奈良と柿の深い関係

NHK
2023年11月27日 午後5:57 公開

奈良県内の歴史や文化の魅力をホリ下げる「ならホリ!」。

今回は今が旬の奈良の特産「柿」の歴史を掘り下げます。

まず、なぜ奈良は柿の一大産地なのか、

そのルーツや歴史を、長年柿の研究をしている杉村輝彦さんに聞きました。

(千原ありさ)

県果樹・薬草研究センター 杉村輝彦 所長:

大正時代までは奈良はみかんの産地だったんです。

えっ?みかん!?

もともと県内の山間部は日当たりのよい急な傾斜の地形が多く、

そこでの栽培に適していたみかんが多く植えられていました。

しかし大正10年の大寒波で、寒さに弱いミカンは大きな被害を受けます。

そこで代わりに植えられたのが柿でした。

当時、柿の価格が高騰していたこともあり、植え替えが進んだそうです。

こうしたこともあり現在、

奈良県の柿の出荷量は和歌山県に次いで全国2位となっています。

そして、驚くべきことに

全国の栽培面積それぞれ1位、2位の「富有柿」と「刀根早生」は

いずれも奈良に深いかかわりがあるというのです。

まずは「刀根早生」。

今回、発祥の地といわれる天理市に足を運びました。

「刀根早生」の生みの親、刀根淑民さんの息子・義文さんです。

お気づきですか?そう、「刀根早生」は刀根さんの苗字が由来なんです。

刀根早生の実がはじめてなったのがこちらの木。

この木は1本の枝だけが刀根早生、ほかの枝は違う品種なんです。

どうしてこうなったんでしょうか?

昭和34年に発生した伊勢湾台風は天理市の柿畑にも大きな被害を及ぼしました。

台風の後、刀根さんは強風で折れた柿の木を修復するため、折れた部分に同じ品種の枝を接ぎ木しました。すると接ぎ木の部分の実が1か月ほど早く色づきだしたんです。

何年も続けて早く実がなることが確認されたため、接ぎ木をしてから19年後、新品種として登録、すぐに全国に広がりました。

収穫時期が約1か月早くなったことで、農家の経営も潤いました。

刀根義文さん:

父は地域の活性化になったらなというてました。

やっぱりありがたいですね、刀根という名前も残りますし、うれしいです。

そして、もう1つ、甘柿の代表格「富有柿」も奈良と深い関係があるといいます。

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県果樹・薬草研究センター 杉村輝彦 所長:

江戸時代初期ですかね、御所市で発見された御所柿っていうのがあるんですけど、

「完全甘柿」のルーツであるといわれています。

それまでは完全甘柿はないといわれています。

現在の御所市室地区で生まれた御所柿(ごしょがき)

およそ400年前、突然変異をおこした木から、それまでなかった「完全甘柿」が生まれました。そのため、この御所柿が柿の王様で甘柿の「富有柿」のルーツである可能性が高いんです。

『柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺』でおなじみの正岡子規も、この御所柿を食べながら、句を詠んだといわれているんだとか。

でも御所柿ってあまり聞きませんよね?

その理由を栽培農家の中坊成敏さんに尋ねると・・・。

柿農家 中坊成敏さん

あまり流通してないんです。

熟した実を味見させていただくと、濃厚で甘く、まるで“天然のようかん”のようでした。

糖度が非常に高く、スイーツのような味わいなのに

多く流通していないのは、ほかの品種に比べて収穫量が少ないからです。

中坊さんに話を聞くと、御所柿は実が落ちやすいだけでなく、病気にも弱く、栽培が非常に難しいそうなんです。

安定した収穫を可能にしようと、中坊さんたち柿農家は県と協力し、

柿の実がつきやすくなる様々な方法を試してきましたが、まだ最善策は見つかりません。

それでも、他の柿とはひと味違う濃厚な甘さの御所柿をより多くの人に食べてもらおうと、中坊さんたちは今後も試行錯誤を続けるそうです。

取材 千原ありさ

幼少期から干し柿を作って食べるほどの柿好き。

奈良の柿のおいしさに驚きました。