欧米 ロシアの情報工作に警戒?(油井’s VIEW)

NHK
2023年9月28日 午後5:31 公開

ロシアによる情報工作。特に欧米が警戒を強めているのが、「生成AI」を使ったディープフェイクなどの情報工作です。

こちらは、アメリカ国土安全保障省が、今月発表した、来年(2024年)、アメリカの安全を脅かす恐れのある脅威をまとめた報告書です。

(「国際報道2023」で9月27日に放送した内容です)


この報告書の中で国土安全保障省は、「ロシア、中国、イランが、2024年のアメリカ大統領選挙などを狙って情報工作を仕掛けてくる可能性が高い。情報工作の質と範囲を向上させるためAI技術を利用するだろう」と警告しているのです。

その上で、ロシアの国営メディアがAIを使ったプロバガンダをすでに展開しているとしてその具体例として、こちらの動画をあげました。

(以下の画像はロシアの国営メディアがAIで制作しSNS上で公開したものです)

(ロシアに対する制裁措置に悩む、偽のバイデン大統領)

(ChatGPTにロシアへの制裁措置を相談する、偽のショルツ首相)

(イライラする、偽のフォンデアライエン委員長)

(かんしゃくを起こして会場から出ていく、偽のマクロン大統領)

【動画はこちらからご覧になれます(52秒あります)】

生成AIを使って欧米の指導者たちを、やゆした動画。指導者たちは、ロシアに対する強力な制裁措置を検討していますが、なかなか良い制裁措置が見つからないようで…。

いわゆるパロディ動画です。


酒井キャスター:パロディ動画だとわかってはいても、かなりリアルだと思ってしまいました…。

アメリカなど欧米の政府は、もっと精巧で出所不明の動画が拡散され、選挙に影響を与える恐れがあると警戒しているのですね。

油井キャスター:はい。アメリカ政府は、来年の選挙に備えて情報機関の中に「FMIC(Foreign Malign Influence Center) =外国の悪影響センター」と呼ばれる部署を設置し、態勢を強化していることを明らかにしています。

「情報機関内で選挙への影響や干渉を分析・評価している。情報は国土安全保障省やFBIとも共有し、彼らが選挙当局者達と直接連絡を取っている」

欧米の各国政府は、ロシアや中国との対立を深める中、そうした国々の選挙干渉に神経を尖らせていますが、生成AIを使った情報発信は、いまや誰でも可能で、有権者1人1人の情報の見極めがさらに重要となっているようです。
 


油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。

(この動画は3分3秒あります)