その言葉が道をひらく
元首相銃撃事件を機に問われている宗教のあり方。“カルト”とは何か?現代宗教の問題点は?いま必要な宗教リテラシーとは?宗教について学び直すための記事です。
【小原】信教の自由という言葉が何度か出てきましたけれども、日本国憲法が定める信教の自由ということの理解を深めていくために、駒村さんから少し問題提起していただきたいと思います。 日本国憲法と旧体制からの決別 駒村 圭吾さん(憲法学者・慶應義塾大学教授)専門は憲法学 言論法 比較憲法 駒村 圭吾さん(憲法学者・慶應義塾大学教授)専門は憲法学 言論法 比較憲法 【駒村】日本国憲法、物心がついた頃から何べんも読まされているので、おそらく条文はよくご存じかと思いますけれども、日本国憲法の人権条項というのはかなりシンプルなんですね、アメリカの憲法、あるいは他国の憲法と比べても、あまり規律密度が高く...記事を見る
【小原】では、島薗さんからですね、今、比較法的なこともやっていますので、他国の事例、こんな国にはこんな法の例がありますよ、みたいな、別の例を引き合いに出してくださっても結構ですので、ひと言いただけますか。 宗教的な自由を認めるアメリカ 【島薗】日本の戦後の法体系で信教の自由とか政教分離ということを考えるときには、アメリカ合衆国の影響というものほうが大きかったわけなんですよね。アメリカの考え方は、要するに宗教的なマイノリティを守るといいますかね、多様な宗教団体がそれぞれに自由な活動ができる、これがある種、国是のようにもなっている国です。そういう意味ではフランスと非常に違うんですね。今、日本で...記事を見る
【小原】少し違う角度からこの問題を整理していくために、フランスの反セクト法を中心に、日本の問題をちょっと外部の視点から見ていきたいと思うんですよね。まず金塚さんから、反セクト法、これ日本でも、安倍元首相の銃撃事件が起こって以降、もう頻繁に口にされるようになったんですけども、政治家の一部には、あのようなフランスの反セクト法のようなものを日本にもすぐ導入して適用すべきだっていうような人たちもいたんですけども、そういったことに対してどうお考えになっているのかってことも含めてお話いただければと思います。 金塚 彩乃さん(弁護士) フランス法の専門家で日本とフランスの弁護士資格を持つ 【金塚】名...記事を見る
【島薗】安倍元首相の殺害ということから、容疑者が関わっていた統一教会と呼ばれている団体の人権侵害が甚だしかったということが明らかになってまいりました。多くの被害者を生み出していたにもかかわらず、それが問われるようなことがなかった、あるいは、不十分にしか規制がなされなかったということがあるわけですね。それは、法規制、その宗教に関わる制度の問題とも関わっているわけですね。何か制度上に不備があったんじゃないかということで、諸外国とも比較しながら考えていかなくてはならない、そういう問題が一つあります。これはしかし、宗教団体や信仰の自由を大切にするという立場からしますと、宗教の自由、信教の自由と言ったり...記事を見る
【小原】既存の法律や新法の全体像とともに、それがうまく機能してない部分があるんじゃないかというお話がありましたが、同時に、日本社会の問題でもあるかなというふうに思いましたので、田中さんからは、もう少し幅の広い視点からですね、今の現状をどう理解されているかお話いただけますか。 【田中】私はまず、その宗教法人をどうするかっていう以前の問題として、社会全体として見たときに、やっぱり犯罪は犯罪じゃないかと思うんですよ。暴力とか、詐欺とか、恐喝とか、脅しだとか、全部犯罪ですよね。それを守る聖域なんて本当はあってはならないわけなんで、これもう政治家であろうと、警察官だろうと、そういうことをやったらすべて...記事を見る
島薗 進さん(東京大学名誉教授)宗教学の第一人者 新宗教やスピリチュアリティの研究が専門 島薗 進さん(東京大学名誉教授)宗教学の第一人者 新宗教やスピリチュアリティの研究が専門 【島薗】そもそも旧統一教会はですね、世界平和統一家庭連合という名前がついておりまして、家庭ということに力点がある。また最も重要な儀式に祝福といって、合同結婚式ですね。こういうことがあって、家族に特別な意味を込めているということがございます。他方で、大変苦しんだ、辛い経験をした子どもたちという人たちが発言をするようになりまして、宗教2世という言葉は、今広く使われるようになっております。家族とか家庭、性というのは、宗...記事を見る
【島薗】女性が宗教によって抑圧されていると。そういう面があることは否定できない。しかし、それは宗教本来のものではないという面もあるし、あるいは誤解されて誇張されているという面もあるという、そういうふうなお話が出てまいりましたが、八木さんにもう少し詳しく紹介していただければと思います。 近代化とイスラム教の変節 八木 久美子(東京外国語大学教授)イスラーム世界の家族のあり方を研究 八木 久美子(東京外国語大学教授)イスラーム世界の家族のあり方を研究 【八木】イスラムという宗教の名前を聞くと、やはり女性のステータスっていうことが、真っ先に頭に浮かぶと思うんですけれども、そのこと自体が実はイ...記事を見る
【島薗】宗教は女性と子どもを抑圧するかという、問いをですね、掲げてみております。そもそも、宗教にそういう側面があると考えなければならないのかどうか、あるいは、どうして、そういうふうなイメージができてきているのかというふうな、その辺のことについて、まずは、ちょっと問題提起をしていただければなと思います。 キリスト教は女性をどう見てきたか 【原】アダムとイブの話で、『創世記』の女性の創造ということになりますと、当然、アダムのあばら骨からイブが作られたと。結局、そこで、もうすでに男女が平等ではないというか、従属している状態にあるわけですよね。その話は、『新約聖書』の中にも、特に、パウロの手紙など...記事を見る
島薗 進さん(東京大学名誉教授)宗教学の第一人者 新宗教やスピリチュアリティの研究が専門 島薗 進さん(東京大学名誉教授)宗教学の第一人者 新宗教やスピリチュアリティの研究が専門 【島薗】自分は宗教関係ないやと思っている人はたくさんいる。そういう人にとって、この統一教会の問題は、実はあなた方自身の問題でもありますよと。そして、宗教について、あなたも共に考えてほしいですねと、そういうメッセージをこの番組を通して、伝えていけたら良いと思うんですが。 【櫻井】私は、宗教とウェルビーイングの研究っていうのを、この数年やっていまして。ウェルビーイングっていうのは、幸せなんですよね。幸せっていうのは...記事を見る
【島薗】今回の統一教会の問題は、宗教集団が異様な行動をとるということ、そちらの問題とともに、政治家がこれで良いのかと。宗教と政治の関係が相当にいびつになっているということが露わになったんじゃないか。その辺りについて、どういうふうに考えているでしょうかね。 【小原】政治と宗教の関係を日本社会に即して考えていくことになると思います。日本の中でいわゆる信教の自由が議論され始めたのは、明治期になってからなんですけれども。岩倉使節団などがヨーロッパ諸国を回って、アメリカも含めて回って行くんですよね。今後の日本の国づくりにどこの国がモデルになるんだろうか模索していく中で最終的に辿り着いたのは、ドイツなん...記事を見る
【小原】島薗さんの方から、現代宗教の歪みと日本について問題提起していただきたいと思います。 政治と宗教のいびつな関係 島薗 進さん(東京大学名誉教授)宗教学の第一人者 新宗教やスピリチュアリティの研究が専門 島薗 進さん(東京大学名誉教授)宗教学の第一人者 新宗教やスピリチュアリティの研究が専門 【島薗】統一教会でこんなに酷いことが行われていたかということが見えてきて、みんな驚いていると。その一つに、恐怖、脅し、搾取とともにですね、「嘘」っていうのがあると思うんですね。例えば、あの壷を売るというので途方もない値段をつけたら、これが効果があったということで。これ宗教ですか。まあ、本当に嘘...記事を見る
【島薗】現代というのは、宗教離れの時代ではないか。日本人は無宗教だと、そういうふうに思っている方も多いと思うんですが、実際はどうなのと、今後はどうなるの、本当に宗教離れということがこれからも進んでいくんでしょうか。同時に、そういう状況の中で宗教集団というのはですね、マスコミで報道されるときは、困った存在、被害を及ぼす存在、何か問題を起こすものとして現れてくるわけですけれども。これは実際にそういうことがあるのかどうか、今ある宗教、何か宗教集団、劣化しているんじゃないかと。そういうふうにも見えるかと思います。そのあたりについて、まず釈さんのほうからお話をいただければと思います。 日本人の宗教離れ...記事を見る
島薗 進さん(東京大学名誉教授)宗教学の第一人者 新宗教やスピリチュアリティの研究が専門 島薗 進さん(東京大学名誉教授)宗教学の第一人者 新宗教やスピリチュアリティの研究が専門 【島薗】本日は、『問われる宗教と“カルト”』というテーマで話し合いをしたいと思っております。安倍元首相の殺害という事件が起こりまして、宗教に多くの人が改めて関心を持つという事態になりました。統一教会問題と、犯人がそういうことで苦しんできた人だったということから、なぜそういうことが起こっているのかということ。で、そもそも宗教とは何か、日本人にとって宗教は何か、あるいは現代人にとって宗教は何かと。あるいはまた政治と宗...記事を見る