奈良県の山あいにある人口およそ1000人の川上村。
高齢化が進み、地域のお年寄りの見守りが課題となっています。
こうした中、村では地域を巡回し、長期的にお年寄りの健康を見守る
村所属の看護師「コミュニティナース」が活躍しています。
(吉井 彩恵 記者)
【移動スーパーにナース?】
コミュニティナースの梅本久美子さん(45)です。
土日を除く週5日、村内を回る移動スーパーの販売を手伝いながら
住民の健康をサポートしています。
梅本さん:
「その豆腐はどうやって食べるの?冷ややっこ?」
住民:
「みそ汁や」
梅本さんは買い物に来る住民となにげない話をしながら、
健康に変わりはないか、さりげなく様子を確認します。
さらに、移動スーパーについていくと、梅本さんの到着を待つ住民たちの姿が。
住んでいる人たちに梅本さんの印象を聞くと、
「ありがたいですよ。ちょっとしんどい時があって横になってたんですよ。
ご飯も食べれないし。そのときに助かりましたね」などと返ってきました。
別の日には、目の前が見えないほどの大雨の日もありました。
そんな日でも梅本さんはレインコートを着て車に乗り込み、地域をまわっていました。
【“地域看護”に出会って】
梅本さんが住む川上村は住民の高齢化率が57.4%(2023年6月末時点)に上ります。
県南部の山あいにあるため、お年寄りの見守りが地域の切実な課題です。
そんな村で、梅本さんは村専属の看護師として5年前から働いています。
梅本さんはかつて、県内各地の大病院などで忙しく働いていましたが、自然あふれる環境で子育てがしたいと村に移住。
そこで、地域に密着して住民と関わりながら働く「地域看護」に出会いました。
梅本さん:
「天職というか。『患者と看護師』として関わるのではなく、
このように地域で住民さんと関わって看護につなげる仕事がしたいと
ずっと思っていたので、まさしく私がやりたかった事です」。
【5年にわたって続ける“交換ノート”】
ある日、梅本さんはみずから車を運転して、働き始めた頃から通っている1人暮らしの93歳の女性の家を訪れました。週に1度、様子を見にきているといいます。
梅本さん:
「血圧も良いですわ。異常なし。まだまだ長生きしますわ」。
女性 :
「元気や。そこがあほは長生きするっつって昔の言葉で」。
この女性は足腰が弱く、買い物も簡単ではありません。
家族も近くには住んでいないため、特に気をつけて見守るようにしています。
梅本さんはひとしきり話をした後、女性の家に置いていたノートに気づいたことを書き留めました。
書かれているのは、女性の体調やふだんの様子。家に足りない日用品まで。
離れた場所に暮らす家族が家を訪れた時、女性の日ごろの様子を知ってもらうのが目的です。
ノートをきっかけに家族が女性の異変に気づき、村の診療所に連れて行ったこともあったといいます。
やりとりはおよそ5年にもわたり、ノートには梅本さんと女性、それに家族との繋がりが詰まっています。
女性の家族から「いつもありがとうございます」という言葉が書かれていることもあり、
梅本さんは、コミュニティナースの活動をしていてよかったといいます。
女性は梅本さんについてこう話しています。
「わたしにとってはもう神様みたいな人」。
【コミュニティナースは、地域を支える大切な存在】
梅本さんは「コミュニティナース」の仕事は、地域の住民を医療につなげる大切な存在だといいます。
梅本さん:
「住民さんと深く関わって、その人たちが何に困っていて何を必要としているのか、 そこをサポートしていくのが私たちの役目だと思っています。
コミュニティナースがもっと本当に全国に広まっていったらいいなという風に思います」。
吉井 彩恵 記者
2023年入局。
梅本さんと地域の人が家族のような関係を築いているのが印象的でした。