ロシアの資産を凍結しウクライナ支援に活用? (油井’s VIEW)

NHK
2024年2月20日 午後4:04 公開

ウクライナの復興にかかる莫大な資金をどう捻出するのか。日本を含むG7やEUが議論してきたのが、「凍結されたロシア資産」の活用です。

(「国際報道2024」で1月19日に放送した内容です)


欧米や日本などが経済制裁を発動して凍結したロシアの資産は、ロシア中央銀行の資産でおよそ3000億ユーロに上るとされています。

ウクライナ政府は、こうした凍結資産をウクライナ支援に転用すべきだと繰り返し主張し、ゼレンスキー大統領は、先週もこう訴えていました。

「今年はロシア資産を没収し使用できるようにする必要がある。プーチンは人命を大切にせず、いかなるルールも守らない。彼が重要視するのは金と権力だけだ。ロシアの凍結資産を没収する強力な決断が必要だ」

ただ、凍結されたロシアの資産を「没収」してウクライナへの復興資金に「転用」することは、資産の所有者が変わるだけに、財産権の侵害で国際法に反するという指摘が出ています。

2022年に行われたG7広島サミットでも議論となりましたが、結論は出ませんでした。アメリカはロシアの資産の没収・転用に前向きなのに対して、ドイツ、フランス、イタリアといったEUの国々は否定的と報じられました。

そうした中で、そのEUが今月、新たな動きを見せました。EUは、凍結されたロシアの資産ではなく、その資産が生み出す利子をウクライナ支援に転用できるよう法整備に着手したのです。利子であれば、国際法違反になる可能性は低いと判断したのです。

その利子ですが、ロシアの資産のおよそ3分の2があるとされるべルギーの決済機関「ユーロクリア」では、金利の上昇を受けて、2022年から2023年の1年間で、利子がおよそ40億ユーロあったということで、EUは今後4年間で150億ユーロあまりをウクライナ支援に転用できる見通しを示しています。

しかし、ロシア外務省のザハロワ報道官は「窃盗だ」と抗議しているほか、専門家の間では、利子でも転用は国際法に違反するおそれがあるという意見も出ています。

ただその一方で、利子だけでは、ウクライナの復興支援に必要な莫大な資金の一部しか担えず、やはり資産の没収が必要だという意見もあって、どう議論が深まるか、今後の焦点です。

(この動画は2分56秒あります)


油井秀樹(「国際報道2024」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。

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