アメリカ「支援疲れ」?大統領選にも影響か(油井’s VIEW)

NHK
2023年9月8日 午後4:04 公開

6日、ウクライナの首都キーウを訪れたアメリカのブリンケン国務長官。新たな軍事支援を発表し、ウクライナを支え続ける姿勢を強調しました。

両国の結束ぶりを内外に示した形ですが、ウクライナ側はアメリカの支援に感謝しながらも、さらなる支援、特にバイデン政権が慎重な長距離兵器の供与を改めて訴えました。ウクライナ側としては、今のうちにさらなる支援を確実にしたい狙いがあるとみられます。

というのも、アメリカ国内で広がる「支援疲れ」があるからです。

(「国際報道2023」で9月7日に放送した内容です)


「我々はウクライナへのATACMS長距離ミサイルの供与に関して詳細に話し合いを行った。この選択肢が可能だということをうれしく思っている。米国政府内の議論が前向きな決定につながると期待している」

こう述べたウクライナのクレバ外相。ウクライナ側としては、来年、アメリカで大統領選挙が行われるのを見据え、今のうちにさらなる支援を確実にしたい狙いがあります。

というのも、アメリカ国内で広がる「支援疲れ」があるからです。その傾向、世論調査で鮮明になりつつあります。

アメリカCNNテレビの最新の世論調査によりますと、アメリカのウクライナ支援について「もう十分」と答えた人は51%、「さらに必要」と答えた人は48%となっていて、「もう十分」と答えた人が増えて多数派になっているのです。

党派別に見ると与党・民主党支持者は「さらに必要」と答えた人が61%で多数派なのに対して、野党・共和党支持者は「もう十分」と答えた人が59%で多数派となっています。

特に、共和党の間でウクライナ支援はもう十分だと反対の声が広がっているのです。

来年の大統領選挙に向けた共和党の候補者の中でも、現在支持率が最も高いトランプ大統領を始め、支持率上位3人は、いずれもウクライナ支援の継続に反対もしくは消極的な立場です。そして、その後を追う3人はウクライナ支援に積極的な立場となっています。

こうした中、共和党の支持者の間では、「ウクライナのための共和党員」という名前の組織が先月、発足しました。

こちらのような動画をテレビで放送するなどウクライナ支援を呼びかけるキャンペーンを展開していて、共和党の間でウクライナ支援の是非をめぐる議論が活発化しています。

ロシアのプーチン政権は、こうしたアメリカ国内の動向も見据えてウクライナで戦闘の長期化を図っていると見られ、アメリカの議論の行方にウクライナを始め国際社会は注視しています。


油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。

(この動画は2分58秒あります)