なぜ不足する?!10代の性知識 その背景とは 2021年11月9日

NHK福岡放送局 ディレクター 中村宝子
2022年4月4日 午前11:03 公開

11/5(金)放送のバリサーチを担当したディレクターの中村です。

NHKで今月実施中の、「#BeyondGender九州・沖縄」キャンペーンに合わせて、今回は福岡の性教育について取材しました。

最近、よく耳にする「ジェンダー」という言葉。

ジェンダーとは、男らしさ・女らしさなど社会的に作られた性差のことを指します。

19日に九州沖縄で放送する番組のタイトル「Change!ジェンダーをこえて」にも使われているのですが、その中でも大切なのが、ジェンダーと性(セックス)にまつわる問題。
今回、いま不十分だと指摘される性教育の現場はどうなっているかと取材を始めました。  

しかし、取材現場を検討していた矢先、同僚の男性ディレクターWさんからこんなことを聞かれました。

「性教育とジェンダーって、何の関係があるんですか?」。

・・・男子校育ちで、性教育を受けた覚えがあまりないというWさん。

「性教育の問題は教育の問題、ジェンダーの問題はジェンダーの問題なのに、なぜジェンダーと結びつけるのですか?」と聞くWさんに対し、私は具体的な例を示して答えることができませんでした。

そこで、「ジェンダーの問題はどうセックスに影響を及ぼしているのか。性教育とのつながりは?」とその関連を調べることにしました。

まず分かったのは、今、「セックスをはじめとした、性にまつわる若者の相談が増えている」という事実。相談機関やNPO団体などに聞き取りをする中で、望まない妊娠や中絶について苦しむ若い女性はもちろん、「アダルトビデオなどの情報があふれる中、どうセックスして良いか分からない」と悩む男性も多くいるということです。

これまで福岡では、男女別に生徒が集められ、男子生徒向けに「加害者になってはいけない」という講義がされたということもわかりました。

「男だから(女の子の体を無理矢理触る)」「女だから(被害に遭う)」―、こうした思い込みもジェンダーの問題のひとつ。性教育がいかにジェンダーに密接に関わっているかがうかがえるエピソードです。

さらに、「今、性の問題の低年齢化が進んでいて、特に福岡は若年の中絶が多い」という話も聞きました。

「中絶が多いというのは本当なのか。そして一体、ジェンダーとどう関係しているのか?」。

そこで、厚生労働省が出している中絶件数などのデータにあたって調査を進めました。

すると人口1000人あたりの中絶件数は、福岡は20歳未満が三番目に多い(2019年,都道府県別 人工妊娠中絶件数などから算出)という数字が見えてきました。

若者の性に詳しい産婦人科医の田畑愛先生(熊本県)にこのデータの見方を尋ねたところ、「性教育の不足が密接に関係した問題」だと教えてくれました。

増えている性感染症とともに、「コンドームを使わないでセックスする若者が増えている」ことが推察できるこのデータ。身体の仕組みやコンドームの役割をよく分かっていないために、安易に、避妊せずにセックスしてしまう若者が多くいるということが見えてきます。

さらにセックスの主導権を男性に任せたり、避妊を言い出せなかったりするジェンダーの問題を背景にあるという指摘も受けました。

性感染症も中絶も、医療行為が必要となり、体に影響が出ます。成長中の若者ではよりそのリスクがあるのではないでしょうか。
では、こうした性の問題をどう解決していけば良いのか。  

今、期待されているのがジェンダー観を含めた「性に関する教育」です。

放送では若者のセックスの是非までは言及しませんでしたが、田畑先生は「妊娠しても出産して責任のとれない高校生までは気軽にセックスするべきではない。大人である私たちがそこまで具体的に教えるべき」、と言い切っていました。

「寝た子を起こすな」と、性教育に消極的な学校教育が続いてきましたが、田畑先生のようにはっきりと中高生にコミットする先生も現れ始め、現場はようやく、潮目を迎えているといえそうです。

福岡県でも、性暴力の被害件数が多いなどの状況を受けて、2019年に「福岡県における性暴力を根絶し、性被害から県民を守るための条例」が制定され、教育活動として、性暴力対策アドバイザー派遣事業が始まりました。

その事業のひとつが、放送でご紹介した性暴力被害者支援センター・ふくおかの本村さんの活動であり、高校生に向けて「性的同意の心構え」までも教える授業です。

本村さんの柔和な語り口からは、セックスをタブー視せず、教育現場でも真摯に向き合っていこうという姿勢を感じました。

授業後には、担当教諭や生徒が「性について考えることが大事」と話し、変化していく様子も目の当たりにしました。

中絶や感染症の増加、レイプなどの性暴力―と聞くと、「ジェンダーと何が関係しているの?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、セックスの問題はジェンダーや暴力、感染症などに密接に関わっています。
性行為には相手の考えも影響するため、決して、一人だけの問題ではありません。  

さらに、セックスの問題は男女間だけの問題ではなく、同性同士でも起こりえることですし、LGBTQ+の方も同様に悩みを抱えています。

学校教育がなかなか広がらなかったように、性については普段からオープンに議論しないことが多く、家庭でも学校でも「どう教えて良いか分からない」という大人も多いかもしれません。

しかし取材を通して、性の問題はひとりひとりの体や心に関わる権利に関わることがよく分かりました。取材者として、今後さらに少しでも真剣に考えていただく機会を作りたいと、19日金曜よる7時半からの番組でも改めて深掘りしていきます。

「Change!2021 ジェンダーをこえて」11月19日(金)午後7:30NHK総合(九州沖縄地方)

最後に、この場をお借りして、撮影にご協力いただいた性暴力被害者支援センターの皆様、玄洋高校の先生や生徒の皆様にお礼を申し上げます。

引き続き性教育に限らず、ジェンダーの問題に向き合って調べていきますので、ぜひたくさんの方からご意見をお待ちしています。

追跡!バリサーチ「ジェンダーをこえて、考えよう」