中東パレスチナのヨルダン川西岸地区の難民キャンプで、武装勢力を掃討するためとして大規模な軍事作戦を進めていたイスラエル軍は、5日に部隊を撤収。難民キャンプでは、イスラエル軍の作戦で犠牲になった人たちの葬儀が行われました。
イスラエル軍は過激派の拘束や武器の押収など作戦の成果を強調していますが、パレスチナ側では不満が高まり緊張した情勢が続いています。別府キャスターの解説です。
(「キャッチ!世界のトップニュース」で7月6日に放送した内容です)
・難民キャンプの民間人も巻き込まれる
現地時間の5日朝8時前にイスラエル軍が部隊の撤収を発表し、およそ48時間続いていた軍事作戦は、ひとまず終わりました。それと共に、BBCなどの記者たちは一斉にジェニンに入り、軍事作戦が与えた大きな破壊と被害の実態がようやく国際社会の目にさらされるようになりました。その実態は、ひと言で言えば、衝撃的です。
ジェニンが受けた被害は、地上部隊に加えて無人機による上空からの攻撃などが行われた結果、多くの住宅や商店が完全に破壊され、至る所にがれきの山ができています。また、焼けた車もあちらこちらに見られます。
CNNの記者は、「7,000人から8,000人が家を破壊され、住む場所を失った」と現場から伝えています。電気、水道、通信のインフラも大きな被害を受けました。
・パレスチナ側の反発
バレスチナ側は、当然のことながら、強く反発しています。
イスラエルが軍事作戦に乗り出したのは、過激な武装勢力のメンバーを拘束し、武器を押収するためだとしています。一方で、難民キャンプの人たちからすれば、民間人が巻き込まれ「キャンプ全体が攻撃の対象にされた」と受け止めています。
ニューヨーク・タイムズは、「イスラエル軍は戦術的な成功を収めたが、作戦は大きな戦略を欠いていて、より多くの攻撃や報復をもたらしかねない」と批判する専門家の分析を伝えています。実際、今回の軍事作戦は過激派が生まれる土壌となってしまっている、バレスチナの根本的な憤りや不満に対する解決策にはなっていません。
1967年以来、ヨルダン川西岸地区はイスラエルの占領下にあります。そうした中でイスラエルは、ユダヤ人入植地を拡大し続けています。こうした入植地は、紛れもない国際法違反です。
バレスチナの人々は、暫定自治政府がイスラエルに対抗できていないとして失望を深め、一部の若者を過激な武装勢力に走らせています。経済的な苦境も背景にあります。
・緊張の高まりを懸念 ガザ地区での報酬も
緊張がいっそう高まるだけではないかと懸念されています。現地時間の5日未明、パレスチナのガザ地区の武装組織がイスラエルに向けてロケット弾を発射したのに対し、イスラエル軍はガザ地区の軍事施設を空爆しました。
パレスチナ問題を解決するのは、空爆や地上部隊ではなく、結局は“対話と交渉”だと言うことを改めて肝に銘じる必要があります。
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