オリーブ栽培で柿の産地を活性化!倉沢アナが密着

NHK
2023年12月22日 午後1:51 公開

今回の舞台は滋賀県の北西部、高島市の今津町深清水(ふかしみず)地区。県内随一の柿の産地で、歴史は100年にも及ぶといわれています。ただ、近年、課題になっているのが「担い手の減少や高齢化などによる、耕作放棄地の増加」です。その解決につながればと、滋賀では珍しいオリーブを栽培して産地を盛り上げようと取り組む方を取材しました。
(NHK大津放送局アナウンサー 倉沢宏希)

【歴史ある柿の産地で 耕作放棄地が増加】

県内最大の柿の産地、高島市今津町。実りの季節には、広がる畑がオレンジ色に彩られます。とくに、甘みや実の大きさが魅力の「富有柿」は古くからの特産です。

高島市今津町深清水の柿園の様子

柿の産地としての歴史は大正時代からといわれています。寒暖の差によって生まれる甘い柿が、盛んに出荷されてきました。しかし、最盛期に35haほどあった栽培面積は、高齢化や担い手不足などで20haまで減少。耕作放棄地の活用が課題となっています。

高島市今津町の柿の出荷の様子(昭和50年ころ)

【期待をかけたのは…オリーブ栽培】

そうした中で、産地を盛り上げようと立ち上がった人がいます。今回案内してくださった、桂田隆司(かつらだ・たかし)さん。地域の柿農家などによる任意団体「南深清水FF倶楽部」の代表で、「FF」には「For the future(未来に向かって、未来のために)」という意味が込められています。

南深清水FF倶楽部代表・桂田隆司さん

桂田さんは実家の柿畑を継ぐにあたり、地区の耕作放棄地の問題を解決できないかと考えました。

桂田さん「先祖から受け継いできた土地があるので、荒れてしまうというのがなんとも心苦しいという思いが、心の中に湧いてきました」

その切り札にと目をつけたものがあるということで、桂田さんの案内で柿畑を進んでいくと、柿園の奥に少し開けたスペースが見えてきました。柿とは違う木のようですが…。

案内をする桂田さん

桂田さん「こちらは、オリーブ園なんです。」 倉沢「ええ!オリーブですか?」

耕作放棄地を再整備して、温かい地域で育つイメージがあるオリーブを栽培。地域が注目されるきっかけにしようという狙いです。4年前に植えた100本以上の木が高さ2~3mにまで成長していました。桂田さんによると「ここだけイタリアに似ている」と言われているとか、いないとか…笑。私も、柿畑からオリーブ園に移動してがらりと変わる雰囲気に驚きました。

それにしても、滋賀でオリーブ?と私も思ったのですが、よい柿が育つこの地区は、びわ湖を望む水はけのよい扇状地。実はその条件の良さは、オリーブ栽培にも当てはまるというのです。また、枝の剪定や収穫などの面で柿よりも栽培の負担を軽くできることにも着目。柿の栽培を続けつつ耕作放棄地を活用し、オリーブオイルといった新たな加工品を生み出すことを目指して活動が始まりました。

びわ湖を望む柿園のすぐ隣にオリーブ園が広がる様子

奥に見えるのがびわ湖や柿畑で、手前に広がるのがオリーブ園。このように、柿畑のあちこちにオリーブ園が現れます。

桂田さん「100年続いた柿の産地なんですけど、やっぱり次につなぐ、新しいものが必要かなと思ったときに、できる限り柿よりも省力化して栽培できる、かつ時代にあうようなもので何かないかなと探しておりました。また、オリーブオイルのなかでも国産のオリーブから作られたものは大変少ないという現状があります。将来的な市場性もふまえて、オリーブの栽培に踏み出しました。地域にとっては未来につながるような『希望のオリーブ』になると思っているんです。」

【”初搾りオリーブオイル”への軌跡】

地域の農家らと、5年前から植樹をスタート。雪が積もって枝が折れてしまうこともありましたが、紐で枝を結ぶなど工夫を重ね、無事冬を乗り越えてきました。いまではおよそ400本、1haの広さにまで栽培を広げています。

高島の冬を乗り越えたオリーブの木

ようやく、まとまった量が実るようになった今年、目標としてきたオリーブオイルを初めてつくることにしました。10月には、そのための収穫作業が行われました。

オリーブの実を収穫する様子

大学生「楽しいですね。無心になれます」

地域住民や大学生らが協力し、会話を楽しみながら収穫をしていました。2時間でおよそ20キロの実を収穫。ろ過などを経て取り出せたオイルはわずか900mlでしたが、活動にとっては大きな一歩です。

桂田さん「小さい苗から育ててきたんでね、母親の気持ちと一緒です。育ててきた苦労がよみがえりました。嬉しかったです」

そして11月、初めて搾ったオリーブオイルを地域のイベントで味わってもらうことに。会場では、柿の試食をはじめ、柿を使ったピザやスイーツといったグルメの販売が行われ、今津の柿をアピール!その傍らでオリーブオイルもお披露目し、ブースには多くの人が試飲に訪れました。

柿のイベント会場でオリーブオイルをお披露目する様子

味わった方に感想を聞くと、「グリーンな印象」「さわやかな果実のような香り」「少しピリッとしたスパイシーさがある」と人それぞれでしたが「味も香りも濃い」とよい評判でした。さらに、桂田さんの狙い通り「高島でオリーブ」という組み合わせに驚いている人も。

大津からの来場者「有名な産地といえば小豆島ですよね。なのに高島でできるってビックリでした。応援していきたいです」

大阪からの来場者「この会場に来る途中に柿畑を通ってきたのですが、柿の木の隣に突然オリーブの木が現れて『どういうこと!?なにが起きてるんや!?』と話しながら来ました」

イベントの来場者は1000人以上と大盛況。桂田さんは、今後も柿とオリーブの2本立てで、歴史ある産地をさらに盛り上げていきたいと考えています。

桂田さん「多くの方に足を運んでいただき、私自身もびっくりしています。予想以上に、オリーブオイルに興味のある方が多いのかなと感じました。今後も、柿とオリーブ、この地域の自然を使いながら、持続可能な地域を目指したいです」

【広がるオリーブ栽培】

オリーブというと温暖な地域のものと思いがちですが、実は全国で栽培が広がっています。農林水産省の『特産果樹生産出荷実績調査』(令和2年)によると、近畿地方でも京都や奈良、兵庫、そして東北地方の宮城県などでも栽培されています。全国の栽培面積は、2010年から2020年の10年で3倍以上となっているんです。

オリーブの栽培面積(全国)の推移グラフ

そうしたなか、高島市もオリーブの特産化に向けて力を入れています。耕作放棄地の増加を抑え、加工品の販売で農業収益の向上につなげるなどの狙いもあり、令和2年度以降、苗木を買う費用の補助を行ってきました。現在15の事業者が栽培に取り組み、市内全域でおよそ1600本、広さ5haほどで栽培されているということです。

桂田さんは管理できる規模を見極めたうえで今より100本ほど増やし、計500本ほどにまでオリーブ栽培を拡大する予定です。ただ、あくまで柿産地としての伝統を大事にしており、ユニークな取り組みで知名度を上げて産地を存続させたいという思いがベースにあります。

【若い世代を巻き込み 産地を未来へ】

桂田さんの団体は県内の大学とも連携。収穫作業やイベントには多くの学生の姿が見られました。大学生たちは、今回のイベントで販売されていた柿を使ったグルメの開発にも関わり、今津の柿の良さを生かしつつ新しい食べ方を提案しようと、話し合いや試作を重ねました。当日はフレンチトーストや、ココナッツミルクと柿ジャムを合わせたスイーツ、さらに魚のフライにかけるソースの中に柿を入れたメニューなど130食以上を販売。今後は、オリーブオイルと柿のコラボメニューを考えていく予定です。

イベント当日には、大学生の頃にオリーブの植樹を手伝っていたという人が、東京から駆けつけました。「最初は雪に負けてしまうのではと心配だったのですが、しっかりと実をつけてオイルになっていて驚きました。ここ深清水の土地の良さとオリーブの強さを感じました」と笑顔で話してくれました。

オリーブ栽培を通して柿産地のアピールに繋げながら、桂田さんは「継続的につながりを持つ人」を増やし、地区に活気を生み出していきたいとしています。イベントへの来場者も年々増えているということで、桂田さんは「来年も盛り上げていきたい」と意気込んでいました。

(2023年12月12日放送『おうみ発630・しがリサーチ』より)

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