三浦透子「隠したいけれど出てしまうものが本当の自分」

NHK
2023年11月30日 午後3:56 公開

カンヌ国際映画祭で4冠を受賞した『ドライブ・マイ・カー』に出演、独特な存在感で注目を集めた俳優の三浦透子。その後も『大奥』やドラマ『エルピス〜希望、あるいは災い〜』などに出演し、強い印象を残している。

さらに、透明感のある歌声が評価され、映画『天気の子』の主題歌に抜擢。演技でも音楽でも魅力を放つ、注目の存在だ。

『ドライブ・マイ・カー』を見て「得体のしれない存在感」を感じたというムーンライダーズの鈴木慶一が、三浦の視点を探る。


三浦:「これをやろう」「こういう感情を込めよう」と、準備していくことで生まれるものもあると思うけれど、「自分で自分に驚きたい」というのがすごくあって。「これとこれとこれをやっていこう」って行くと、自分で驚けない。

鈴木:自分で驚くというのは、どうやると驚きます?

三浦:「このセリフをこんなふうに言ってしまった」「こんな大きい声が出てしまった」とか。「ここって何の感情も動かないんだな」「ここで何かすごく触りたくなったな」とか、自分のその時の感情の動きに自分がびっくりすることがあって、それはすごく面白いですね。それを起こすには、「具体的に台詞でどういうことをしよう」というプランを持っていると起きにくいというのが、今のところの自分の考えで。

鈴木:それは、触覚を敏感にしておくみたいな感じなのかな。

三浦:そうですね。もうちょっと身体的なアプローチのような気がします。

鈴木:それはほとんど偶然に近いですよね。「こうやって準備してこうしよう」ってことじゃなくて、その場にある物に触ったり、何か音が聞こえたりしたことによっての自分の反応でしょう?

三浦:そうですね。

鈴木:ということは、ひょっとしたら即興かもしれないですね。でも、即興にしてはセリフは覚えていなきゃいけないわけだ。

三浦:そこが本当に難しいところだなと、何度やっても思うんです。じゃあ、その場で生まれたものが素敵だから、何も準備しなくていいのかとなってくると、「プロフェッショナルの役者であることはどういうことなんだろう」というところも生まれてくるので、何回も繰り返せる自分ではありたいとは思っています。舞台でも、何回も公演をやらなくてはいけないので、本業を役者としてやってる身としては、そこを目指したい思いはあって。

鈴木:お芝居をすると役が決まりますよね。で、その時に完全に変身してしまうのか、自分は0になってその役になるのか。自分は少し残すのか。この辺はどう考えます?

三浦:変身できないと思ってます、どちらかというと。結局“自分”だなって言う感覚の方が近いかもしれないです。

鈴木:じゃあ。「魔女の役をやってください」だと…?

三浦:魔女だった時の自分っていう感じでしょうか。

鈴木:(指を弾く)なるほど!

三浦:結局、「自分は何か」というのが分かってないといけないんです。それこそ、体とか声とか、出そうと思って出したものじゃなくて、隠したかったんだけど出てしまうものが多分本当の自分なんだろうなと。

日々お芝居をしていて、アーティストや、別の職業をなさっている方や、初めて演技する方などがお芝居をされてカメラの前に立っている時に、何をしているでもないのにすごく魅力的に見える瞬間があって。お芝居の練習では得られないものというか、まとう空気とか、生きてきた間で考えたこととか、顔に出てしまうものって隠せないというか。映ってしまうものだと思うんです、人生って
 

2023/11/24 スイッチインタビュー「鈴木慶一×三浦透子」EP1より