“防衛産業をウクライナに” 積極アピールの狙いは?(油井’s VIEW)

NHK
2023年9月27日 午後5:13 公開

アメリカを訪問していたゼレンスキー大統領は、自らが進めている「欧米の防衛産業の誘致」で成果があったと強調しました。

(「国際報道2023」で9月25日に放送した内容です)


「アメリカの歴史的な決断だ。兵器と特に防空システムを共同生産する」

「ウクライナ人、アメリカ人双方の新たな雇用となる」

ゼレンスキー大統領は、訪米中にアメリカの防衛産業の団体と共同生産や技術開発に向けて協力する覚書を交わしたと発表し、その画像を公表するなど成果をアピールしています。

ただ、いつ頃、どのような防空システムを共同生産するのか詳細は明らかにしていません。

ロシアとの戦闘が長期化する見通しの中、アメリカでは来年、大統領選挙があることから、ウクライナ政府にとっては、選挙の結果にかかわらず、アメリカの防衛産業にウクライナを長期的に支援して欲しいという狙いがあります。

それは、ゼレンスキー大統領の訪米に伴い行われた、ウクライナの経済復興について話し合う、アメリカとウクライナの閣僚会議でも垣間見えました。

ウクライナの閣僚が強く要請したのが、アメリカの防衛産業のウクライナ進出でした。

「ウクライナの経済復興とアメリカ企業の好機として注目して欲しいのが、防衛産業だ」

「ジャベリンやハイマースなど様々な兵器が来ているが、ウクライナで製造することが米企業にとっても賢明な動きのはずだ」

誘致するウクライナ側の思いが伝わってきましたが、一方のバイデン政権側は、そこまで積極的ではない印象を受けます。

バイデン政権は、今月、ウクライナの経済復興を担当する特別代表というポストを設け、プリツカー元商務長官が就任し、この会議に臨みました。

経済復興には積極的と言えますが、プリツカー氏は防衛産業の進出については多くを語らなかった模様で、アメリカの防衛産業がどこまでウクライナに進出するかは今後の焦点の 1つと言えそうです。

ただ、ウクライナ政府は誘致活動に積極的で、近く「防衛産業フォーラム」を開く計画です。参加する企業数についても先日(16日)、ゼレンスキー大統領が21の国から86の防衛企業としていましたが、きょう、クレバ外相が26の国から165の企業が参加する予定と発表。ますます多くの企業が関心を示しているとアピールしています。

ロシアとの戦闘に勝利し、同時にウクライナ経済を再生させる。

そのためには、ウクライナの防衛産業の復活と強化こそが最も近道とゼレンスキー政権は考えているようです。


油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。