古墳の魅力伝える「こふん皇子」

NHK
2023年10月13日 午後6:25 公開

考古学に関するリポートをご紹介します。全国に16万基以上あるといわれる古墳。その魅力についてたくさんの人に知ってもらいたいとSNSを使って情報を発信する研究者がいます。みずからを「こふん皇子」と名乗っていてちょっと緩い感じもするのですが、ただ者ではないんです。

(取材:柳澤伊佐男)

去年12月、奈良市の富雄丸山古墳で、大発見がありました。

「鼉(だ)龍鏡や!」。

丸い古墳の外側ある埋葬施設から、これまで見たことがない盾の形をした大型の青銅の鏡が出土。その上には、長さ2メートル30センチ余りの長大な鉄の剣が乗せられていました。

盾形の鏡は、その裏側に「鼉龍文(だりゅうもん)」と呼ばれる文様が鋳だされていたことから、「鼉龍文盾形銅鏡(だりゅうもんたてがたどうきょう)」と名付けられました。また鉄の剣は、ゆるやかに波打った形が特徴の「蛇行剣(だこうけん)」と呼ばれるタイプで、東アジアの中でも最も長いものといわれています。これらの出土品は「国宝級」の発見として、注目を集めました。

この古墳の調査を担当したのは、奈良市埋蔵文化財調査センターの学芸員、村瀨陸さん(32)です。5年前からこの古墳の調査の中心的な役割を担い、極めて珍しい出土品を発見したことで一躍「時の人」になりました。

村瀨さん

「こんなものがこの世にあるのかというか、本当にそれくらいの驚きでしたね。一生に一度も体験できないような、そういった経験をこの現場でさせていただいた」。

学生時代から遺跡の調査に携わってきた村瀨さん。謎の多い古墳の研究に没頭してきました。その魅力をたくさんの人に知ってほしいと、研究者として調査を進めるかたわら、SNSを使って調査や研究の情報を発信しています。

村瀨さん

「『古墳ってこう面白いんだよ』っていうのをほんとにフランクに伝えるツールとして (SNSを)使わしてもらってます」。

SNSで名乗っているのは、その名も「こふん皇子」。その由来を聞いてみると・・・。

村瀨さん

「大学時代にあまり古墳が好きっていう学生はそんなに多くないんですけれども、そういった中で僕が圧倒的に古墳が好きだった学生だったので、まわりの友達から「皇子」みたいな感じで呼ばれているのを、それをそのままSNSのハンドルネームにしたっていうところです」。

村瀨さんは研究者個人の立場でも、調査や研究を進めています。注目したのは、奈良市北西部の佐紀(さき)古墳群。ここには全長200メートルを超える大型の前方後円墳が7基あります。現在は樹木に覆われていて、どのような構造なのかもはっきりせず、今も謎が多く残されています。しかし、いずれの古墳も宮内庁が管理しているため、特別な許可が無い限り、研究者でも立ち入ることができません。

そこで、村瀨さんたちは、航空機に搭載したレーザーを使って、古墳の形を測量する最新の方法を使おうと考えました。この方法を使えば、古墳の形を正確に、3次元でとらえることができるのです。

村瀨さん

「佐紀古墳群というのが4世紀から5世紀にかけての大型前方後円墳なんですけれども、発掘調査がこれまであまりなされていませんので、この航空レーザー測量することによってそのこの形が分かることによって、新たな知見が得られますので、そこで研究を進めたい」。

ただ、問題となるのが調査にかかる費用です。そこで思いついたのが、全国の考古学ファンなどから費用を募るクラウドファンディングでした。のべ340人から500万円の寄付が集まり、古墳群一帯の測量を実施することができました。

この日、村瀨さんは、寄付をしてもらった人たちに向けて、オンラインで成果を報告しました。

「富雄丸山古墳は4世紀後半、(佐紀)石塚山古墳が4世紀末。コナベ古墳が5世紀初頭になるんですけども、段を持つという構造が共通してくるというのが、非常におもしろい成果だなと考えています」。

たくさんの人たちの協力で実現した今回の調査。古墳の形や構造がはっきりとつかめたことで、古墳群をつくった集団のつながりや特徴を解き明かす手がかりになると村瀨さんは考えています。

村瀨さん

「一個人としては、やっぱり古墳をみんなに知ってもらいたいって気持ちがいちばんありますので、今回の成果を本当に佐紀古墳群という、これまでそこまで知られてなかったものを大きくしていただくチャンスになりますので、また引き続き発信もしていきたいと思ってます」。

村瀨さんは市の職員として、ことしの冬から、「国宝級」の出土品が見つかった富雄丸山古墳の埋葬施設を再び発掘する予定です。また、研究者個人としても測量を行った佐紀古墳群の報告書をまとめるため研究も進めることにしています。

「こふん皇子」のこれからの活躍に目が離せません。

取材: 記者:柳澤伊佐男

現在、橿原市を拠点とする奈良やまと路支局担当。天理市の黒塚古墳の取材以来「古墳」との付き合いは20余年になります。