解説者の視点! 伊東勤 × 巨人監督 阿部慎之助

NHK
2024年3月29日 午前8:30 公開

今季から巨人の指揮をとる、阿部慎之助新監督。現役時代はキャッチャーとして活躍し、引退後すぐに巨人で2軍監督や1軍コーチを務め、今季1軍監督に就任。一度もユニフォームを脱ぐことなく選手、コーチ、監督という流れでキャリアを積み重ねてきました。NHKプロ野球解説の伊東勤さんも、阿部監督と同じように、選手、コーチ、監督と、西武のユニフォームを脱ぐことなくキャリアを重ねました。同じ流れをたどる二人。2月21日、那覇での巨人キャンプを、伊東さんが訪ねました。(※2024年2月24日スポーツオンライン掲載)

新しいことへのチャレンジ


伊東さんはまずブルペンで投手陣の様子を見守っていると、ほどなく阿部監督もやってきて、伊東さんとの話が始まりました。

目の前でドラフト1位ルーキーの西舘勇陽投手などが力のこもった投球を行う中、選手の方を指して、身振り手振りも見せながら阿部監督が時には熱っぽく語る様子が印象的でした。阿部監督はどんな野球をしようとしているのでしょうか。

伊東勤さん

『巨人は世代交代が進んでいる。若い人をどのように使うかがポイントだと思います。「クローザーの大勢が故障中で、大勢が使えない場合は、ドラフト1位ルーキーの西舘勇陽を思い切って使う可能性もある」と言っていた。野手では、「若い人を積極的に使う中でも、ベテラン陣も元気なうちはしっかり使い、坂本勇人もサードにポジションを移して120試合は出て欲しい」と、休ませながら大事なシーズン終盤までしっかり働いてもらう青写真を具体的に描いていた。』

阿部監督がとにかく明るく、こんなにしゃべる人だったかなというくらい今季への意気込みを話す様子に驚いたという伊東さん。その話からは阿部監督が目指す戦い方の一端が、うかがい知れたと言います。

伊東さん

『阿部監督はこれまで2軍監督などを経験して、選手の性格や技量が把握できている。そういったことも活かして、今までの巨人がやってきた野球の形を変えたい、新しいことに取り組もうという考えでした。これまでの野球から形を変えるというのは、“打に期待して動くことの少ない静の野球”ではなく“動の野球”をするということ。走塁の部分が、巨人には欠けていた部分。足のスペシャリストを起用するなどして、足でかき回すような野球をしてくるのではないか。そのほか、投手陣では高橋礼やケラーなど新戦力への期待も語っていた。ケラーは、私が見てもボールが良かったので十分に働けそう。選手起用についても、今後の実戦で新旧の戦力をどう使っていくのか楽しみ。』

コーチから監督への昇格 メリットとは


阿部監督も伊東さんも共にコーチから監督に昇格しました。コーチをしていてそのまま監督業に移る。前述のように、チームのことを把握できている部分も多いと考えられるなど、メリットも大きいのでしょうか。

伊東さん

『去年まで原辰徳前監督が指揮をとっていた時にも、コーチとして様々な勉強をしたはず。うまくいった采配も、そうでない所も間近で見てきたことも活かせると思う。自分は監督になる前、コーチとしての2年間は選手と兼任だった。選手兼コーチ2年目にケガをしてしまって、選手を続けるのが厳しいとなってからは、もし監督になったらどんな采配を振るうかというシミュレーションをしていた。』

自分と同じように、コーチ時代に“もし自分が監督になったらどう采配を振るうか”、そんなシミュレーションもしていたのではないか。そう伊東さんは話しました。

就任一年目に日本一 要因はある“気づき”


伊東さんは2004年に西武監督に就任すると、監督1年目にして日本一を成し遂げました。コーチとしての経験が良い方に出て順調に結果が出たのか、と思いきや、つまずいたこともあったそうです。そこからの、ある“気づき”によって、チームを良い方向に導くことができたといいます。

「監督1年目の最初の時、キャンプの時から選手に対し『なんでこれができないのか』と思い、プレッシャーをかけてしまっていた。選手は窮屈だったと思う。ただ、それに早めに気づけたのが良かった」

それからは選手目線で物事を考えるようになった伊東さん。相手から話をしに来やすい雰囲気づくりを心掛けたと言います。

伊東さん

『5月か6月くらいかな。そこからは選手との距離が近くなったと思う。自分は周りがよく見える、という自負があったし、目配り、気配りは得意な方だと思う。監督1年目に日本一になれたのは、たまたまだと思うが、うまくいったと言えば、そういう選手との関係性における気づきがあったのが良かった。阿部監督も同じようなタイプではないか。うまくやるだろう。』

捕手ならではの気配りが自分を助ける


「周りが見える」「目配り、気配り」。捕手として大事な要素だと伊東さんは語ります。監督として、コーチとの役割分担もしながらどう機能するか。

そこは捕手ならではの“気配り”が、きっと阿部監督を助けることになると、自身の経験から語ります。

伊東さん

『専門分野をそれぞれ持つコーチがいるので、基本はコーチに任せる。その代わりに、その結果についての責任は全部自分が取る。トップは極力顔を出さない方が良いのではないかと思う。一番上の監督が様々な所にプレッシャーをかけてはいけない。選手はもちろん、コーチも監督の顔色を伺うようになってしまう。また、コーチとのコミュニケーションひとつをとっても、選手が見えないところでおこなった方が選手への影響が少ない。選手はそういうところも敏感に感じる。その辺の微妙な空気の見極めも大事。キャッチャー出身だけに、阿部監督もうまくできると思う。』

1点を守り抜く野球へ 捕手大城もカギ


阿部監督に大きな期待を寄せる伊東さん。阿部監督は、具体的にどんな野球で頂点を目指しに行くのか。

ポイントは守りの野球。そして、阿部監督と同じポジションの捕手・大城卓三選手の更なる成長もカギを握ると話します。

伊東勤さん

『守りの野球。1点の重みを知っているからそういう野球をすると思う。キャッチャーは大城が去年は頑張ったけど、今年は去年を踏まえてさらに良いものが出せるか。大城はリード面が良くなったが、チームをもっと勝たせるには、接戦になった時にバッテリーで勝ったという試合が作れるかどうか。大城のリードで試合をものにしたと言われるようになって欲しい。攻撃では、阿部監督は自分がやられたら嫌な野球をするのではないか。相手の隙を狙う野球。岡本和などの長打に加えて、細かい野球で点を重ねていけるか。打てない時にも点が取れる野球ができるかどうか。それができれば投手陣は十分に頭数も揃っているので、強い巨人が見られると思う。』

この記事を書いた人

小野 卓哉 アナウンサー

平成14年入局 仙台放送局

プロ野球、スキージャンプ、ラグビー、陸上などの実況を担当

仙台放送局は2度目の勤務で2013年の楽天の日本一などを見てきた