なぜリスクの高い兵器を?ウクライナにクラスター爆弾供与へ(油井’s VIEW)

NHK
2023年7月10日 午後2:44 公開

クラスター爆弾の供与は、ウクライナ政府の要請を受けて、この3、4か月間、アメリカ国内で議論が続いてきました。クラスター爆弾を供与すれば長期的にウクライナの人達に被害を与えるリスクがあるからです。

(「国際報道2023」で7月7日に放送した内容です)

しかし、アメリカ議会の野党・共和党は、幹部4人がバイデン大統領に書簡を送り、「ウクライナの指導者達は、クラスター爆弾に伴う自国民へのリスクを認識しているが、ロシア軍による日々の残虐行為と脅威の方がよりリスクが高い」

こう指摘してウクライナ政府の要請に応じるよう訴えてきました。

また、バイデン政権の中でも国防総省からは守りを固めるロシア軍に打撃を与えられるという声が強まっていました。

「クラスター爆弾は戦場で違いを生み、塹壕にいるロシア軍に対して有効というのが軍の助言だった」

しかし、一方で課題についても述べています。

「NATOの中には、クラスター爆弾禁止条約を結んでいる国がある。供与がNATOの分断につながる懸念がある」

侵攻が続くなかでのNATOの分断は避けたいところですが、供与をめぐる懸念は欧米の人権団体からも出始めています。

ニューヨークに本部を置く人権団体「ヒューマンライツ・ウォッチ」は声明を発表し、「ロシア・ウクライナ双方がクラスター爆弾を使用し、民間人に死傷者が相次いでいる」と警告。使用の中止を呼びかけるとともにアメリカ政府に対しても供与しないよう訴えました。

バイデン政権は、これまで欧米の結束を重視してクラスター爆弾の供与には慎重な姿勢を示してきました。ただ、今、供与に傾いている要因は、ウクライナによる反転攻勢が厳しい状況にあるからと見られています。

ミリー統合参謀本部議長:反転攻勢は非常に困難で時間がかかり、多大な犠牲が出るだろう。ウクライナは、豊富な弾薬と強大な軍隊を持つ人口1億4千万の大国と戦っているのだ。

ウクライナ政府は、バイデン政権に対して・クラスター爆弾、ATACMSなどの長距離兵器、それにF16戦闘機を求めてきました。

アメリカはいずれもこれまでは慎重な姿勢を示してきましたが、反転攻勢の行方次第では、こうした兵器の供与の可能性が高まり、戦闘激化そして市民の犠牲の懸念も強まりそうです。


油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。

(この動画は2分44秒あります)

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