まれ続ける限り、日本でこれからもファーブルの志を継ぐ人が生まれ続けていくはずです。

◎3D昆虫をあなたのパソコン&スマホで!

最後にもう一つお知らせです。番組ミニコーナーに登場した、超精細&大迫力の「3D昆虫」を特設ホームページで公開しました!専門家と共に半年間、試行錯誤して作り上げたものです。フンコロガシやきれいなチョウなど、小さな昆虫を3次元空間で自由に回転・拡大して見ることができちゃいます。以下のホームページから、パソコンやスマートフォンでアクセスできます!

番組をもう一度見たい方は・・・

☆もっと詳しく!「ファーブル生誕200年の特集番組ができるまで」をつづった記事はコチラ!

☆ブログ担当スタッフから☆

大野ディレクターが小さな頃にファーブルに心惹かれた思いがギュッと詰まった番組になりました。足かけ3年にわたって国内外で追い続けたのは、いろんな形でファーブルの後を追う人たち。みんな好奇心のかたまりでキラキラしていました。いつまでも好奇心・探究心を持ち続けること、その素敵さを改めて教えてもらいました。