ウクライナ軍が行った、ロシアの黒海艦隊の司令部への攻撃。この攻撃では、ウクライナ軍は、黒海艦隊の司令官が死亡したと主張しています。
司令官とは、この写真のビクトル・ソコロフ氏です。去年(2022年)9月に黒海艦隊の司令官に就任しました。しかし、ロシアの国営テレビは、このソコロフ司令官がインタビューに応じている様子だとする映像を放送しました。
司令官は果たして死亡したのか、それとも健在なのか。錯そうする情報の現状とその背景について、別府正一郎キャスターの解説です。
(「キャッチ!世界のトップニュース」で9月28日に放送した内容です)
・ウクライナ軍がロシア黒海艦隊の司令部を攻撃
これまでの情報を時系列で整理します。
ウクライナ軍が黒海艦隊の司令部への攻撃を行ったのは9月22日、先週の金曜日です。
現地からの映像では、司令部にミサイルが撃ち込まれる様子や、黒煙があがる様子などが映っています。ロシア国防省も、司令部の施設がミサイル攻撃を受けて損壊したと発表しています。
25日、ウクライナ軍は、「黒海艦隊の司令官を含む、34人の幹部が死亡した」と主張。一方で、ロシア側の地元メディアは、「司令官は当時施設にいなかった」と否定的に伝えました。
26日、ロシア国防省は、ショイグ国防相が軍の司令官などと開いた会議の映像を公開し、この中でソコロフ司令官とみられる人物がオンラインで参加しているとしています。ウクライナ軍は、「この情報を解明している」との声明を出しました。
そして、27日には、司令官がインタビューに応じている様子だとする映像が出てきました。この画像は、現地時間の27日の夜、日本時間の28日午前2時に放送された国営ロシアテレビのニュースです。この中でソコロフ司令官がインタビューで「黒海艦隊は自信をもって任務を遂行している」と述べていると伝えています。このニュースでは、「ウクライナ側の『司令官が死亡した』という情報はフェイクだ」とも伝えています。一方で、このインタビューがいつ撮影されたかは分かっていません。
このように主張は食い違っていますが、背景には、ウクライナ側が攻勢の成果を示したいのに対して、ロシア側には影響を最小限にとどめたい思惑があるとみられます。ロシア側が2日間続けて映像を出して、ソコロフ司令官の健在ぶりを強調していることからは、ウクライナ側の主張を否定したい意図があると考えるのが自然です。
・ウクライナ側とロシア側で食い違う主張
こうしたことは、これまでもありました。
思い出されるのが、去年(2022年)4月、黒海艦隊の旗艦、「モスクワ」が沈没した時のことです。ウクライナ側は対艦ミサイルで攻撃したとしていますが、ロシア国防省は火災によって艦内の弾薬が爆発して大破し、消火を試みたものの失敗したと発表しました。
ニューヨーク・タイムズは、このときも、「艦長の生死について主張は食い違い、今になってもどちらなのかはっきりしていない」と指摘しています。
司令官の生死をめぐり食い違う主張。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、今後も情報が錯そうする場面が繰り返されることになりそうです。
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