■ふるえの見分け方

「ふるえ」の原因となる病気は、さまざまです。
最も患者数が多いと考えられているのが「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」。何かをするとき、両手にふるえが起きます。緊張でふるえが強くなるのが特徴です。
「パーキンソン病」も7割の人で手がふるえる症状が出ます。初期には何もしていないとき片手がふるえます。動作がゆっくりになる・嗅覚低下・便秘などの症状を併発するのが特徴です。
「バセドウ病」では常に両手が細かくふるえます。多くの場合、動悸(どうき)・多汗・首の腫れなどを併発します。
脳卒中など小脳の病気で手がふるえることもあります。何かをするとき片手がふるえます。目標物に手を近づけるとふるえが大きくなるのが特徴です。
別の病気の治療薬が、ふるえを引き起こすこともあります。向精神薬、抗てんかん薬、胃腸薬、気管支ぜんそくの薬などの一部が原因になる可能性があります。
■本態性振戦 診断まで

ふるえは、脳神経内科を受診するのが一般的です。まず問診を行い、「どういうタイミングでふるえが起きるか」「どちらの手がふるえるか」「家族にふるえる人はいるか」などを医師が聞き取ります。次に、実際のふるえを確認します。文字を書いたり、コップを持ったりなど、ふるえが起きる状況を再現し、様子を観察するのです。またCT、MRI、血液検査なども行い、異常がなければ本態性振戦と診断されます。
■本態性振戦の薬による治療

本態性振戦の治療にはβ遮断薬を使います。本態性振戦は、異常な信号が脳から手の筋肉に届くことで起きます。β遮断薬はその異常な信号が筋肉に届く前に止めることで、ふるえを抑えると考えられています。
■切らずに治す 集束超音波治療(FUS)

本態性振戦には手術のチョイスもあります。集束超音波治療(FUS)は2019年に保険適用となった新しい手術です。
超音波発生装置から出る千本近い超音波を、視床Vim核という場所に集中的に当てて温度を上げ、熱で固めます。視床Vim核はふるえの増強に関わっていることがわかっており、このはたらきを抑えることでふるえを止めるのです。FUSは超音波1本1本のエネルギーが弱い上、ピンポイントで当てられるため、周辺の脳にダメージを与えにくいのも特徴です。頭蓋骨に穴を開ける必要がなく、患者の負担も少なくてすみます。