【この番組を企画したきっかけは】　 「コロナ禍で相次ぐお祭りの中止。そこに思いを込める人たちはこの２年をどう過ごしているのか？」７月、そんな疑問を胸に新潟県内の花火大会リストを眺めていると、まだ中止を発表していない祭りがありました。―毎年２０万人が訪れる「片貝まつり」。ワクチン接種の普及を見込み、延期の上で実施される予定でした。 片貝まつりで夜空を彩る花火は 町の人々が結婚や出産・追善供養などの人生の節目に、個人が地元神社へ願いを託して打ち揚げる「奉納花火」。中でも、成人・３３才、４２才、５０才、還暦の厄年を迎える学年の同級生が協力し打ち上げる豪華なスターマイン（連続花火）と、祭り両日を締めくくる世界最大級の四尺玉は大きな見どころです。 　“節目の年は、人生に１度だけ。その時に花火を打ち上げることに意味がある。”　その信念を胸に、町では祭りを実施しようとしていたのでした。 しかし、五輪の裏で、コロナ新規感染者数は２万人を超過。実行委員会は２年連続の祭り中止を決断します。そんな中、本来の祭りの日（９月１０日）に町を訪れると、半纏を来た人や、お囃子を演奏する人、その音につられて出てくる町民の姿が。「何とか文化を繋ぎたい」「コロナに負けてたまるか！」と抗う町の精神を垣間見た気がしました。 去年の成人・芝迅平さんもその一人。「この町は祭りがなきゃ死んでしまう。楽しいからやりたいんだ。」と語るその裏に、どんな思いがあるのだろう…？　祭りの実施の行方も“成人花火”の打ち上げ可否も決まっていない状態でしたが、若者が町を思う心を知りたくて、取材を申し込みました。花火打ち上げまでの２か月間、日ごとに豊かになっていく若者たちの表情に、「祭りがこの地域の人の血を騒がせるのだ」と痛感しました。成人花火を“大人への第一歩”と位置付け奮闘する姿に、自分の若き日や故郷を重ねてご覧いただけたら嬉しいです。 【取材をする中で印象に残った言葉】 「祭りが思い出になるのは嫌、こんなアツくなれる祭りは残さなきゃいけない。」 「祭りは好き。でも“何故こんなところに住んでるんだ”と思ったことも。」 「“伝統”は、良い部分だけじゃない。悪い部分を変えていくのが自分達だ」 今年と去年、成人での祭りの機会を奪われた青年たちの言葉です。 町で加速する少子化や若者の流出の渦中にいる彼らが発したこの言葉には、大きな意味があると感じます。 長年紡がれてきた地域の“伝統の祭り”の存続や継承に、影響が出ていることの象徴だからです。 新型コロナは、祭りの中止という非日常を受けて、町の人々が立ち止まり“伝統”“文化の継承”を考える機会になったという声を取材の中で多く耳にしました。その中で開催された異例の 成人花火打ち上げは、町・祭りの未来の新たなモデルを示したようにも感じられました。形を変えながら脈々と地域の伝統を「自分事」として受け継ごうとする片貝町の人々の愛と強さに、胸が熱くなりました。