棟方志功の作品が観られる日本各地の美術館

NHK
2023年10月8日 午前9:00 公開

富山県・南砺市立福光美術館における棟方志功作品の常設展示風景

日曜美術館ホームページでは放送内容に関連した情報をお届けしています。こちらは10/8放送「棟方志功 板の生命を活かす」に合わせたコラムです。

棟方志功生誕の地、青森。戦時下疎開した富山の南砺市。上京後に制作の拠点であり続けた東京。日本各地にある棟方志功関連の美術館を紹介します。

棟方志功記念館(青森・青森市)

青森市にある棟方志功記念館。校倉造りを模した建物がトレードマーク

棟方志功が亡くなった年、1975年に棟方志功記念館は開館しました。「少数の作品をじっくり観て欲しい」という棟方本人の希望もあって展示室はこじんまりとしたつくりですが、収蔵作品点数では国内最多。かつて神奈川県鎌倉市にも棟方板画美術館という美術館がありましたが(1974年開館)、2012年に閉館となりその所蔵作品や資料も移管されたことから、棟方志功記念館のコレクション数は2000点近くに上っています。棟方志功ファンなら必ず立ち寄りたい施設でしょう。年4回、季節ごとに展示替えがあり現在は秋の展示が開催中です。館の周りは大きな池のある日本庭園ですが、それも生前、棟方が語っていた要望が関係しています。

棟方志功記念館展示風景

ただ、棟方志功の芸術が常時観られる専門館として重要な役割を担ってきた当館は老朽化などの理由で、2024年3月末を持って閉館することが決定しました。コレクションはその後青森県立美術館に引き継がれますが、3月までに青森を訪れる機会があるなら、ここでしか得られない体験に、ぜひ足をお運びください。

青森県立美術館(青森・青森市)

青森県立美術館外観(設計:青木淳)

棟方志功は21歳で上京して以降、72歳で亡くなるまで故郷青森に拠点を構えたことはありませんでしたが、どこに住んでいても東北が自身のルーツであるという考えは揺らぐことなく、青森をテーマにした作品をたびたび作りました。2006年にオープンした青森県立美術館は、青森にゆかりのある作家やその風土に根ざした作品を積極的に収蔵しており、地下1階には「棟方志功展示室」があります。板画(はんが)の代表作に加えて、倭画(やまとが)の大作を中心に(※)、300点近くを収蔵。さらには、2023年3月末の棟方志功記念館閉館を受けてその収蔵品が当館に移管されるので、以降はより一層充実した棟方志功コレクションが楽しめることになります。

※板画(はんが)……制作の初期に棟方志功は版画という表現を使っていたが、1942年に刊行された初の随筆集『板散華(はんさんげ)』において、「板の声を聞き、板の生命を彫り起こす絵でなければいけない」という考え方から、自らの作品を以後「板画」と表記することを宣言した。また、肉筆による作品を棟方は「倭画(やまとが)」と呼んだ。

地下1階にある常設展示室「棟方志功展示室」 Photo©小山田邦哉

南砺市立福光美術館(富山・南砺市)

1994年に開館した南砺市立福光美術館

富山県南西部の福光(現・南砺市)。棟方志功は1945年4月、戦火を逃れ東京からこの地に疎開し、以降6年8か月にわたって暮らしました。

研究者の間では、ここでの暮らしが棟方志功の創作に大きな影響を与え、棟方志功“成熟の地”になったと重要視されています。実際、棟方志功を深く知る上で南砺市をツアーすることはとても有意義です。まず、南砺市立福光美術館。棟方が滞在した時期は戦争の関係で物資不足だったため、板画をつくるための版木の調達すらままならない状態でしたが、転じてそれまで行っていなかった実験に積極的に取り組み、結果的にそこから次の展開が開けていきました。美術館の収蔵作品からもそうした実験や模索の過程が感じ取れるでしょう。

また美術館から車で3分程度の場所に、棟方が疎開前から訪れていた光徳寺があり、ここには棟方が描いた巨大な襖絵「華厳松」があります(※現在は巡回展「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」に出品中)。さらにそこから車で5分程移動すると、福光美術館の分館「愛染苑」があり、棟方の旧居「鯉雨画斎(りうがさい)」も保存されています。鯉雨画斎の中を覗くと、押入れやトイレの壁・天井にまで絵が描かれているのが見えますが、とにかくどこにでも絵を描いてしまった棟方のバイタリティが体感できます。

棟方志功の旧居「鯉雨画斎」。棟方が暮らしていた当時、トイレの壁や天井に描いた絵を見ることができる

日本民藝館(東京・目黒区)

1936年開館の日本民藝館

日本民藝館は棟方志功関連の美術館として欠かすことのできない存在です。棟方志功は1936年に発表した「大和し美し(やまとしうるわし)」という作品がきっかけで民藝運動の主導者・柳宗悦と出会います。柳は日本民藝館の初代館長でもありましたが、この大作をコレクションに加えるべく買い上げました。以来、柳は棟方にとって師のような存在であり、柳の薫陶のもと作品が磨かれていきました。日本民藝館に収蔵されている棟方作品は200点程ですが、そのほとんどは柳の審美眼を通して収蔵されたものたちであり代表作が揃います。

なお日本民藝館は棟方志功作品が常設されているわけではありませんので、棟方作品が展示されているかどうかは、あらかじめ美術館にご確認ください。

展覧会情報

◎展覧会「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」が東京国立近代美術館(東京・千代田区)で開催中です。12/3まで。

◎展覧会「秋の展示/安於母利妃」が棟方志功記念館(青森・青森市)で開催中です。12/17まで。

◎展覧会「棟方志功生誕120年 二菩薩釈迦十大弟子への道」が南砺市立福光美術館(富山・南砺市)で開催中です。10/16まで。