ウクライナ軍 射程の長い地対地ミサイルATACMSを初めて使用か

NHK
2023年10月18日 午後6:01 公開

ウクライナのゼレンスキー大統領は、射程の長い地対地ミサイルATACMSが「その能力を証明した」と述べました。ATACMSはウクライナが繰り返しアメリカに供与を求めていたもので、ロシア軍への攻撃に初めて使用したとみられます。

(「キャッチ!世界のトップニュース」で10月18日に放送した内容です)
 

・米紙「少なくとも4発のATACMSがロシア軍の拠点を攻撃」

ウクライナ軍が初めて使用したとみられる長距離ミサイル、ATACMS。ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、「戦争の新たな章が始まった。ウクライナでロシア軍が安全でいられる場所はもうない」とSNSに投稿しました。
 

欧米のメディアは、ウクライナ軍はATACMSで2か所を攻撃したと伝えています。それが、東部ルハンシク州のルハンシクと南部ザポリージャ州の港湾都市ベルジャンシクです。どちらもロシアが占領し、ウクライナが奪還を目指している地域です。イギリスのフィナンシャル・タイムズは、「少なくとも4発のATACMSがロシア軍の拠点を攻撃し、ヘリコプター9機や、防空システム、それに戦闘車両などを破壊した」としています。
 

ATACMSは、射程はおよそ300キロとされていますが、アメリカのCNNなどは「ウクライナに実際に供与されたものは射程165キロに設定されたものだと」しています。

ATACMSは長い射程を生かして前線の後方にある標的も攻撃できるためウクライナが繰り返し供与を求めていました。しかし、ロシア領内の奥深くまで攻撃できる射程でロシア側を過度に刺激する懸念があることや、アメリカ側の備蓄が不十分になることなどから、アメリカ政府は供与に慎重でした。
 

・ウクライナ支援を続ける方針を強調か

9月、ゼレンスキー大統領がワシントンを訪問してバイデン大統領と会談したのにあわせてアメリカ政府が発表した追加の軍事支援にも、ATACMSは含まれていませんでした。しかしその後、アメリカの主要メディアは、バイデン大統領がゼレンスキー大統領に対し供与する方針を伝えたと報じていました。
 

アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルは、関係者の話として、「ここ数日の間にアメリカが秘密裏にウクライナに少量を供与したと」伝えています。ウクライナに供与されたATACMSの射程は実際あるとされるよりも短くはなりました。それでも、アメリカが去年(2022年)供与した高機動ロケット砲システム、ハイマース用のロケット弾は射程およそ70キロだったため、その2倍以上遠くまで届くことになります。
 

アメリカがATACMSをこのタイミングで供与したことは、ウクライナにとって大きな意味を持ちます。なぜなら、いま世界の目は主にパレスチナ・イスラエル情勢に注がれ、欧米からの支援も滞るのではないかという懸念が出ているからです。私たちが毎日このニュースルームでウォッチしている海外の放送局のニュースも、このところはガザ地区に関するものがメインでウクライナ情勢の報道はほぼありませんでした。
 

さらにアメリカでは、議会下院で共和党の保守強硬派がウクライナ支援に反対して新年度予算が成立せず、下院議長が史上初めて解任され、その後も新たな議長が決まらない事態が続いています。こうした中でのATACMSの供与は、バイデン政権はイスラエル支援だけでなく、ウクライナ支援を続ける方針を強調したものとも受け止められます。

ウクライナはまもなくロシアによる侵攻開始から2年目の冬を迎えます。前進が難しくなる厳しい冬を迎える前にウクライナは反転攻勢をどこまで進められるか。時間との闘いとなっています。
 

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