The Crossroad 大竹しのぶさん

NHK
2023年6月23日 午後5:03 公開

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で
怪演が話題になった大竹しのぶさん。
今、21年ぶりとなる
ひとり芝居の稽古の真っ最中。
ヴィクトリアという悲劇のヒロインの
半生を描いた舞台に取り組んでいます。

佐藤:「ひとり芝居は
やはり全然違いますか?」

大竹:「まず稽古場がすごく地味です(笑)
自分の声しか聞こえないので
『お客さん飽きないかな?』と
たまに心配になりますけれど
やっている私がおもしろいです。」

日本を代表する俳優、
大竹しのぶさんの人生の分岐点とは?
聞き手は佐藤俊吉アナウンサーです。

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大:「結婚して、そして出産したことです。」

佐:「明石家さんまさん?」

大:「ではなく、その前に一人、
17歳年上のテレビプロデューサーと
結婚したのが最初の結婚で。」

■大竹さんは25歳のとき、
出演したテレビドラマの演出を手掛けた
服部晴治さんと結婚。

大:「ディレクターとして
すごく優秀な方だったので。
優しくてソフトな感じで。
彼が薦める本や映画、哲学とか、
人間性というものを尊敬していたので。
その道を一緒に歩いていけば
私は幸せになれるというのは
すごくありましたね。」

佐:「当時はどうだったのですか?
おつきあいして結婚するというときに、
周りからの反応というのは?」

大:「彼は2回の離婚歴があって。
恋人もいたりして。
すごいスキャンダルになって
芸能レポーターの人に追いかけられて。」

■当時、清純派として人気だった大竹さん。
周りの期待を裏切る恋愛に
悩み続ける毎日でした。

大:「自分にとって
いちばん大切なことは何だろう?って。
それは一緒になることだと思って。
『結婚しましょう』と言われて
『はい』と答えたそのときの
素直な気持ちのままに
生きていきたいと思ったので。」

■周囲の大反対を押し切って結婚しましたが、
わずか1年足らずで
夫・晴治さんの胃にがんが見つかりました。
「余命1年」との宣告でした。

大:「私ひとりが
それを受け止めなくてはいけなくて
怖さもすごくあるのですけれども、
どんどん強くなっていった日々でしたね。
『世界中のお医者さんがダメと言っても
私の力で治してやる!』という(笑)」

■夫にはがんを告知せず、
献身的に治療に取り組んだ大竹さん。
そのお腹には新しい命が宿っていました。

大:「『そんなに長く生きられない状態の父親、
父親がいない子どもを産むの?』
と言われて
『え?そうなのかな』って。
あまり深く考えずに、でも産みたいと思って。
その一つ一つを決断していくのが
ひとりでやらなくてはいけなかったので。
ひとりで人生を決断していくということを
そこで学んだような気がします。」

■その翌年。
大竹さんは27歳のとき、
長男・二千翔(にちか)さんを産みました。

大:「私もわりと静かな、こんなしゃべり方で。
旦那さんも静かで、息子も静かで(笑)
友達が遊びに来ても
『何?この家!』
『お箸が落ちても、響いちゃいそうだね』
と言うぐらい静かなおうちでした(笑)」

佐:「服部さんは子育ては
どうだったのですか?」

大:「ちゃんと手伝ってくれて。
彼は私が仕事を休むことに対して
とても反対だったので。
ロケに行ったり、何日間か留守のときは
『その日の二千翔』とか『二千翔の毎日』とか、
ビデオをずっと撮ってくれていました。
あと、私のビデオも撮っておいて。
『二千翔くん、おはよう!』とか
『二千翔くん、歯磨いた?』と
二千翔にその時間になると見せていました。」

佐:「なるほど。」

■4年間の闘病の末、
夫・晴治さんは亡くなりました。
結婚からそれまでの日々が
前向きに人生を切り開くことを
教えてくれたといいます。

大:「困難が押し寄せたときとか
悲しいことがあったりするときに、
自分の体の中から
気合いが入るスイッチを入れて、
そこで乗り越える力を自分の中から出す。
『よし!ここを乗り越えろ!』って。
25歳で結婚を決意したときと同じように
後悔しないで、生きてきたつもりだし、
これからも後悔しない自分の選択を
していきたいなと思っていますね。」