今回のゲストは、俳優・八嶋智人さん。
クセがある役柄を演じることで
存在感を示しています。
一方、司会者としても幅広く活躍。
Eテレで放送中の
健康情報番組や科学エンターテインメント番組を
楽しく盛り上げています。
舞台俳優としてのキャリアはすでに30年以上。
現在は世界的演出家が日本で手がける
チェーホフ「桜の園」の上演に向けて
稽古に励んでいます。
今回はそんな八嶋さんの
人生の分岐点に迫ります!
聞き手は伊原弘将アナウンサーです。
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■八嶋さんが初めて
自らの劇団を立ち上げたのは1990年。
小劇場ブームの時代、
他の劇団に負けないオリジナリティーを
確立しようと必死に取り組んでいました。
そのころは肩に力が入り、
八嶋さんは
ことあるごとに周囲と衝突していたといいます。
八嶋:「劇団ももう旗揚げしていて、
バリバリ自分ではやっているつもりみたいな。
時代もそうだったのかもしれないですけど、
ナメられちゃいけないとか。」
伊原:「ああ。」
八:「そういうことで、
すぐ人のマウントを取るみたいな、
ちょっと攻撃型な人間だったんです。」
伊:「ちょっとギラギラしていたんですね?」
八:「あっ、僕ギラギラしていたんです。
ええ(笑)」
■八嶋さんは
さらに大きなステップをつかもうと、
27歳のとき、
あるオーディションを受けることにしました。
それは数多くの名作を手がけてきた
演出家・野田秀樹さんの舞台。
知名度をあげる絶好のチャンスでした。
そして、この舞台を通じて
八嶋さんの人生の分岐点が訪れるのです。
八:「いや、僕ね、
結構平々凡々と生きてきたんですね。」
伊:「あ、そうなんですね。」
八:「そういう僕の中で
大きい出来事は、やはり家族、
結婚をしたってことですね。」
■野田秀樹さんの舞台で、
のちに妻となる女性と出会いました。
4年後、結婚した八嶋さんは妻に影響を受け、
少しずつ考え方が変わっていったといいます。
八:「僕より美意識が高くて、
価値観もはっきりしていたんです。
同じようなことを考えたときに、
僕より明確にたくさんの事象の中から
考えを選んでいて、
揺るぎない自信があって。
そして、それを僕に提示するロジックも
ちゃんとしていて。」
伊:「ええ、ええ。」
八:「だから、すごく強く僕に
それを『同意しなさい』的な。
『あ…ああ。はい』って
だんだん押されるようになってきて。
そうすると、自分と違う意見とか
価値観が出てきたものを受け入れるという
気持ちよさに気付いてきたんですね。」
伊:「ギラギラされていたとき、
ビシッと言われて抵抗感はなかったですか?」
八:「ケンカみたいになって
『あのさぁ!』と言ったとき、
『大きい声が苦手だから出さないでほしい』
と言われたんですよ。」
伊:「奥様に?」
八:「はい。だから
『大きい声を出すな!』
と言われたら、出さない。
でも不思議なもので
大きい声を出さないと
怒りがどんどん
出しづらくなってくるんですよね。」
伊:「そうですよね(笑)」
八:「そうなんです。」
伊:「そうですよね。」
八:「まずそれが1つ目の飼いならしですね。」
伊:「飼いならし(笑)」
■こうした八嶋さんの変化は
仕事にもいい影響を与えたといいます。
共演者との接し方が
それまでとは変わったのです。
八:「相手のお芝居が
よくわからないなと思ったとき、
結婚前だったら
『いや、こうじゃない?こうしない?』
と言っていた。
でも、相手も何かがあって
そうしているのだから、
1回『イエス』と言ってみる。
意見を戦わせるよりも、
ちゃんと受け入れて一緒に考えたほうが、
やっていることは同じかもしれないでしょ?
1回すべてを受け入れる
(一緒に考える)時間の方が
有意義だなって思う。」
■相手の上に立とうと
ギラギラしていたときと違い、
八嶋さんは全体を見渡す
心の余裕を持てるようになりました。
すると、仕事の依頼が
ひっきりなしに届くようになります。
舞台のみならず、
テレビドラマから司会まで
幅広く活躍を続けていくことになりました。
伊:「結婚を通して、
ギラギラしていた自分から
変わったなと思われますか?」
八:「そうですね。
ギラギラした男を通り越して
近所の子どもたちからは
『八嶋のおばちゃま』と呼ばれるぐらい。」
伊:「おばちゃまなんですか?(笑)」
八:「(笑)おばちゃまって今、ええ。
呼ばれていますね。なぜか。」
■今年、結婚から21年。
八嶋さんにとって
家族が原動力になっているといいます。
八:「彼女によくアドバイスを求めますし、
向こうも求めてくれますし。
でも、僕がダメ出しを彼女にすることは
あまり許されてはいない。」
伊:「許されていない?」
八:「家の中には家の中の
うっすらヒエラルキーがあるように、
僕の妻はもう教祖のように
頂点にいましてですね。」
伊:「リードする側なんですね。」
八:「そして、次に息子がいまして。
今16歳、高校生ですけど。
で、その下に僕がいるっていう。
息子も小さいころから
リビングで僕がお叱りを受けていると
『いいの!パパはこれでいいの!』とか。」
伊:「あ、お子さんが。」
八:「ちゃんと。」
伊:「正してくれる。」
八:「守ってくれるっていうのはありますし。」
伊:「(笑)」
八:「でも、ヒエラルキーぐらい
下でも別にいいじゃない。
家庭内のそういうものも
楽しめる男でありたいと思っています。」