虹クロフレンドの皆さん。ご機嫌いかがですか?
私はテレビや映画や舞台でお芝居したり、歌ったり踊ったり短歌を詠んだり、まあ好きなものにはなんでも手を出して暮らしている坂口涼太郎と申します。
今回は番組の内容を紹介するのと同時に、思春期をこじらせすぎて転んで転んで転びまくって、壁という壁にぶつかって傷だらけになりながらも這いずり回るようにして10代を過ごしてきた私の気持ちも僭越ながら盛り込んで、皆さんにお手紙を書くような気持ちでお話ししていきたいなと思います。よろしくねん。
さて、今回のクローゼットさんは「体も心も男性だけど女性に見られたい」アキさん17歳。
小さい頃からかわいいものが好きで、家族にも女の子になりたいと話していたけれど、思春期になって「自分が女性ではなく、完全に男性だな」と思うようになったんだって。今でも女性の服を見ると「ああいうの着てみたいなあ」と思うけど、まだかわいい女性の格好はしたことがなくて、このまま心にわだかまりを持って生きていくのか、どうしよう、どうすんねん自分!というお悩みでした。
そんな今回の虹クロのタイトルは「男だけど、かわいくなっちゃダメですか?」なんやけど、私は食い気味で「ええよ!!」って言いたい。だって、誰でもなりたい自分になる権利がこの世界にはあって、あなたがそうしたいならそうすればええやないの!当然やないの!…と絶叫したいところだけど、頭ではわかっていてもそうできないのが10代兼思春期ですねん。そうできたらこの番組もコラムも私見てませんよ。ふっ。とほくそ笑んでいるよね今きみは。だって10代の私もそうだったもん。あの頃の自分だったら今スマホ投げ捨ててた。
私もアキさんと同じで小さい頃からかわいいものやキラキラしたものが大好きで、おかんのバレエ教室で見たチュチュっていうバレリーナが着るあのスカートが全開になっててパンツ丸見えの(パンツじゃないけど)衣装を着させてもらったり、スナックをやってたおばあちゃんのミラーボールみたいなギラギラのドレスを着てちゃぶ台の上で歌い踊って、涼太郎オンステージ、あ、オンちゃぶ台したりしてた。
おとんは「また男の子が…」みたいなことをぼやいていた気がするけど、まあ幸運なことに自由に放牧というか、そのままのびのび育ってきた気がします。
小学校に通うようになってもそんな感じで、ミュージカルとかきらきらかわいいが好きだったので、仲良くなるのはだいたい女の子。男子からは「おかまー」とか言われたけど「あんたほんまうるさいで。うちのこと好きなん?」とか言って「男子って本当にアホよね。ふっ。」と髪をかき上げながら、おませをかます日々でした。
そんな私も思春期に突入すると自分がなりたい理想の自分と実際の自分が違いすぎることに気づき始めて自信をなくし、ムンクの叫びみたいに絶叫&絶望して白目みたいな状態になることが激増しました。
アキさんも「腕とか脚の毛が目立ってくるようになって、それを剃ってる時とかに気持ち悪いなとか、もうちょっと薄かったらこんなことしなくてもよかったのかもと思う」と言っていたけど、私もまさにそれで、アキさんと同じ度数がきつい牛乳瓶の底みたいな、おめめ5倍で縮小されるメガネをかけていたし、のちのちコンタクトにしてもメガネをかけていない自分の顔が足の裏みたいで恥ずかしくて、コンタクトしてるのに伊達メガネをかけるっていう体張る芸人さんみたいなスタイルで生活してたし、小さい頃からひどいアトピーだったからゾンビみたいに肌荒れするし(今でも映画やドラマでゾンビを見るとあの頃の自分を思い出してちょっと切ない)、おまけにニキビも大豊作だったし、きらきらかわいいとか自分が思い描く”美”とは全然ちゃうやん俺。と自分のことを鏡で見るのも耐えられないほど自分のことが嫌いやった。
たぶん今アキさんが悩んでいる「男性だけど女性の服を着たくて、女性のようにかわいくなりたいけどできない」って、種類は違えど「なりたい理想の自分と現実の自分の容姿や性格が違う」っていう、おそらくほぼ全人類がぶち当たったことのある悩みなんじゃないかな。
きっとあなたが「あの人美しいなあ、羨ましいなあ」と思う誰かにも必ずコンプレックスがあって「本当はこうなりたい。こう見られたい」というその人なりの理想や悩みがあると思うのだよね。
そう考えるとみんなが他人とは違う自分だけの容姿や性格を存分に活かした「かわいい」「かっこいい」「イケてる」「美しい」を自分なりに試行錯誤して体現していった方がおもしろくない?
自分は他人と違うなってことが気になって、隠したり悩んだりすることがあるかもしれないけど、むしろその違いがあなたの大切で特別な部分なんだよ。
"違い"はあなたの宝物なんだよ。
だって、この世界にいる人たちがみーんなおんなじやったらおもんないもん。
アキさんは「思考回路とか言動とか全体的に見て自分は”女性ではないようなものの集まり”」と言っていたけど、この世界に生きている人はみんな曖昧な何かの集まりなんじゃないかなと私は思います。
セクシュアリティとかジェンダーとかアイデンティティとかルックスとか、人それぞれ全員が違う色を持っていて、それこそ虹みたいに境目のないものだから、そのときにその人がそうしたいこと、そうなりたいと思ったことが全てなんじゃないかな。
"普通"なんてこの世に存在しないし、性別やジェンダーなんて関係なく、その時になりたい自分が世界で最高の自分だし、その時に「すてきだな。この人と一緒に生きていきたいな」と思える人が世界に一人だけのあなたの好きな人でええやん。
好きな人がいなくてもこの世界には恋愛以外の素晴らしいことがいっぱいあるからそれもええやん。
自分のしてみたい格好をしてみたかったらしてみたらいいし、たとえ自分以外の人間に笑われても嫌われても、それが自分の世界の中で最高の自分の姿なんやったら、そんな反応どうでもよくない?「あ、この人は自分とは違う価値観の人なんだなあ。The End」それでよくない?
街中で通りすがりに舌打ちされたり睨まれたり怪訝な顔をされても、その人とこれから心を割って関わることなんてたぶんないし、翌日にはあなたのことなんてすっかり忘れていると思うんだよね。
そんな人にどう思われるかを気にして、ありもしない"普通"っていう概念に自分を合わせて、恥ずかしがって、自分の理想の姿を閉じ込めておくより、なりたい自分になってみようよ。
アキさんは「色々なことをしゃべれて、相談できて、悪いところを言い合っても大丈夫な関係の友達と街を歩いたり、服とか選んだり、自分が好きなものを一緒に見つけられることができたら嬉しい」と言っていたけど、自分の理想の世界を豊かにしていって、それを願って考えて行動していたら、必ずあなたと同じ世界に生きている人が現れるよ。出会えるよ。
でも、「自分の好きなかわいい格好を人に見せる目的ではやっていなくて、つらいことがあったときに人に迷惑をかけずに自分が自分を認めてあげられる場所をつくっている」とコメントしてくれた同じ「男だけどかわいくなりたい」ニキさん17歳も、それはそれでいいんだよ。
でも、自分がなりたい格好を「迷惑」だなんて思わなくていいんだよ。誰も迷惑じゃないよ。
もし迷惑に思う人がいるならそれはニキさんとは違う理想と考え方を持っている人なだけで、気にしなくていいことだよ。
もし、あなたを否定したり傷つけたりする人があなたにとって大切な人だったら悲しいけど、それはこの世界にはいろんな考え方の人がいて、誰が正解でも間違いでもないからしょうがないことなんだよね。
それが家族でも、恋人でも、親友でも、あなたが生きづらければ離れていいと思う。
離れることは裏切ったり見捨てることとは違うから。
アキさんは「大学生とかになったときにひとり暮らしを始めたい。これから自分のしたいようにしていく中で自分に合うかわいいを見つけてみたい」と言っていたけど、それはほんまに賛成で、やっぱり一人になれる空間や、あなたが安心できる空間は大切やと思うねん。
それぞれの人にそれぞれの適切な距離感があるし、一緒にいることが愛ではないと私は思います。
離れていても、遠くにいても、自分の大切な人を愛することはできるし、ふれあえるよ。
だから「今いる場所がしんどいなあ」とあなたが感じていたら、大変なことやと思うけど抜け出せる時に抜け出してみて。
今どうしても抜け出せない環境にいて、耐え忍ばなきゃいけない人は抜け出せるまで自分が傷つくことがないように嘘をついていいから生き抜いてみて。
「もっと私に相応しい素敵な場所があるのだ」と信じて逃げきってみて。
ちなみに私は医療や漢方や美容の力を存分にお借りして、なんとかアトピーや肌荒れと良好な関係を築き、嫌いだった自分の容姿も「今生はこの姿を活かしてやっていくか」と受け入れて、表情の作り方やファッションやヘアスタイルをロッキーのテーマソングが聴こえてくる勢いで調査研究練習して、自分なりの"美"を体現してみたら、私のことをおもしろいとか美しいと思ってくれる人が現れてくれたし、自分に合う化粧品やコスメもデパコスからプチプラまで人体実験するように試しまくって、ようやく自分に合う化粧品が見つかったのはつい最近のこと。ほとんど30年かかったよ。とほほ。
そうやって体当たりして失敗して傷だらけになりながらも映画や演劇やドラマやテレビや本やアートから学校では教えてくれない色んなことを教わって、自分と向き合って対話して考えて行動してみた結果、今は自分のことを愛せるようになりました。
10代20代のときよりも今の自分が見た目も中身も一番好きやし、過去最高に美しいと思っています。あ、自称やけどね。
そして、これからもそれは更新されていくんやろうなと思ってます。あ、勝手にね。
「愛する」とは「好きも嫌いもそれをそのまま受け入れること」だと私は思うんやけど、せっかく今生はこの容姿でこの内面で生まれてきたんやからそれを全部受け入れて、愛して、この自分を存分に活かした「かわいい」を体現した人生を一緒に送っていこうよ。
アキさんは最後「ひとりで誰にも話さずに抱えていたので、少しずつ考えが固定されていってたんだなと思いました。自分の解像度がすごく上がって、ますますメイクをして、かわいい服を着てっていうのがしたくなりました。」と言っていました。
そう。今はひとりだと思っているあなたも、絶対にひとりじゃないから。
この世界には必ずあなたと同じ理想を持っている人がいて、あなたを受け入れて、愛してくれる人がいるから。
これはこじらせ散らかして、自分のことが大っ嫌いで、失敗ばっかりで自信なんて微塵もなかったけど、今は自分のことが大好きで愛おしくて「生まれてきてほんまよかったー。こんなに幸せになれると思ってなかったー。ラッキー」と思っている坂口涼太郎があなたに約束するから。
だから、しんどくて辛くてどうしようもない夜を過ごしているあなたも、ちょっと坂口に騙されたと思って、今を生きてみてね。
今の自分に向き合って、考えて、行動しているあなたはほんまに素晴らしいということを忘れないでね。
あなたにしかない色でこの世界を思いっきり色づけて、愛してみてね。
最後まで読んでくれてありがとう。
あなたに贈る「#涼短歌」
かわいいをクローゼットに揃えたらあなたの色で虹に向かおう
全力で愛を込めて
坂口涼太郎より