秋場所、再入幕を果たした熱海富士。
幕内の土俵は新入幕だった
去年の九州場所ぶりです。
その時の成績は4勝11敗。
入幕まで順調に番付を上げてきた
熱海富士にとって、秋場所は雪辱を果たす舞台。
多くの相撲ファンに愛される笑顔で、
インタビューに答えてくれました。
取材・文:赤井麻衣子(ゆう5時相撲部副部長)
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赤井「再入幕おめでとうございます」
熱海富士「ありがとうございます。長かったです。
やっと戻ってこられました。嬉しいですね」
赤「新入幕の場所はやはり
悔しい気持ちがありましたか?」
熱「全然勝てなくて、自滅してましたね。
硬くなって、思いっきり頭からいこうって思って、
全部前に落ちちゃったみたいな。
昔からテレビで観てた方達と相撲が取れて、
ようやく自分もそこに来たんだなって、
やっぱり嬉しかったんですけど、だめですね。
勝てるように頑張らないと。憧れちゃダメです」
赤「そこからどんなことを稽古で
意識してきましたか?」
熱「もう一度自分の型、
右四つの相撲を見直してきました。
左上手への意識を師匠から指摘されてきたので、
その流れを確認しながら
ひたすら相撲とってきましたね。
多い日で80番くらい。
80番取った日は、もうしんどい…ですよ(笑)」
赤「伊勢ヶ濱部屋には型を持った関取が
たくさんいますね」
熱「横綱の稽古も1番近いところで
見せていただいて、指導もしてくださいますし、
僕には申し訳ないくらい素晴らしい環境ですね。
あと宝富士関がもうほんとすごいんですよ。
今でも自分たちに稽古つけてくれて、
ずっと体動かして、自分がその年になって、
同じことできるかって言われたら…すごいです。」
◎さらに熱海富士が長く取り組んできたのは
“ルーティンを減らすこと”
元々、体を叩く順番や回数、土俵を足で払う動き、
タオルで顔を長く抑えるなど
10以上のルーティンがあった熱海富士。
ある言葉がきっかけで、
減らすことを意識してきました。
熱「当時部屋付きの親方だった安治川親方から、
“ルーティンに頼っているのは、心の弱さだ”って
指摘されたんです。
確かに、たくさんあると、これやんなきゃ、
あれやんなきゃって焦ってて。
待ったがかかったら、
リズムが狂うなって焦って、
相撲に集中できてなかったですね。ダメですね。
もうちょっと堂々としないと。
自信がないから、
そういうのに頼ったりしてるのかなって思って」
赤「本来は集中力を高めるはずのものが、
こなすことに必死になったと」
熱「そうです。そこから少しずつ減らして、
今はタオルで顔をおさえるくらいですかね。
相撲に集中できるようになりましたね」
◎名古屋場所では、
大奄美との十両優勝決定戦を制し
最高の形で幕内復帰を果たしました。
◎そんな熱海富士には、
心強い味方がいます。妹・陽奈さんです。
母校の飛龍高等学校相撲部で
女性初の主将として活躍しています。
熱「自分が相撲を始めた1年後に
妹も始めて同じクラブでやってましたね。
妹は技巧派なので、自分より技がうまいです。
肩透かしぺーってやられて、くいますね。
自分よりストイックですよ(笑)」
赤「普段から連絡は取り合うんですか?」
熱「本場所中は、アドバイスが来ます。
私だったらここをもっとこうするみたいな(笑)
もっとがんばるわ…って返信しますね。
1人しかいない妹なんで、かわいいですよ」
赤井「普段の過ごし方についてもお伺いします。
食事のこだわりはありますか?」
熱「昔から豆腐は必ず毎食食べています。
毎回ご飯食べる前に1丁食べてましたね」
赤井「それでお腹いっぱいにならないですか?」
熱「そうそう(笑)子どものときは
自分がいっぱい食べるんで、
豆腐を最初に食べさせて…っいうのが
親の作戦だったんですよ。
それでもたくさん食べるんで、
ただ豆腐好きになっただけでした」
赤井「お休みの日はなにしてますか?」
熱海富士「音楽、ひたすら聴いてます。
今年、人生で初めて、ライブに行って。
back numberさんのライブに行ったんですけど、
いい席で見られてほんとに超楽しかったです。
朝は、稽古の1時間前に起きるんですけど
すぐイヤホンして音楽聴きながら
ストレッチするのが日課です」
◎稽古の1時間前に熱海富士を起こすのは
付け人の蒼富士の役割です。
蒼富士「熱海富士関って言ったら
すぐ起きてくれるんです、そして起こしたら絶対
“ありがとう”って言ってくれるんですよ。
その“ありがとう”が、結構自分の、
モチベーションが上がる。
良い1日が送れるんです。
絶対言ってくれるんですよ。仕事とかも毎回、
ありがとうって言ってくれるんです」
熱海富士「ふふふ、ありがとうございます」
◎そんな熱海富士が東京での本場所中、
ゲンを担ぐ場所というのが
国技館近くにあるアイスクリーム店です。
熱海富士「取組が終わったら必ず寄るんです。
いつもアイスを4つ食べます。
勝った日は翌日も同じ種類にしたり、
負けたら種類を変えてみたりしてますね。
夏場所で、13勝できたのも
アイス屋さんのおかげかな15日間来たもんね。
合計60個。ふふふ。体は健康です!」
赤「最後に秋場所の目標を教えてください!」
熱「今度は幕内勝って、勝ち越して、
2桁勝って今よりも上に行きたいですね。
自分より一喜一憂してくださる方がたくさんいて
その人たちがいてくれる限り頑張りたいです」
強くて優しい、笑顔たくさんの熱海富士関
ありがとうございました!
((こぼればなし))
赤「関取は子どものころから
体が大きかったんですか…?」
熱「小学生で170㎝あって
卒業するときは100㎏超えてました。
健康手帳みたいなのがあったんですよ。
100㎏のところに赤いラインが引かれていて
それを赤道ってみんなで呼んでたんです。
ついに卒業するときに、体重が赤道を越えて…
祝・赤道越え!みたいな、笑いましたね(笑)」