ロシア政府が弾薬・兵器不足の解消を求めて北朝鮮に接近している一方で、ウクライナ政府は長距離ミサイルを求めて欧米に対する訴えを強めています。
(「国際報道2023」で9月12日に放送した内容です)
ウクライナのクレバ外相は、11日、首都キーウを訪れたドイツのべアボック外相と会談しました。この中で、長距離巡航ミサイル「タウルス」の供与を求めたとしています。
「タウルスミサイルについて我々は詳細を話し合った。ドイツ政府内での協議の進展にうれしく思う」
「タウルス」は空中から発射する巡航ミサイルで、射程がおよそ500キロと長く、ドイツ政府は、ロシア国内をも攻撃できる兵器でロシアを過度に刺激する可能性があるとしてこれまで供与に慎重な姿勢を示しています。
これに対してウクライナ政府、これは、ウクライナ国防省のSNSですが、イギリスとフランスが5月以降に相次いでウクライナに供与した射程250キロ以上とされる巡航ミサイルを出して「一緒で ようやく勝利できる」と書き込んでいて、ドイツにも「タウルス」の供与を求めています。
ウクライナ政府が長距離ミサイルの獲得を求めて訴えを強めている相手は、 ドイツだけではありません。
先週は、同じように首都キーウを訪れたアメリカのブリンケン国務長官に対しても長距離ミサイルATACMS(エイタクムス)の供与を訴えました。
ATACMSは射程300キロとされる地対地ミサイルで、バイデン政権もドイツと同様、供与に慎重な姿勢を示してきました。
ウクライナ政府は、ここに来て、この2種類の長距離ミサイルの供与の要請を改めて強めています。
その背景には、来週、ウクライナへの軍事支援を各国が協議する、「ラムシュタイン会議」がドイツで開かれるほか、ゼレンスキー大統領がアメリカを訪問し、国連総会で演説する予定であることから、これを機にアメリカとドイツへの働きかけを強めているとみられます。
ウクライナ政府は強力な兵器を早期に供与すればするほど、戦争が早く終わると主張していますが、欧米の中には戦争がエスカレートする恐れを懸念する声もあって、バイデン・ショルツそれぞれの政権がどのような決定を下すのかが焦点になっています。
油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分49秒あります)