話そう!“学校”のみらい 不登校30万人から考える

初回放送日: 2024年1月27日

「“学校”のみらい」をとことん考える大特集!2部は、1部で見えてきた日本の教育の課題について徹底的に議論する。スタジオに集うのは、文科省の初等中等教育局長、学校改革に取り組む現場の教師、学校外の学びの場で子どもを支える専門家、そして不登校を経験した若者代表。▼子どもが好きなことを学ぶ授業って、学力はつくの?▼不登校の小中学生のうち11万人が学校でも相談機関でも支援を受けられていない現状をどうする?

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■まとめ記事

(2024年1月27日の放送内容を基にしています)

今、日本には“不登校”の小中学生がおよそ30万人います。そのうち11万人以上の子どもたちが、どこにも相談せず学習支援も受けていないことが分かりました。子どもは誰でも、教育を受ける権利があるはずです。学校に行かない子どもたちの学びはどう保障すればいいのでしょうか。「“学校”のみらい 第2部」は、そうした疑問についてとことん議論していきます。

学校について、子どもたちはどう思っているのか。

まずは、子どもや若者の幸せを考える「NHK 君の声が聴きたい」プロジェクトのサイトに寄せられた、子どもたちの声をご紹介します。

「自分の目で世界を見たい。一方的に教えられて、一方的にテストされて、本当に自分が学びたいことを学べないこの環境が嫌いだ」(福岡県15歳)

「学校での競い合いをなくしてほしい。テストの点数、授業の発言回数、身体測定の記録など、友達との差が開き学校に行けなくなった。力の差があっても関係なく過ごしたい」(宮城県 15歳)

ひかりんちょさん「どの意見にもすごく共感する。私自身はもともと人づきあいが苦手なほうではあるけれども、グループができやすい中でなじめなくなって、中学生のときから学校に行けなくなった。ファッションが好きなので、そういう分野の授業があったら学びたかった。選択できる授業があると、人となじめなくても絶対に行っていたと思う」

蓑田 道さん「僕は小学校2年生まで公立の学校に通っていた。子どもながらに、みんなと同じことをやって、黒板に書かれていることをそのままノートに書き写す授業に、つまらないなという思いがあった」

公立の中学で大胆な学校改革を行なった経験がある工藤さんは、「今こそ学校が変わるべきだ」と訴えます。

工藤勇一さん「多様なものを認めていくための学校であるべきであって、学校のシステムそのものが合わなくなってきていると思う」

矢野和彦さん「誰もが安心して学べる学校をどうつくっていくか。最初から結論になってしまうが、それが本質的な問題だと考えている」

議論のテーマは2つです。

<「子ども主体の学び」って?>

山形にある天童中部小学校は、全校をあげて「子ども主体の学び」に取り組んでいます。以前から文部科学省も「子ども主体の学び」を推進してきましたが、ここでは6年前から、校長先生が先頭に立って教育改革を実行してきました。先生がクラス全員を一斉に教える授業を全体の8割に減らし、残り2割を、「子ども自身で学ぶ時間」に変えました。子どもたちが先生になって教えたり、学びたいテーマを自分たちで自由に決めたりできます。

この日の4年生の理科の授業では、何を使って学ぶかは子どもに任せていました。ひとりで骨の模型と向き合う子もいれば、友達と話し合う子もいます。授業の間、それぞれの子どもの進め方を見守る先生は、子どもたちが自ら学ぼうとする姿に手応えを感じています。

ひかりんちょさん「授業に前向きな生徒と、それを教える先生。相性はすごくいいと思う。こういう選択ができる授業があると、お互いにやりやすいのかな」

首藤奈知子アナウンサー「『子ども主体の学び』についてどうご覧に?」

荒井英治郎さん「少し世界に目を向けると、OECDが2030年に向けた学びのあり方のキーワードとして『エージェンシー(※)』という言葉がある」

※エージェンシー:先の見えない時代に必要とされる力。自ら考え行動し、社会変革を実現していくこの力は、主体的な学びで育まれるとされ、世界中で「教育の指針」にする学校が増えている。

荒井さん「簡単に言うと、ひとりひとりが当事者意識を持って学びに向き合い、自分のことや地域のこと、他者のこと、世界のことに目を向けて、新しい社会を一緒につくっていけるのか。学校の役割や教師の役割がどうなのか、問いかけられているのではないか」

蓑田 さん「日本の学校もそういう取り組みが広まればいい。僕は民間のスクールで学んだが、特に中学校は授業もない、カリキュラムもない、時間割りもない。生徒が大人と話し合って学校を運営していく、ちょっと変わった学び場だった。すごく大切だと思ったのは、大人と子どもが対等な立場で話していること。先生が『こうしなさい』と言うのではなく、提案して、それに対して子どもたちが『こうしたほうがいいんじゃない?』と。そこに議論が生まれるのがすばらしい」

※令和の日本型学校教育:主体的な学びをより進めようと文部科学省が掲げる。ひとりひとりに応じた個別の指導と子どもの興味関心に基づく学びに加え、多様な人と協働しさらに学びを深めることを目指す。

矢野さん「『令和の日本型学校教育(※)』。これは令和3年に文部科学省が打ち出したもので、個人の関心や主体性を尊重するという考え方。“1人1台パソコン”というのが令和2年に実現し、自分のペースで解いていくことができるようになった。『個別最適の学び』、自分のペースで勉強していくのと、それをいろんな人にぶつけてみる『協働的な学び』を、文部科学省としてはずっとすすめていきたい。そういう環境が今整ったのではないか」

 生駒知里さん「実際に私が会う保護者や子どもたちから聞く話では、広がっているという感覚はない・・・」

矢野さん「これは令和3年に発表したばかりで、理解されているところとされていないところ、全国1700市町村あるので、差がついてきている。強化年間として今年度(2023年度)から来年にかけて、ご理解いただけるように頑張りたい」

工藤さん「うちの学校の英語の授業などは、まさに文部科学省がすすめているものを積極的にすすめていこうとしている。子どもに合った学びを、子ども自身が自分で選ぶ。例えば、“教えてもらうクラス”と“教えてもらわないクラス”がある。あるクラスは、YouTubeを見たり・・・有名な教育ユーチューバーの授業を見ながら勉強している子がいる。それから、アプリを使って勉強している子もいる」

蓑田 さん「やらされてやった勉強よりも、自分でやりたいと思ってやる勉強は、どんどんやってしまう。子どもは(笑)」

生駒さん「うちの長男も小学校1年生で学校に行かなくなった。そのときに、庭に転がっている灰色のなんの変哲もない石を金づちで割ってみたら、しましまの模様がでてきて・・・『これはなんでだろう?』というところから、地層にハマったり、地学に興味を持ったり、豊かな学びが得られた。でも、なかなか学校にはなじまない。それがもしかしたらその子のペースで個別最適に過ごせたのかもしれないが、そういうふうには今なっていないのかなと感じている」

 

「子ども主体の学び」に、現場の教師たちは子どもの学習意欲が高まることに期待を感じる一方で、戸惑いもあると言います。

天童中部小学校教諭 小林さん「例えば全国学力テストでものすごく上がっていれば、心配はいらないと思う。その結果がなかなか出ない部分がある。そうしたときに『教えていないからでしょう』となってしまうと、逆戻りしてしまう」

矢野さん「オーストラリアの研究で、意欲的に取り組んだ子どもたちはポジティブな感情が高まる。ゆえに学力や満足度を上げるという研究結果が出ている。すぐには(結果が)出ないかもしれないが、自信を持ってやっていただきたい」

蓑田 さん「“大学受験”となったときに学力が重視される問題があって、5教科型の学力や点数を大学側からも求められる。自分の好きなことを突き進んでやっている子どもたちのそういった面も評価してほしい」

矢野さん「学校で何をやってきたか、あるいは論文や面接というものだけで判断するのは、学校関係者はかなり覚悟が必要。これは言うほど簡単ではない。でも、私は進めるべきだと思っている」

工藤さん「まず学力テストというものが本当に必要な時代なのか。高度経済成長の時代には、簡単に言えば、『大学を出てまたは高等学校を出て、就職しました』と。その時代は『学校に入っておけばいいよ』ということは当たり前のようだったと思う。でも今は、会社が10年後にあるか分からない時代。自分で考えて行動し、決定するということを繰り返した子どもが、楽しく生きていける。学校で教えなくてはならないのは、『世の中って、すてきそうだね』ということ。興味あるものが少しでも学べて、社会とつながって、こうやったら私は大人になれるのかなという希望が持てる場所でなければいけない」

矢野さん「学力テストが必要ないとは、なかなか言えないと思う。自主的に問題を設定して解決していく能力も必要だが、その能力を磨くためにも、基礎的な知識・技能も軽視はできないところ」

蓑田 さん「若い世代から言いたいことは、『子どもの力を信じてほしい』。テストの点数が高くなってほしいと思う気持ちも分かるが、子どもの力を信じて見守ってほしい。そして応援してほしい」

荒井さん「日本の学校の仕組みは諸外国と比べても、“識字率の高さ”、“学力水準”という点で、世界に誇るべき仕組みであることは間違いない。ただ全国一律に平等に条件を整備していこうというのが、子どもの学びの自由度や学校の自由度を奪っているのではないかという見立てもある。改めて学力とは何か、学力は測れるものなのか、いろんな論点で、皆さんで議論していくことが必要」

<「子ども主体の学び」 どう進める?>

石川県加賀市では、今年度から、すべての小中学校で授業改革に取り組んでいます。

山形県の天童中部小学校のように「先生が子どもに、学び方を任せる授業」です。さらに加賀市はそうした授業をつくる「先生側のサポート」にも力を入れています。

首藤アナウンサー「ここからは加賀市教育委員会・教育長の島谷千春さんにも加わっていただく」

島谷千春さん「この授業は、先生が主役でやっていたところを子どもに渡す、180度発想として変えないといけない。『理想はこうだからやりましょう』と言っても、なかなか先生は怖くてできない。教育委員会で、そういう授業をつくるためだけに支援する“伴走支援チーム”をつくって、各学校に派遣している。一緒に子どもたちの様子を見ながら『こういうことを変えていこう』と試行錯誤し、やり続けるスタッフを置いている」

首藤アナウンサー「そのスタッフはどういう人が?」

島谷さん「元教員で、子どもを主役にした授業をやってきた先生。加賀の先生だけでなく、全国から公募。教育委員会と学校は、上下関係のイメージがあると思うが、いかにフラットな関係性で一緒にやっていけるのかがカギ。やったことのない授業スタイルなので、『いくらでも失敗してください』と言っている。また、国で決められた“カリキュラム”はこなしていかないといけないので、学ぶことは変わっていない。“学び方”を変える」

ひかりんちょさん「勉強に対するマイナスな気持ち・考え方を変えようと自分では思っていたが、先生も生徒もみんなで新しいやり方をして、しかも失敗しても大丈夫だからやってみようと。そういう考えはなかったので、いいなと思った」

工藤さん「生まれたときは全員主体的な生き物。主体的でない子どもは1人もいない。いつの間にか『社会性が大事』と言われて、教育をされればされるほど主体性を失っていく。小学校時点でそういう授業を初めからしていたら、子どもたちは学び方を学んでいく。学び方を覚えた子どもたちは、いろんなものを吸収する力を自分で持っている。でも、今までのような日本の学校教育は『分からない子どもが出たら、もっと手だてを与えましょう』となって、子どもは受け身になる。受け身になった子どもたちの特徴は、うまくいかないと人のせいにするんですよね。勉強ができないと、『先生の伝え方が悪いからだ』『環境が悪いからだ』と。僕たちが育てなければいけないのは、ありのままの環境を受け入れて、その中で何ができるか試行錯誤して、学び方を覚えていく子どもたち。それをできるだけ早い段階からやり続けるのはすごく大事なので、手伝いたいぐらい(笑)」

島谷さん「授業の光景がガラッと変わるので、保護者や地域も変わることに対する不安は絶対にある。結果責任も含めて、教育委員会で説明責任を負っている状況にもなっているし、トライして初めて見える世界。加賀市全体で今やっている感じ」

矢野さん「加賀市のその取り組みはわれわれも応援したいし、邪魔をしないようにしないといけない。それと、加賀市のようにしっかりした教育委員会だけではなくて、小規模で2人しか職員がいないようなところもある。そういうところについてはわれわれの出番かなと。何より先生が忙しい。それをしっかり国として支えていく。それに尽きる」

<学校に行かない子どもの学びは?>

首藤アナウンサー「そもそもどうして不登校がこんなに増えているのか」

矢野さん「一概に言えないが、新型コロナウイルスというものがあって、感染のリスクもあるし、『給食は前を向いて、しゃべってはいけません』とか、『距離を保ちしましょう』とか、『できるだけしゃべらないようにしましょう』とか、人と人との接触が極端に減って、学校に行かなくてもいいのではないかという風潮がでてきた」

荒井さん「教室を見た場合、いろんな子がいる。例えば、発達障害と言われる学習面や行動面での特性を持つお子さん、特定の分野についてはものすごい才能を持っていながら、学ぶということが苦しくなってしまうお子さん、さらには生活をしていくことも困難な状況にある貧困家庭のお子さん、いわゆる“ヤングケアラー”と言われるお子さん。いろんな子どもが1つの教室で同じ進度で同じように学ぶことに限界が来ているという見たてが多くのところで言われている。子どもを軸に、もう一度仕組みのあり方を考えられるか。こういったことが私たちに問われているのではないかと思う」

不登校の子どもたちのために、国はどんな対策をとっているのか。

去年(2023年)、文部科学省が発表した通称「COCOLOプラン」では、「子どもの学びの場を確保し、学びにつながらない子どもをゼロにする」という目標を掲げています。

 その主な内容は、不登校の子どものためにさまざまな配慮がなされた「学びの多様化学校」を増やしたり、不登校の子どもが無料で利用できる「教育支援センター」を充実させたりするというものです。

熊本市では、全ての子どもを学びにつなげる独自の取り組みをしています。そのひとつが、不登校の子どもたち向けの「オンライン授業」。平日は毎日配信しています。ところが、熊本市では学校に行っていない子どものうち2割が、どこにも相談せず、学習の指導も受けていないことが分かっています。全国で見ると、そうした子どもは不登校30万人のうち11万4000人にのぼります。「学ぶ場所」や「居場所」を行政が用意するだけでは問題は解決しないと、熊本市・教育長の遠藤さんはいいます。

 

遠藤洋路さん「学校に来ている子どもに対しては緻密な学習指導要領で『将来、こんな力は必要ですよ』とやっているわけですけれども、『来ない子どもはどうなの?』といったら、全然何にもサポートもないし、身につけたほうがいいよというものすらない。それぞれの自治体もどうやってすすめていいのか、財源をどうするのか、人はどうするのかなかなか分からないので、いま模索している状態ではないかなと思います」

首藤アナウンサー「国はどういうふうに考えている?」

矢野さん「『多様化学校』、『教育支援センター』等をしっかりと整備していこうということ。『学びの多様化学校』は、カリキュラムを通常の学校より3割ぐらい減らせるというもので、今全国に24校ある。国としては数年以内に、全国の都道府県・市町村・政令市に1校ずつ、ゆくゆくは全国に300校ぐらい増やしたいと考えている」

首藤アナウンサー「『教育支援センター』は、教育委員会が提供する施設で、子どものために勉強を見たり、居場所として利用できたりするもの。上の画像は、生駒さんが代表をつとめるNPOが、不登校の子を持つ親を対象に行った『教育支援センター』についてのアンケート調査の結果。『利用して助けになった、または、なっている」17.0%。『利用していない』42.8%。『助けにならなかった』15.6%となっている。助けになった理由には『私服で自由な時間に行けて安心している』『無料なのでとても助かっている』といった声。一方で、助けにならなかった理由には『自学・自習ができないと入れませんと言われ、申し込みもできない』『支援者に元教員が多く、学校みたいな雰囲気があるので行きづらい』といった声がある」

生駒さん「『教育支援センター』など公的な場所は退職された教員の方がスタッフをされていることが多くて、『第2の学校のような雰囲気で、学校に行けなくて来ているのに、通いづらい』、『学校復帰を前提にしているところがまだまだあるので、そういったところでより行きづらくなっている』という声が寄せられている」

矢野さん「『教育支援センター』について、退職教員が多いというのは事実。そもそも人数が非常に少ないとか、不登校に対するノウハウがそんなにないのではないか、そういったところはあると我々も聞いている。人的な面と設備の面でも、たとえばICT機器が全然ないというような実態もどうもあるようなので、しっかりと整備していく必要があるのではないかと思う」

学校に行かない子どもたちは、これまで、民間の学びの場でも受け入れてきました。

こちらは、第1部でも紹介した千葉市のフリースクール「まなびスペース COCOCARA」。小中学生、15人が在籍しています。講師の古山明男さんは、30年前から、不登校の子どもたちに教えています。ここには、子どもたちが安心してそれぞれのペースで学べる環境があります。しかし、通うには毎月2万2000円の利用料を払う必要があります。こちらのフリースクールは市から助成を受けていますが、厳しい運営状況が続いています。

ひかりんちょさん「私の場合、不登校になった時、こういうフリースクールがあるというのも全然知らなかった。学校に行ってほしいお母さんとのバトルがあっただけだった。そんな中で私はSNSに自分の居場所を見つけられた。ただSNS上で友達ができても、そこで一緒に勉強しようという感じにはなれなかったので、身近にこういうフリースクールがあればいいのかなと。でも利用料がかかる。家族にも迷惑をかけてしまうし、すごく難しいんだなと思った」

 首藤アナウンサー「ここで、古山明男さんにも加わっていただく。30年にわたり不登校の支援をしながら、さまざまな自治体の不登校支援にも関わっていらっしゃる」

古山明男さん「不登校の人たちは、ものすごく苦しんでいる人たち。勉強にたどりつくまで、大変な道のり。不登校の前半は、学習の問題ではなくて安心・安全の問題。人と会うのもつらい、外に出るのもつらい段階。そこが癒やされてきて、外に出られるようになった段階では、(公的な学びの場は)たいへん意味があると思うが、最初の段階には全然手が届いていないのではないかと思う」

生駒さん「わが家もそうだったが、『学校に合わない』と感じた子どもたちを、おうちやフリースクールなど学校以外の場で育てようとすると、私自身も地域のコミュニティーから外れてしまって、すごく孤立感がある期間を、何年間も過ごした」

今まで、学校に行かない子どもたちを受け止めてきた民間の場所には「フリースクール」のほか、「学習塾」、「ホームスクール」などもあります。

今、苦しんでいる子どもたちが自分に合った学びの場を選べるように、こうした民間の力をもっと活用すべきだと、古山さんは訴えます。

古山さん「親御さんは、何とかうちの子が行けるところはないかと。そして現実問題として、子どもが行きたがる場所しか選択しない。子どもにとって怖いか怖くないか、楽しいかどうか。それだけでみているので、子どもが行けるところに行かせるしかない。だから、こういう民間活力を利用なさったらいかがかと思う」

蓑田 さん「僕も民間のスクールに小学校3年生から中学校3年生まで通っていたが、偏見みたいなものをすごく感じた。普通の公立のいわゆる“学校”に通うことが前提で、民間のスクールに通う人たちは“非正規”・・・ちょっと変わっているというふうに扱われて、上下がついている感じがした。もっと対等に扱ってほしい」

矢野さん「国としてどう考えているかというと、『教育支援センター』があり、『学びの多様化学校』、ここでまず対応していく。そこでもどうしても対応できない場合は、NPO、フリースクールとの連携を推奨することになる。民間の支援団体がいろいろとノウハウを、人的にももっているところがあるので、例えばその業務を委託する、あるいは人事交流をやる。そういう意味で教育支援センターの役割はどんどんグレードアップしていかないといけないという気持ちはある」

生駒さんが行った調査によると、不登校の子どもやその親が行政に最も望むことは、フリースクールなど学校以外の場が無料になったり、利用料が安くなったりすることでした。

古山さん「千葉市のフリースクール『COCOCARA』の場合、2万2000円と言ったけれども、これはかなり安い(フリースクールの会費・平均 約3万3000円/月(文部科学省2015年))。だから何らかの方法をつくってあげないと大変なのではないか。親側にお金、“クーポン券”のようなものを出して、子どもが行きたいところにどこでも行けるということをやったらいいのではないかと思う」

生駒さん「民間と連携するとおっしゃってくださっていると思うので、民間に通う家庭への公的支援等も考えていただければと・・・」

矢野さん「これは調査研究を文部科学省がやっているが、なかなか広がっていかないという実態がある」

生駒さん「ぜひ調査研究を進めていただいて、保護者のニーズが本当に高いところなので、本気で考えていただければと思う」

矢野さん「お金の面の支援は、直接というわけではなくて、教育支援センターの業務の一部を(民間に)委託するとか。工夫の余地はあると思う」

ひかりんちょさん「子どもだけではなくて、親も分からないことだらけだし、多分先生も分からないことだらけだと思う。連携がとれたらいちばんいい」

<長野 フリースクールと連携する取り組み>

長野県は全国に先駆け、民間の学びの場と学校を連携させるための試みをはじめました。その試みとは、「県がフリースクールを認証し、公的に支援するための制度づくり」です。

長野県知事 阿部守一さん「学校だけにとらわれることなく、フリースクールはじめ多くの学びの場をもっと生かしていくことが重要だと考えている」

長野県では、県が一定の要件をみたしたフリースクールに補助金を出すなど、安定した運営をサポート。さらに、学校に行かない子どもが自分に合ったフリースクールを見つけられるよう、情報サイトを立ち上げます。フリースクールと行政、学校が連携し、子どもにとって選択肢が増えることを目指しています。

長野県はフリースクールの関係者や保護者と、1年間、丁寧に議論を重ねてきました。そして、2024年4月からの運用を目指しています。

古山さん「いいところはユーザー側、親の側が入っているところ。設計に。そして問題点があったら、修正していく。いわゆる不登校対策とはちょっと違った方向に向いている。本格的に教育をつくる自由、そして育てていく方向性を持っていると思う」

工藤さん「今の日本の学校は、学校に適応できない子ども、学校に通えなくなった子どもに対してフォローしようという動きがある。そうではなくて、どんな子どもも、例えばフリースクールでも、学校の中の“居場所”でも、自分が学びたいと思ったらそこにいて、そうでなかったら別の部屋にいてもいい。必ず最初に自己選択させる。そういったことが必要なのかな」

首藤アナウンサー「荒井さんは、長野県のこの制度を取りまとめていらっしゃる」

荒井さん「日本では、『教育=学校教育』という公式が、確固たるものとしてこれまであったと思う。諸外国に目を向けると、学校設置の自由がある。極端な例だが、親御さんが集まれば学校をつくれてしまったり、公的な補助が出たり、さまざまなバリエーションがある。現状、日本ではいろんな法律やルールを変えていくということが出てくるわけだが、そういった中で多様な学びを推進しているフリースクールの皆さんとの関係をどう新たに紡いでいくのか、本気で考える時代に来ているのではないか」

首藤アナウンサー「今日は“学校”について話してきた。どうでした?」

ひかりんちょさん「問題が全部解決されたわけではないが、いい意味で学校が現代っぽくすごく変わっていると気づけたのが救い。これから学校に通う人も、今通っている人にとっても、救いなのかなと思った。ふだんから(SNSなどで)相談を受けたりするので、『こういうのもあるよ』と発信できたらいいな」

蓑田 さん「教育で一番大切なことは『生きていく力をつけることだ』と思った。自分も民間の学び場で学ぶ中で、どのように生きていきたいんだ、何をしたいんだとすごく考えて、いろいろなことについて探求する機会が与えられていた。いわゆる“学校”も、自分の興味を持ったことをとことん追求して探求できる空間になっていったらいいなと思う」

矢野さん「皆さんの思いを実行できるように、予算も必要だし、制度の改正も必要。できるかぎりのことはしたい。公教育の存在意義が問われている時代なので、全力を挙げてやりたい」

<教えて!“学校”のみらい>

工藤さん「『不登校が問題にならない教育の世界をつくる』。子ども中心の学びによって救われるような世界になったらいい」

荒井さん「私の理想は『“インクルーシブ”で“フレキシブル”な学校』。学習環境をもっと魅力化していけるように、民間と行政と学校と教育関係者で一緒に教育をつくっていけたらと思う」

生駒さん「『子どもも保護者も先生も、心や命にエネルギーが与えられたなと思える学校』。そんな学校になったらいい」

ひかりんちょさん「『個性爆発学校』。いろんな面で、みんなの好きなように、ありのままにという部分で、“個性爆発”できる学校があったらすごくすてきだし、私自身も年齢的に通えるか分からないが、通えるんだったら通いたいなと思う。私の理想の学校」

NHKでは引き続き「“学校”のみらい」について考えていきます。「君の声が聴きたい」プロジェクトのホームページに、このあともぜひ声をお寄せください。