【Monday BIZ】世界が注目!日本のゲノム編集の強みは

NHK
2023年11月28日 午後6:12 公開

最新の世界経済の動きをお伝えする「マンデービズ」。

毎週月曜日に各国で取材にあたる特派員がピックアップ。マーケットが注目する今週の世界の重要イベントを深読みするコーナーです。

(「国際報道2023」で11月27日に放送した内容です)


【日本】世界が注目!日本のゲノム編集の強みは

各国で研究が進むゲノム編集について。実は、日本は世界のなかでも比較的早い段階からゲノム編集された食品の流通が始まっているのです。

やって来たのは農水産物の研究成果を紹介する展示会。

注目したのはこちらのトマト。ゲノム編集で作られた作物で、青果としては、世界で初めて市場に流通したということです。私も食べてみました。

GABAと呼ばれるアミノ酸の量が通常のものよりおよそ4倍に増え、血圧を下げる効果などが期待できるそうです。

ゲノム編集は遺伝子を自在に操作することができる技術。

従来の品種改良は何世代も掛け合わせるなど長い時間が必要でしたが、この技術では特定の遺伝子に直接働きかけることで、そのプロセスを大幅に短縮できます。

トマトの共同開発を行った筑波大学の三浦謙治教授。日本の強みは食品のゲノム編集のルールを比較的早い段階から打ち出し、商品化を進めた点にあると指摘します。

「日本ではゲノム編集の技術をいち早く取り入れて、いろんな作物に展開する事業を国がバックアップして行った」

海外からも注目され、イギリスの研究者は、日本でゲノム編集を使った食品の流通が始まっていることに大いに注目しているといいます。

「驚くべきことは(日本で)ゲノム編集された食品を食べることができたことだ。日本は我々よりも(市場への流通が)かなり進んでいる」  

一方、島根大学は気候変動にも対応できる可能性を秘めた稲について、最新の研究成果を紹介していました。

ゲノム編集でアミノ酸を多く含むこの稲。低温や冠水などの環境ストレスに耐性があることが判明しました。

研究に携わったのは、バングラデシュからの留学生。ゲノム編集の可能性に期待を膨らませています。

「洪水はバングラデシュの農業の大きな課題の1つ。ここで学んだ知識や技術を国に帰って研究に参加し、活かしたい」

日本では、トマトをはじめ、肉厚なマダイや成長の早いトラフグなど商品化も相次いでいて、新たな成長分野として期待が高まっています。
 


【中国】EV急拡大で日系部品メーカーに変化

EV=電気自動車の販売が急拡大している中国。その影響は、これまで自動車部品以外を主力としてきた日系メーカーにも及んでいます

今月、広東省で開かれたモーターショー。出展された、EVなど新エネルギー車の数は過去最多を更新。日系メーカーも含め、全体の4割を超えました。

EV販売の急拡大のインパクトは大きく、日系メーカーの間では、中国のEV車向けの部品生産に本格的に参入する動きも出始めています。

広東省・深圳(しんせん)で、プラスチック製のギアを手がける日系メーカーです。もともとは、印刷機などに使われる部品を主力としていましたが、 1年ほど前からEV関連の注文が急増。

EVはエンジンの駆動音がほとんどなくドアやシートのわずかな音を気にするドライバーが少なくないため、かみ合わせがよく音が小さい、高精度なギアの需要が高まっているといいます。

「(中国EV向けは)約2倍の比率で伸びてきている。12月末までには2倍を超えるのではないか」

このメーカーは受注を増やす方針ですが、発注がいつまで続くのか不安もあるとのことです。日系メーカーの模索が続きそうです。
 


【フランス】パリ近郊で「鉱山開発」計画

なんと、パリ近郊で、EVのバッテリーに欠かせない、 リチウムやコバルト、ニッケルが“掘り出されている”というのです。

その“鉱山”ですが、実は使われなくなったEVバッテリーから貴重な金属を取り出してリサイクルする工場、いわゆる「都市鉱山」なんです。

まずは、テストで操業を開始。4年後には、1000倍のスケールの工場を建設。年間20万個にのばるバッテリーから、リチウムとニッケルを5000トン、さらにコバルト1000トンを取り出す計画です。

「“都市鉱山”は最も重要な未来の鉱山です」

重要鉱物について、EUは自給率アップの方針を掲げていて、 フランスはその先頭に立とうというわけです。
 


【インドネシア】大統領選挙、論戦スタート。焦点は「鉱物資源」政策

来年2月の大統領選挙に向けた選挙運動が11月28日にスタートしますが、その焦点の1つが「鉱物資源」なのです。

EVのバッテリーに欠かせないニッケルで、世界最大の生産量を誇るインドネシア。

しかし実は、3年前(2020年)から加工していないニッケル鉱石の輸出を禁止していて、その対象を拡大しようとしてます。

自国をEVのバッテリーやEV車そのものの生産拠点とすることで、輸出単価の底上げを目指しているからなのです。

来年、新たな大統領のもとで方針に変化はあるのか。世界が注目しています。
 


【アメリカ】市場の関心は早くも、来年いつ「利下げ」?

複数の経済指標がインフレの低下傾向を示し、利上げ打ち止めのムードが広がるなか、市場の関心は早くも、「来年のいつごろ、『利下げ』に踏み切るか」に移っています。

中央銀行に当たるFRBのパウェル議長はあくまでも「さらなる金融引き締めが適切であればためらわない」との姿勢ですが、そんななか注目されているのが、今週木曜日(30日)に発表されるPCE=個人消費支出の物価指数。FRBが重視するデータです。

物価の低下を示し、来年前半の利下げ観測を高める内容になるのか、注目です。
 


栗原 望(「国際報道2023」キャスター)

これまでニュースウオッチ9やクローズアップ現代、ニュース7などでリポーター、キャスターを担当。2022年は、音声プラットフォーム企業で1年間研修。テクノロジーの未来、災害、人権などに関心を持つ。

(この動画は7分48秒あります)