アップルのiPhoneが、米中対立の新たな火種に。
きっかけは、今月欧米のメディアが相次いで報じたもので、「中国政府が政府機関や国有企業の職員を対象にiPhoneの業務での使用や職場への持ち込みを禁止した」というものでした。
(「国際報道2023」で9月13日に放送した内容です)
これによりアップルの株価が下落。バイデン大統領も
「中国は政府職員に西側の携帯電話を使用させないよう検討している」
と発言しました。
アップルの売り上げは、インドなど新たな市場の開拓も進めているものの、中国は売り上げのおよそ2割を占める重要な市場の1つで、それだけに頭の痛い問題となっているのです。
さらに、この背景には、アップルのライバルとも言える中国の通信機器大手「ファーウェイ」の存在があるという指摘も出ています。
「ファーウェイ」は、アップルに先駆ける形で、およそ2週間前に、最新のスマートフォン「MATE 60 Pro」を発表しています。
「ファーウェイ」は、アメリカ政府が安全保障上問題があるとしてファーウェイに対する半導体の輸出を規制するなど厳しい規制措置を受けてきました。
にもかかわらず、今回、最新のスマートフォンを発表したことで、iPhoneの使用禁止はファーウェイを後押ししたい中国政府の狙いがあるのではという見方が出ています。
一方、アメリカ議会では、下院のギャラガー中国特別委員会委員長が「ファーウェイのスマートフォンはアメリカの規制措置に違反してアメリカの技術を利用した可能性がある」と指摘するなど一部の強硬派から規制の強化を求める声が出ています。
こうした中で中国外務省は13日、次のような発言を行いました。
「中国はアップルなど外国メーカーの携帯電話の購入や使用を禁止する法律や規則、政策文書を出していない。しかし、最近、アップルの携帯電話に関連する安全上の問題が報じられている。中国政府は情報とネットワークの安全を重視している」
“iPhoneの使用を禁止していない”。中国政府はそう強調してみせましたが、スマートフォンをめぐる米中対立の火種が消える気配は今のところ、なさそうです。
油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分39秒あります)