中国では、アメリカのスパイ摘発の発表が相次いでいます。
先月(8月)には、曽容疑者(52歳)と、※かく容疑者(39歳)の2人の中国人を、アメリカのCIAに協力したスパイ容疑で摘発したと、中国国家安全省が発表しました。
(「国際報道2023」で9月11日に放送した内容です)
曽容疑者はイタリア滞在中にイタリアのアメリカ大使館の職員から、かく容疑者は日本留学中に日本のアメリカ大使館の職員からそれぞれ、接触を受けたとしています。
(※かく容疑者の漢字は、「かく」はヘんが「赤」で、つくりが「おおざと」です)
その上で2人ともCIAのスパイになる協定に署名し、アメリカ側の訓練を受けたとしていて、曽容疑者は中国の軍事関連会社の社員だったことから軍事関連の機密情報を、かく容疑者は中国に帰国後、政府職員になったことから政府関連の情報をそれぞれCIAに提供したと主張しています。
中国のこの発表に、アメリカ政府はコメントを避けていますが、この背景にはCIAの長官がことし7月に行った「中国でのスパイ獲得活動が進展している」という発言があるのは間違いないと見られます。
この発言に対して中国外務省は猛反発し「対抗措置を講じる」という声明を発表。
そして、中国の情報機関である中国国家安全省が、CIA長官の発言からおよそ10日後に、SNSの公式アカウントを開設し、アメリカのスパイ摘発のニュースを相次いで発表するようになったのです。
さらに、このアカウントにはこのような動画を掲載し、みずからの活動を喧伝しています。
「私は、沈黙に身を隠し、目に見えない剣を持ち、火薬煙のない戦場で、国の平和を守っています」
中国国家安全省としては、CIAによる中国のスパイ獲得活動はうまくいっていないとアピールするとともに、スパイ防止には国民の協力が欠かせないとして警告を発し、力を呼びかける狙いもあると見られます。
油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分18秒あります)