2023年12月24日「“人口減少時代” 私たちの未来は」(後半)

NHK
2023年12月25日 午後7:50 公開

日本が直面する人口減少。現在の人口は、2070年にはおよそ7割にまで減少すると推計されています。人口の4割近くが高齢者となり、社会機能が維持できなくなることが懸念されています。加速する人口減少で、経済や社会保障はどうなるのか。日本社会のこれからを専門家が議論しました。

ここまでの議論はこちら ⇒「“人口減少時代” 私たちの未来は」前半

少子化の背景 社会の意識は

白波瀬:

(伝統的家族観の問題は)根深いと思いますね。その根深い規範なり、諸制度の前提となっているものを、どう加速度的に変えていくのか、これが一番現実的には大変だと思います。でも異次元の対策といっても、実際のところはどれだけこれが維持可能なのか、これを頼ってよいのか、自分が実際に出産期になった時に、まあ例えば高校も全部無償化でという状況が継続しているのか。もっと言うと足元の話、つまりこれだけの子育てっていうか、この若者世代を社会的に支える財源を含めた確保が、超党派も含めてどれだけしっかりしているのかというのは、将来を見る時にとても不安だというのは、結局最後にくるんじゃないかと思うんですよね。ですから「そこをなんとかしないと」と思うんですけど、そこも根深いので、これはもう外圧的に変えていくしかないと思います。

古屋:

私は意識なんて変えられないと思うんですよね。人は自分の経験と今の環境によってしか判断ができないわけですから、意識を変えるってそんな簡単じゃないなと。問題は、つまり子どもが身の回りにいる方が減ってきたことに起因する合意形成の難しさということに、この問題の根幹があるなと考えています。おそらく必要な発想は、ユニバーサルサービスですとか、ダイバーシティー経営の議論で出てきた新しい哲学なんじゃないかなと思っていて、何か障壁がある方のために組織や職場環境を変える事によって、実は障壁がない人々も得をするんだという発想ですよね。持病があって短時間しか勤務ができない社員のために、オンライン会議の環境を整えた会社がおっしゃっていたのは、それによって全社員の仕事のストレスが減ったということを報告されていました。子育てしやすい環境・社会を作ることが、実は全ての人々が住みやすい幸せな社会をつくることだと、こういった発想で、政策を考えていくことが大事なんじゃないかなと思います。

山崎:

私は(意識は)変わり得ると思っています。昔介護保険のことをしていたのですけれど、制度ができ上がって、家族介護から社会で支えようという介護にみんなが変わっていったんですね。今回も、政策というのは、検討して決めて実施するという実装があるんですね。まだ実装まで行ってないのです。今回方針を決めましたから、いよいよ来年からいろんな面で給付など始まっていきますので、それを本当に実感してもらって、だんだんつながっていくんだと。こういうふうな社会に変わっていくというのを、若い人も含め国民の皆さんが実感すれば、それによって変わっていくと思っていますから。2030年まで何としても続けて、これも1年限りじゃありませんので継続的にやっていくことが、最終的に時間がかかるかもしれませんけど、国民の意識とか皆さんを変えていくんじゃないかなとそう思っております。

小安:

意識を変えるのが難しいというお話があったんですけれども、確かに難しいです。ただ、やはり制度を変えただけでは、全国津々浦々には、変化が浸透していきませんので、例えば私が、いま地方自治体、特に10万人未満の自治体で、さまざまな地域との対話をさせていただいているんですけれども、人口の未来像をお見せして、この町をどうしていきたいか。その中で、この地域の事業所をどうしていきたいか。働き方をどうしていきたいかということを、老若男女で対話セッションを丁寧にやらせていただいています。兵庫県豊岡市ですとか、富山県南砺市といったところでやらせていただいているんですけれども、南砺市の場合は、地域づくり協議会の会長さんたち70歳以上の男性が多いんですけれども、彼らとともにどうしていきたいのかを若い人も交えながら丁寧に会話をしているようなところがあります。兵庫県豊岡市の事例ですけれども、丁寧に対話をしていくと3年目ぐらいから変わってきます。街の空気が変わる。ですので、制度を変えるとともに、風土・意識を変えていくという取り組みもセットで必要だというふうに強く感じています。

(ヨーロッパの国々の制度や意識は?)

宮本:

スウェーデンなどの場合は、子育が国家戦略と位置づけられているんですね。ポイントになっているのが、子育て支援と少子化対策を区別したほうがいいこと。もう1つは子ども支援という観点なのですね。出生率を上げていく施策の1つとして、家族頼みではなくて、良質な保育サービス、就学前教育としての保育サービスを充実させるということに徹底して力を注いだわけです。保育所に子どもを預けるとかわいそうかなって考えてしまうお母さんは結構いるんですよね。でも、学校に子どもをやるとかわいそうって考えるお母さんはいませんよね。それと同じように人生を歩んでいく上で、不可欠のプロセスとして保育所を位置付けていったということです。お母さんが安心して子どもを産んで、子供の未来を託せるという点で出生率を上げてきましたし、もう1つはたとえ人口が減っても少ない数の子どもで、しっかり社会を支えていく。たとえ生まれ育った家庭が困窮していても、その影響を受けることなく、力を発揮する、条件を広げてくっていうところで、非常に重要なポイントだったと思います。だから働き方、家族の在り方も重要なんですけれども、そこをどう支えるかという諸施策の中で、現金給付に還元されないサービス、特に就学前教育、良質な保育がポイントだったことは強調していいと思います。

山崎:

スウェーデンは大変参考になると思いますね。実はスウェーデン、もっといろんな事をしていまして、お子さんが一歳から一歳半までは、どちらかの親御さんが完全に休むんですね。それでもちゃんと育児休業は完全にできていますので。逆に言いますと、最初の段階では親が育児をした上で、保育所の段階では完全に保育所が受けとめると。ある意味、育児休業と保育が完全に連結している形で非常に安心感があります。短時間労働にした場合も、その分だけ育児給付が出る。そういう仕組みまでできている訳です。実は100年前からスウェーデンはそれを考えている国なのですが。我々もちょっと遅れているわけですから、もうそこにいかに早く辿り着き、それ以上にしなくてはならないと。決して諦める必要は全くなくて、日本がやるべきことはまだまだたくさんありますから、その効果をぜひとも国民の皆様に届けられるようすべきだと思っています。

小安:

“官製婚活”が始まった時には、個人的には違和感は正直ございました。けれども地域で婚活に取り組んでいる方、特に若者自身で取り組んでいる方にお話を聞いた時に、1つ合点がいったことがあるんですけれども。やはり出会いが減っている、あとコミュニケーションが少し苦手な人もいるという中で、それを支援するようなサービスをやっているんだって事を言われたときに、それはその地域で生きていく住民に対するサービスとして、ありなんじゃないかなというふうに思っているところでございます。ただ人口減少のため、食い止めるためにやっているとか、子供どもを産むためにやっているという、その目的を間違ってしまうと、当事者からは、全くワクワクしない政策になってしまいますので、そこが注意ポイントなのかなと感じているところです。

山崎:

実はこの人口問題、今まで日本政府は、なるべく価値観に入らないっていうのを一番の基本に置いてきたんですね。この問題はそれぞれの方の、まさに一生の一大事であり、個人の選択ですからこれは必ずキープすると。その上で結婚を希望される方、お子様を持ちたいという希望を実現するという社会であれば、周りの方もだんだん希望が高まっていく好循環だと思っていますから。政府としてそこは必ず外さないように。その上でスウェーデンともそうですけど、個人の価値観を大事にしたうえで子育て支援、少子化対策は可能だというふうに思っていますし。そういう理解でみんな進めているところです。

東京一極集中 都市と地方は

これからの社会の在り方、人口減少を考える上で、特に東京と地方の関係、東京への一極集中について考えていきたいと思います。新型コロナウイルスが感染拡大した期間を除き、東京への転入超過が続いています。水色で示した道府県は、人口の転出が転入を上回った地域です。8割近い道府県で転出が多くなる中、東京都では去年、転入超過となっていて、転入が転出を3万8000人以上上回りました。

ただその東京、都道府県別の出生率で見ると、全国で最も低くなっています。最も高い沖縄県が1.70、2番目の宮崎県が1.63であるのに対し、東京都は、1.04にとどまっています。

(東京一極集中が人口減少に与える影響は?)

山崎:

実は人が移動しながら減っていくっていうのが、これまでの姿なんですね。ずっと東京の一極集中が続いていまして、若干途中で何度か上がったんですけど、結局はまだ続いている状態です。一極集中といっても、実は若者が動いているんですね。10代から20代30代の方々が10万人から12万人ぐらい動いていますし、特に最近は女性が非常に東京に集まっているといわれています。そうなりますと東京というのは一番出生率が低いわけですから。全体が出生率を落としている状態があります。これまでの出生率も落ちているうち、3割ぐらいは東京圏が影響しているだろうと。そうなりますと、どうしてもこの問題、そもそも東京に集まる問題を含めてどうするかは、大きな問題になってくると思います。

古屋:

放っておけば、今後さらに東京に集中するのは間違いないなと考えています。東京は働き手が十分いますので、生活に関係するサービスも維持されていくわけですよね。そう考えますと、生活の便利性を追求して若者が東京に集まってくる。移動の自由がある中、それは妨げられないわけですからと考えるわけで。しかし労働市場を2040年までシミュレーションしていくと、東京すら実は労働供給量、担い手の数というのはパツパツで、東京から働き手を奪って、どうこうなるというレベルの働き手不足ではないということ。つまりこれは若者の奪い合いで話を終えてしまっては何も解決策が得られない。誰かが勝って誰かが負けるという発想にしかなりませんから。全く新しい発想で、乏しい人、人々をどのように活躍させるのかという観点で、環境をどう考えていくのかということを考えていかなくてはいけないと思っています。

宮本:東京に若者がやってきて、私はブラックホールなんて言い方をしたのですが、人は吸収するんだけれども、ここから子供どもが産まれてこないということが、非常に重要になってしまっている。東京はさらに世代の高齢化も進んでいくんですね。高度成長期に集まってきた高齢世代が、これからはいわゆる後期高齢者になってく。若者たちも集まってくるので、2040年に東京の人口っていうのは今より増えちゃうてしまうわけですよね。そうなってくると、日本全体が過密社会と、過疎社会の悪いとこ取りみたくいになっていく。どうするかということなんですけれども、若者たちも東京に対する憧憬もありますけれども、東京にやって来た若者たちは、やっぱり地方がいいなとか、地方でもうちょっと余裕のある暮らし方をしたいなという若者たちも多いんですね。この若者たちの夢をどう叶えるかという形で、やはり地方の社会づくり、経済作り、東京ではなかなか企画開発の仕事なんか就けないけれども、地方の町おこしとか商品作りとか、いろんな若者の創造性を生かす就業機会が、作ろうと思えばいくらでもあるわけですよね。これを生かして、逆流をどうやって作っていくかっていう事がポイントだと思います。

山崎:

東京に若い男女が集まっているという話がありますが、数からいうと実はどこから出ているかというと、政令市なのですね。両方とも1番多いのは名古屋市なのですが。例えば女性が多いのは福岡とか、大阪とか札幌、非常にたくさんの女性が東京に集まっているんです。り政令市っていうのはいろんな物が揃っていまして、働き方、環境は大変いい部分がありますから、ぜひ頑張っていただきたい。全国から集まってというより、例えば福岡ですけど。九州の女性は福岡に集まりますけど、福岡の方は東京に行くっていう。そういう現象が起きているんですね。したがって、それぞれがやっぱり自分の機能を果たす。簡単に言えば、仕事もあり、生活面を強化するというのは、結局はそれが一番いいと思いますし。東京にもう既に集まってらっしゃるわけです。この方々の出生率というのも当然大事なんですが。東京はよく見てみると、いわゆる下町といいましょうか、前から東京に住んでいらっしゃる地域って出生率が高いんですね。それに対して周辺、地方から移った世帯が多いところは、すごく低いんですね。やっぱり家族、知り合いがいない中で育てるという環境は出生率を落としていまして、そういう地域づくりも合わせて、東京はぜひやっていかなければならないんじゃないかなという感じがしております。

小安:

東京一極集中というのですが、政令指定市からの流入が多いということなんですが、私が伴走させて頂いている10万人未満の街からは、東京に行きたいという若者の声はほぼ聞いたことがありません。むしろ本当はこの街で生きていきたいんだと。けれども賃金の低い仕事しかない、やりがいのある仕事がないということが、大きなアジェンダのように感じています。地方都市の視点から見た時には、東京にもちろん行ってしまう方もいる。東京もしくは首都圏、都市部に行ってしまわれる方もいるのですが、地方の中小企業の経営者にいつも「中小企業のせいにするな」と言われるんですけれども、事業所の皆さんと共に地域の若者、特に女性が働きやすい、女性も男性も働きやすい職場を作ってくってことが、私はキーになると強く思います。あとは都市と地方の差は、働く場に関しては大企業と中小企業の差と言えるかもしれないですね。東京においても、中小企業でまだまだ働く環境が整備されてないところもございますので、東京一極集中というふうにいうところを、もう少し解像度を高めて議論する必要もあるのかなというふうに感じています。

白波瀬:

ここはすごく難しくて、移動の話になると、私の学生などにも言うのですが、まるで女の子女性だけが動いちゃいけなと言われているようなものだと。そういう意味では、ちょっと不公平じゃではないのって。メッセージがうまく伝わってないなと思うのですけど、いずれにしても仕事の場がないということは事実ですし。あるいは子育ての場が、親族の支援がないということ。何が必要かと言うと先行投資だと思うんですね。企業誘致だけではなくて、やっぱり保育と教育。先行投資するしかなくて、そういう意味ではお金がかかる。しかしながら分散というか、いろんな新しいアイデアの若い人もそうじゃない人も、日本の中で散らばっていただくようなことを想定するのであれば、やっぱりそれに動いていただくようなことは、必要じゃないかなと思ってます。

古屋:

官民の役割とよく言われますが、変わっていくのかなと感じざるを得ないなと思いますよね。いま地域の企業さん、中小企業さんの経営者たちとお話をすると、本当にさまざまな打ち手で、働き手が確保できない、人がどんどん辞めてしまうといったことに対応していらっしゃいます。賃上げは大前提として、さらに働き方、働く環境、休日の数、さまざまな打ち手を打っていらっしゃいます。こういった課題感に基づくさまざまな試行錯誤を、もっと社会全体で肯定的に捉えるべきなんじゃないかなと思っています。こういった民間企業。地方の中小企業で、さまざまな課題に直面して行われている挑戦を、もっと盛り上げて、もっと取り上げて、さまざまな課題のある地域に広げていきたいと考えていますね。

小安:

やはり産官学連携は大事かなというふうに思います。あとは市民住民の当事者意識といいますか、この町が今後どうなって、未来どうなっていくのかという、そこに向けて、あらゆるステークホルダーが対話をしていくことは、すごく大事かなと思います。まさに行政だけで解決できる問題ではないと強く思います。

古屋:

新しい発想で社会システムを再構築しなければいけないなと考えます。働き手が乏しくなって、ともすると助け合いや共助で乗り切ろうという風潮が高まりやすい社会環境になってきているのかなと思いますが、誰かの善意に頼る打ち手というのは、決して長続きすることはないと思います。何らかの報酬や、楽しさがあるからやるという、当たり前の気持ちを尊重する社会。これを再構築することが、もしかすると人口減少、少子化、こういったことに対する根本的な打ち手になるのかなと。そう考えています。

小安:

私自身も心がけるようにしているんですけれども、例えば子どもに関しても、子どもがいる人だけの問題ではなく、誰もがこれからの未来を見据えて、どのような社会づくりをしていくのかということを、子育て支援も含めてですけれども、教育も含めてですね。あらゆる視点から、議論をしていく場を作っていくことが大事かなというふうに感じています。

白波瀬:

難しいですけれども、待ったなしであろうことは確かで、日本モデルっていうのも重要であろうと。日本はやっぱり年齢とジェンダー社会だったんですね。そういう意味で、今までの画一的な制度の切り口を修正し、早急に修正する必要はあると思いまして。1つの鍵は、人育てだと思います。人にどれだけ投資をしていただけるような社会を、公のところも含めまして、いかに早急に作っていただけるか。それがやっぱり鍵になると思います。

宮本:

モデルって上から降ってくるわけじゃないと思うんですよね。この人口減少社会の中で、みんなが地域を守ろうという営みの中で、もう見えてきてるんじゃないかなというふうに思います。例えば、空き教室、空き店舗、空き家などを利用して、人手不足ですので高齢者、障害者、子どものデイサービス、そこに退職後の高齢者にも来てもらって、「癒やしのサロンに来てください」って言うと「失礼な」とか言うんだけど、「力を貸してください」っていうと、「うんうん」って来てくれるんですよね。結構その高齢者が一番元気になっていたりする。そんな形で地域の支えを作っていく。あるいはDX、デジタルの力を借りた新しい働き方、みたいなものがどんどん出来てきて、分身ロボットを使って、ALSの人がサーブできるレストランだとか、オンラインで引きこもりの人が、引きこもった部屋の中で、ホームページの作成ビジネスをやっている会社だとか、どんどんどんどん広がってきているわけです。こういう営みに自信を持って広げていくということ。併せて、ともかく少子化をストップする政策を全面的に打っていく。こういうことではないかなというふうに思います。

山崎:

実は人口減少の問題を、これだけ大変だというお話するとですね、実はかなりの方は驚かれるんですね。少子化の問題は聞いているのだけど、これほど深刻だということは、実はあまり皆さん考えてなかった。この根幹はですね。実は将来の世代について、我々は実は責任があるということだと思っていまして。少子化対策、実際に効果があるのは数十年後だと思います。しかしこれ、駅伝みたいなもので、我々がやらないと次につながらない。さっき、2100年で半減すると言っていましたけど、遠い将来のように見えますが、今年生まれた子どもたちはほとんど生きている。ずっと落ち続ける社会を我々が作ってる。逆に言うと、我々が変えないかぎり、彼らは生まれた時からそういう状態で、もう何も責任がない状態で走るわけですから。その責任といいましょうか、気持ちを持って、今変えていくんだっていう。私は十分希望を持っていまして、皆さんが理解していただければ、我々やることはたくさんありますし、モデルも、どんどん出来てくるんじゃないかなと。そういうふうに思っております。