苦しみを越えて逆転でパリ五輪へ 卓球・伊藤美誠 独占インタビュー

NHK
2024年1月25日 午後3:04 公開

優勝するしかチャンスがない」「好きなのに嫌いなまま終わりたくない

東京オリンピックで金・銀・銅、3つのメダルを獲得した伊藤美誠選手。

しかし、ことし開催されるパリオリンピックへの代表選考レースでは、出場できるかどうかの瀬戸際に立たされています。

女子シングルスのオリンピック出場枠は2つ。伊藤選手は現在3位です。

今月22日に始まった代表選考レース最後の大会となる全日本選手権で、“逆転”での代表内定を目指す伊藤選手。

大会前、NHKの独占インタビューで明かしたのは、この舞台に至るまでの苦しみでした。

(スポーツ情報番組部 ディレクター 高瀬智基)

東京五輪の後、すべてがしんどかった

最後の代表選考レースとなる全日本選手権を前に、NHKの独占インタビューに現れた伊藤選手。ここに至るまでの知られざる苦しみを語りました。

すべてがもうしんどかったです。生活もしんどいし、卓球もしんどいし。“卓球をやめてやる”って思うぐらい、しんどかったです

2021年の東京オリンピックで、卓球では日本人初となるオリンピック金メダルを混合ダブルスで獲得。さらに女子団体戦で銀メダル、女子シングルスで銅と、あわせて3つのメダルを獲得し華々しい成績を上げました。その前後は「勝って当たり前」というプレッシャーで苦しんでいました。

そして、すべてを東京オリンピックで出し切った、そう感じていた伊藤選手にとってパリオリンピックへのモチベーションをすぐ高めることは難しかったといいます。

本来は東京オリンピックで締めたいっていう気持ちがすごくあった。東京オリンピックまではやっぱ一番練習したって自信持って言えるくらい練習したので。東京オリンピックという目標を立てて、終わってから考えようっていう感じだったので…終わったあとにみんなから“パリにむけて頑張ってね”って言われたことに関して、すべてを出し切ったものにもう一度、活を入れるってすごい本当に難しかったし、本当に本当にたいへんでした。切り替えが

代表選考の基準変更で…

さらに伊藤選手を苦しめたのが、オリンピック代表の選考基準の変更でした。

東京オリンピックでは、国際大会の結果をもとにした世界ランキングの上位選手から選ばれていました。しかしパリオリンピックでは、国内の大会も対象に加えられました。伊藤選手は休む暇もなく、疲労が蓄積し、腰のけがにも見舞われました。

海外の試合も出続けながらも、日本の大会がもう全日本みたいな試合が4回5回あるという感じなので、結構タフはタフです。気持ち的にもしんどい状態とかで試合に臨まないといけないのが、もう何回もありました。卓球が楽しいっていう気持ちよりもしんどいっていう気持ちの方が強かった。環境自体をガラって変えないと自分自身が壊れてしまうなと思って…

精神的にも追いつめられるなか、伊藤選手はあえて卓球以外のことも取り組んだり、環境を変えたりして気持ちを取り戻していったといいます。

私生活ではずっと“卓球卓球”だったのを、ちょっと色んなことしたり、行けなかったいろんなところに行ったりとか、料理もしてみたりとか。自分自身で楽しくできる環境に変えたいなと思って。気持ち的には楽しいなって素直に言えるようになりました

ベンチにコーチを置かない

試合の時にも、大きな変化がありました。

ベンチにコーチを入れず、ひとりで試合に臨むようになったのです。

(ベンチにコーチがいないことで)自然体っていうか、自由にやっているなって。あとは応援の力がすっと自然と入ってくるんですね。自分自身も強い気持ちでやることが大事ですし、応援してくれてる方も一緒の気持ちでいてくれるっていうのが一番かなと思います

代表選考レース最後の大会で“逆転”を目指す

パリオリンピックの女子シングルスの代表枠は2つ。

現在、伊藤選手の選考ポイントは3位で、2位の平野美宇選手とは34.5ポイントの差があります。そして全日本選手権は、代表選考レースの最終戦になります。

優勝すれば選考ポイントが120ポイント、準優勝では100ポイントが入るため、この大会での成績次第では、伊藤選手も“逆転”で代表に内定する可能性があります。

一方、平野美宇選手は東京オリンピックの時にもシングルスの代表枠を争った長年のライバル。前回大会で惜しくも枠を逃した平野選手は、パリオリンピックの出場に強い思いがあります。

決戦となる全日本選手権が2週間後に迫るなか、伊藤選手は地元の静岡でトレーニングに励んでいました。

本気で向き合えているからこそ、負けた時は悔しいし、勝ったときはうれしいし、楽しいし。(大会では)1回戦から本当に強い選手ばかりなので、“燃えるな”っていう気持ちもありますし、優勝したら五輪代表は自然とついてくるものだと思うので、優勝したいっていう気持ちが、一番ですね