秋場所初日の解説には、元横綱・鶴竜親方が5月の夏場所以来の登場!
現役時代、技巧派で知られた親方ならではの分析が盛りだくさんで解説していただきました。(2023年9月10日放送)
注目取組① 新大関 豊昇龍 注目の初日は!? 相手は優勝経験のある阿炎
豊昇龍は親方の採点ではスピードとテクニックが満点!
対する阿炎は突き押しが持ち味です。
阿炎の突き押しに、体がのけぞるほど押し込まれながらも、横に回り込んで“とったり”、新大関としての初日を白星で飾りました。
この一番のポイントは?
鶴竜親方:きょうのポイントは“足”、両足が前後になっていた。もう一つが左の手。まず足から、右足が後ろで左足が前ですけど、右足で相手に押されたときに残すことができる。逆にここからはたかれても前に落ちないように左足で踏ん張る。この両足が、もし揃っていると前に落ちてしまうので、そういう意味では立ち合いから常に足が前後していたのがよかった。 さらにこの左手が常に下からあてがっていた。あてがうことによって阿炎の突き押しがまともに伝わらない。そうすると相手の力を逃がすことができる。豊昇龍のいいところが出た。
初日勝ち切ったのは大きい?
鶴竜親方:本人が言っていたように緊張していたと思う。最後の最後で阿炎の方がちょっと強引に前に出ちゃいましたけど、豊昇龍は冷静に勝ち星を拾いましたね。
立ち合い押し込まれたことで言うと豊昇龍、幕内平均よりも20kg軽い。この辺りは?
鶴竜親方:彼は入った時から本当に細かった。そんな中で常に相手に押されるというのが当たり前になっていたと思う。そんな中でしなやかな残し方、どうしたらいいのかというのを考えたうえで自然と身に付いたと思う。彼の良さでもある。
鶴竜親方は、大関時代に体重を10kg増やしたことが横綱昇進につながったそうですが…
鶴竜親方:単純に体重増やしたらいいわけじゃなくて、バランスよく体大きくしていきたいという中で増やしていった。
ここで中村憲剛さんから質問
中村:体のキレを考えると単純に体重を増やせばいいわけではない?
鶴竜親方:それぞれの人に合った自分に合ったベスト体重というのはある。その中で自分は考えて、このくらいの体重だったら動けるということで、稽古だけじゃなくてトレーニングもしながら、いろんなこと工夫しながら体を大きくしていった。
豊昇龍、新大関の場所で優勝となれば平成18年夏場所の白鵬(宮城野親方)以来、今場所の優勝の可能性は?
鶴竜親方:初日終わったばっかりですけど、十分に可能性ある。(横綱不在で)もう自分が上に立っているわけですから。壁になる人が出ていなくて今いないので、そういう意味ではまだ初日ですけど十分にあるかなと思います。
注目取組② 先場所ケガを抱え戦い抜いた大関・霧島、平幕・朝乃山の初日は?
さらに親方が今場所、注目しているのが先場所ケガの影響で4日目から出場した大関・霧島。そして朝乃山もケガで4日間土俵を離れました。今場所の調子はどうなのか!?
霧島、動きのいい翔猿を組み止めると、あとは落ち着いて吊り出し。角番の場所の初日を制しました。
続いては先場所痛めた左腕にサポーターを付けて臨む朝乃山
もろ差しの形から寄り切り。ケガを抱えながらも関脇・若元春を相手に力強い相撲
親方に解説してもらったのは朝乃山の一番。そのポイントは?
鶴竜親方:きょうの一番はまさにここ!若元春の左手か、朝乃山の右手かということで“差し手争い”。ここまで若元春におっつけられると、大体みんな嫌がって腕を抜いて外から行く。そうすると若元春が左を差して、自分が得意の“左四つ”を作っていい方に行けたと思う。しかし、朝乃山は最後の最後まであきらめずに右をねじ込んだっていう感じですね。徹底的に自分の相撲にこだわった、右を差し勝った。こうなればさすがに若元春も何もできないですよね。ちょっと力の差を感じるくらいの一番だった。
横綱不在の場所、どんな場所になることを期待する?
鶴竜親方:やっぱり今、上に横綱がいないですけど、大関が3人(霧島・貴景勝・豊昇龍)いるわけだからこの3人は横綱の次に責任のある地位ですから、そういう意味でこの3人がしっかり引っ張っていってほしいという思いがあります。
鶴竜親方、緻密な解説ありがとうございました!