ミャンマー クーデターから3年 長引く戦闘 子どもたちに深刻な影響

NHK
2024年2月20日 午後4:03 公開

ミャンマーで軍がクーデターを起こしてから3年。軍と民主派勢力や少数民族の武装勢力との戦闘は、今も各地で続いています。

去年(2023年)10月下旬からは、3つの少数民族の武装勢力による、軍への一斉攻撃で戦闘が激しさを増し、2か月あまりで子どもや女性を含む市民少なくとも378人が死亡し、新たに66万人が避難したとされています。

現地から届いた映像と証言から、長引く戦闘が子どもたちに深刻な影響を与えている実態が見えてきました。

(「国際報道2024」で2月2日に放送した内容です)


ことし(2024年)1月に撮影されたミャンマー東部、シャン州の町です。

軍の空爆で、ほとんどの建物が破壊されていました。

軍による攻撃が激しくなるきっかけとなったのが去年(2023年)10月下旬の少数民族の武装勢力による一斉攻撃でした。

そのときの戦闘で亡くなった12歳と8歳のきょうだいです。

少数民族側の砲弾が誤って家に着弾し、亡くなったといいます。

戦闘に巻き込まれることを恐れた住民たちは、着の身着のまま避難することを余儀なくされました。


こちらは、シャン州にある避難所のひとつです。

一時はこの避難所や近隣の集落などに8,000人以上が戦闘を逃れてきたといいます。

この3か月で戦闘に巻き込まれて亡くなった人や行方不明になった人は200人に上ったとみられ、そのうち3分の1が子どもたちということです。

避難所では、食料が不足し、病気になる子どもが多くいます。しかし、医薬品が不足し、十分な治療ができていないといいます。

避難している男性:子どもがいる家族はとても困っています。避難所に寝る場所が足りず、地面に布やビニールシートを敷いて寝ている。今は冬ですが、十分な服も毛布もありません。

親や友だちを突然亡くした子どもたちは心理的にも、追い詰められています。

避難している男性:お皿が落ちて割れた音など、小さい音でもびっくりして怖がるようになりました。表面上は楽しそうにしていても、内面では恐怖におびえています。

戦闘が激しくなる中、ミャンマー東部では、治安が悪化し、強盗や麻薬の乱用など、犯罪も多発しているといいます。

学校も閉鎖されており、親元を離れて教育が受けられる場所へ避難する子どもたちも多くいます。


避難している子どもたちに食料や教育などの支援を行う、在日ミャンマー人の大槻美咲さんです。

大槻さん: 学校は楽しい?

「ここで勉強するのが楽しいです。父と母に会いたいけれど、今はビデオ通話をして耐えています」

大槻さんが支援している避難民を受け入れている学校です。

内戦で家族を亡くしたり親が仕事を失って移住を余儀なくされたりした子どもたち60人あまりが通っています。

去年(2023年)7月、この学校に避難してきた12歳の男の子です。

暮らしていた地域では激しい戦闘が起きたため、親元を離れて国境地帯まで逃れてきました。

お祈りの時間、男の子が体を震わせて泣き始めました。

大槻さん:母親と父親に会いたいんだと、ずっとお父さんお母さんに会えていなくて、とても悲しいんだというふうに言っていました。

戦闘の終結が見通せない中、子どもたちが不安定な生活を送る時間が長くなればなるほど、ミャンマーの将来は失われてしまうと、大槻さんは懸念しています。

「(子どもたちは)当たり前のような生活ができていないわけです。普通ならば学校に行って友達と遊んで、お父さんお母さんと一緒に暮らして、子どもらしい生活を送ると思うんですけれども、それが全くできていない。心が傷ついている子どもたちもいる。心のケアが一番大事かなと」


栗原:子どもたちを守り育むというのは社会の大切な役割ですけれども、それが本当に大きく破壊されてしまったことを改めて感じました。

油井:本来、国民を守ることが任務のはずの軍ですが、いま銃口を国民に向けています。国の将来を担う子どもたちが大勢犠牲になっている深刻な現状を、どう受け止めているのでしょうか。


取材後記

「お皿が落ちて割れた音など、日常の小さな音でも怖がるようになった」「外でバドミントンをしていて、飛行機の音がすると、すぐその場から逃げて家の中に隠れるようになった」

今回取材した、激戦地シャン州で避難中の男性から聞いた子どもたちの様子です。内戦下の子どもたちが、笑顔の裏でどれほどの恐怖を味わっているのだろうと思い、心が苦しくなりました。

傷ついた心は、目に見えません。

そして、ミャンマーの内戦が終わる日が来たとしても、痛みはずっと続いていきます。

おととし(2022年)の国連人権理事会の資料では、ミャンマーの子どもたちについて「子どもたちは戦争の罪のない犠牲者である。民主主義の道に速やかに戻り、協調して改善策を講じなければ、ミャンマーの子どもたちは失われた世代となってしまうだろう」として、世代をまるごと失う損失が生じていると懸念しています。

国の未来を担う子どもたちが、いまどんな思いで生きているのか。これからも、現地の実態と支援をつづける人たちを見つめていきたいと思います。

(政経・国際番組部 ディレクター 白瀧 愛芽) 

■関連記事はこちら