かつては黒魔術に使われていたという不吉の象徴「コウモリ」。
しかし、調べてみると最新鋭のテクノロジーにも負けない驚きの能力が⁉
もくじ ●なぜ逆さま?驚きの生態 ●”子ども思い”の集団行動!?コウモリの子育て ●驚異の飛行技術を生む翼の秘密 ●暗闇で獲物を探るコウモリの特殊能力とは? ●コウモリの超音波が人類を救う!?
なぜ逆さま?驚きの生態
アンチの言い分「逆さまの体勢が気持ち悪い!」 コウモリの言い分「立てないから仕方ない!」
立てないから仕方がないので逆さまの体勢をとっている、というのですが、実はコウモリにとっては都合がいいそうです。解説してくれるのは、東京大学でコウモリの生態を研究している福井大さん。
逆さまでいることのメリットについて福井さんは「ぶら下がった状態からだと簡単に飛び立てる。エネルギーの節約につながっている」と解説。鳥は飛び立つときに地面を強く蹴る必要がありますが、ぶら下がった状態のコウモリは、ただ落下すれば勢いがつき、そのままはばたくだけで飛ぶことができ、足の力は必要ありません。
(ちなみにコウモリは鳥ではなく、哺乳類の一種です。世界で1300種類確認されていて、世界の哺乳類のうち、およそ5分の1を占めています。)
さらに福井さんは、コウモリのはく製を見ながら説明してくれます。
「足の部分は骨と皮だけ。飛べるようになるために体の重さを削ぎ落としている」
徹底した軽量化は骨の内部にも。骨の断面をみると、中はスカスカです。
こうした軽量化のおかげで、例えば、都会を飛び回るアブラコウモリの体重は10円玉とほぼ同じの5.5グラム。ほぼ同じ体長のハツカネズミがおよそ20グラムなので、かなり軽いことがわかります。
コウモリは、体を軽くするための肉体改造を行ったうえで、省エネで飛ぶために逆さまになっているのです。
また、コウモリには逆さまの体勢を支えるための仕組みがあります。
コウモリの逆さの体勢はこちらの通り。
足先の5本の指にはフックのような爪がついていて、この爪を引っかけるようにしてぶら下がっています。
この状態を維持するのは大変そうですが、実はコウモリの足には長い時間ぶら下がっていても、握力が必要ない仕組みがあります。
こちらは、コウモリの足先の仕組みを示した模型。先端が爪です。
骨と筋肉をつなぐ腱(けん)と、腱を包む腱鞘(けんしょう)があるが、どちらもギザギザになっています。
爪をひっかけると…
腱と腱鞘のギザギザした部分でしっかりロックがかかります。
ロックがかかることで握力が不要になります。この仕組みのおかげで、コウモリはエネルギーをほとんど使わずにぶら下がることができるのです。
(爪を離すと、腱と腱鞘が離れてそのまま飛び立つことができます。)
ちなみに、コウモリは、逆さの状態でも頭に血が上ることはありません。
エックス線写真を撮ってみると、体のサイズに対して心臓が大きいことがわかります。おかげで逆さまになっても全身に血を送ることができるそうです。
“子ども思い”の集団行動⁉ コウモリの子育て
アンチの言い分「集団行動が気持ち悪い!」 コウモリの言い分「集団で大切なものを守っている!」
コウモリが集団で行動するのは、子どもを守るためです。どのように守っているのかをお絵かきムービークリエイター・あいのゆにさんがわかりやすく教えてくれます。
コウモリの赤ちゃんはほとんど毛がなく、体温調整ができません。そこでみんなで身体を寄せ合い、子どもたちの体温を上げているのです。コウモリは年に1匹しか子どもを産まないため、みんなで大事に子どもを育てるそうです。
優しく育てるだけではありません。
生まれて2週間が経つと、親は子どもに、飛ぶためのトレーニングを行います。
その様子がこちら
子どもは親にぶら下がって、何度も羽ばたきを繰り返し、翼の使い方をマンツーマンで学ぶのです。
驚異の飛行技術を生む翼の秘密
アンチの言い分「飛び方が怖い!」 コウモリの言い分「あの飛び方、実は…すごいんだぞ!」
そもそも、コウモリの翼は手が進化したもの。
それぞれの指の間と足と尻尾の間には飛膜と呼ばれる薄い皮が張られていて、翼になります。
飛ぶ際は、ひじと手首の部分の関節の開きを微調整することで高度な飛行ができます。
コウモリの飛行の様子はこちら
コウモリの飛び方をよく見ると、瞬間的な方向転換や急降下、さらに素早く羽ばたくことでのホバリングなど、かなり高度な飛行も簡単にやってのけます。アクロバティックな飛行は動物界のトップガン⁉
少し不気味なコウモリの飛び方には、驚異の飛行技術が隠されていたのです!さらに、翼の膜には筋肉や血管が張り巡らされていて血液の循環がよいため、多少穴が開いてしまっても、2~4週間もすればふさがるほど高い修復力を持ちます。
暗闇で獲物を探るコウモリの特殊能力とは?
アンチの言い分「夜に飛んでいるのが不気味」 コウモリの言い分「昼間は怖いんだもん!」
コウモリが夜に飛ぶのは理由があります。そして、暗闇で飛ぶための素晴らしい能力も持っているそうです。
解説してくれるのは、コウモリを飼育する研究所がある同志社大学の飛龍志津子教授。
コウモリが夜に飛ぶのは「天敵に見つかりにくく、獲物を独り占めできるから」で、夜に飛ぶために手に入れた能力が「超音波」とのこと。
コウモリの飛ぶ様子を見ると、口をパクパクさせながら飛んでいます。
実はコウモリは、口や鼻から人間には聞こえない高い周波数の音を常に発しています。
口や鼻から音を出し、その音が戻ってきた時間を基に障害物との距離を測っているのです。この能力で複雑で暗い洞窟の中でも、安全に飛ぶことができるのです。
飛龍さん曰く、「遠くのものを見る(=距離を測る)ときは声を大きく、見たい(=距離を測りたい)ものが近いと声の出す回数を増やす」そうです。
実際にはどのように声の大きさや回数を変えているのでしょうか。
下の図は、コウモリが獲物に近づくときの、声の様子です。
グラフの縦軸が声の大きさ、横軸が出した音の間隔を表しています。
獲物までの距離があるときは、大きな音を間隔をあけて出していますが…
獲物に近づくと、音の間隔が短くなっています。音の回数を増やし、情報を細かく更新することで、獲物の位置を正確につかんでいるのです。
実際に獲物を捕らえる瞬間はこちら
コウモリが夜に飛ぶのは天敵や獲物の奪い合いなどの争いを避けるためです。そして、コウモリは暗いところでも獲物の捕らえるための優れた能力を備えているのです。
コウモリの超音波が人類を救う⁉
アンチの言い分「人間の役には立っていない!」 コウモリの言い分「超音波が人類を救う!」
”人類を救う”とは一体、どういうことなのか?
解説してくれるのは、コウモリが出す音を利用している農研機構の中野亮さん
中野さんは、「コウモリの超音波をまねて、農作物を食い荒らす虫をやっつけています」とのこと。
ガは、モモやナシなどの果汁を吸ったり、幼虫が葉っぱを食い荒らすなど農作物への被害をもたらし、その被害額は年間160億円以上という農家の敵です。そこで中野さんがガへの対策として開発したのは、”コウモリの声を利用した音”を発生させる装置です。
実際に農作物を食い荒らすガの一種・ハスモンヨトウ(80種類以上の作物を食い荒らす)で実験をしたところ、装置のスイッチがオフの状態では元気に羽ばたいていたガが…
スイッチオンで超音波を発した途端、羽ばたくのをやめました。
この結果について中野さんは「ガはコウモリに食べられてしまうので、それを避けるために、コウモリの声が近いと死んだフリをして、コウモリの声が遠くで聞こえると逃げる」と解説。
およそテニスコート9面分まで音が届くこの装置をネギ畑に設置したところ、被害は9割も減少!
殺虫剤がいらないので益虫を殺さずに済み、有機栽培が可能になっています。この装置は全国40か所で実用化され、効果を上げています。つまり、コウモリの超音波を応用することで、私たちが食べる農作物を守ることができているのです!
まとめ
いかがでしたか?
不気味に思われがちなコウモリですが、実は私たちの暮らしにも役立っていました!
夜道で見かけたら、優しく見守ってあげましょう。
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