もしあなたが犯罪被害に遭ったら……支えてくれる“窓口”は

NHK
2022年11月29日 午後7:06 公開

「悲しみや痛みに向き合う時間もないまま、“やるべきこと”が次々と押し寄せる」

犯罪被害者・遺族の人たちが語った「事件後の日々」。

警察や検察、弁護士とのやりとり、治療のための入院・通院、葬儀や行政手続きに裁判への対応……当事者になるまで想像もしていない事態の連続だったと言います。

自分や家族が犯罪被害に遭ったとき、どんな支えがあるのでしょうか。

無差別事件が相次ぎ、いつ誰が被害に遭うかわからない今、被害者や遺族を支える民間の窓口について、多くの人に知ってほしいと思います。

(クローズアップ現代 ディレクター 堤 早紀)

47都道府県にある民間団体「被害者支援センター」

東京メトロ西早稲田駅構内の被害者支援都民センターを示す看板

東京メトロ・西早稲田駅。

ここから徒歩1分の場所にある「被害者支援都民センター」は警察や行政などと連携しながら被害者を支える役割を担う公益社団法人です。

実は、全47都道府県に1つずつ(北海道のみ2か所・形態はセンターによって異なる)こうしたセンターが設けられています。都民センターに寄せられる相談件数やその内訳を見ても、いかに多くの人が深刻な被害に遭い、支援を必要としているかがうかがえます。

被害者支援都民センターの外観

(左側のビルの一角に支援センターはある)

【被害者支援都民センター】

○相談・支援は無料

○受付時間

月木金:9時30分~17時30分

火水  :9時30分~19時00分(祝日・年末年始を除く)

被害者支援都民センターの2021年度の相談状況のグラフ

 ○全国の被害者支援センターの窓口一覧はこちら

公益社団法人・全国被害者支援ネットワーク (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます

 

何時間も話を聞き、裁判所に付き添うことも

被害者支援都民センターの様子

(都民センターで働く25人のうち16人が非常勤。40代・50代の女性が中心で、中には大学で被害者支援を学んだ20代・30代も) 

 

ここに相談を寄せる人の多くが、ある日突然、自身や家族が被害に遭った人たちです。それぞれの必要に応じた支援を行いますが、長期にわたることも少なくありません。

① 電話相談

警察や弁護士、検察庁から紹介されて相談に来る人もいれば、自身で探してたどり着く人もいます。まずは電話で話を聞き、継続的に支援が可能かどうかを判断し、面接相談につなげます。

(※「詐欺被害」は支援対象とはならず、「DV」や「虐待」は専門の相談機関を紹介することになります)

② 面接相談

被害者支援都民センターの相談室

被害者の状況や抱えている問題を整理し、必要な支援を見極めていきます。

特に事件から日の浅い人の場合は刑事手続をはじめ、やらなければならないことが多い上に、精神的にも混乱期にあたるため、じっくりと話を聞くことが欠かせません。カウンセリングやトラウマに関する専門の心理療法プログラムも行っています。早期に支援に入ることはその後の心の回復にとっても大切になるといいます。

③ 直接的支援

亡くなった被害者の遺族の家を訪ねたり、被害者が手続きのために関係機関に行かなければならないときに付き添いしたりすることを指します。例えば、事件の影響で働くことができなくなって経済的な問題に直面したり、外に出ることさえできず生活面のサポートが必要になったりする人もいます。手続きのために役所に同行したり、センターによっては買い物を代わりに手伝ったりすることも。

最も多いのは刑事手続のための付き添い支援です。検察庁で事情を聞かれるときや、証人尋問や意見陳述で法廷に立たなければならないときなど。裁判所内の控室を手配したり、加害者と鉢合わせすることのないような動線を確保したり、きめ細かい支援を行います。

被害者支援都民センター・相談員のスケジュール。付き添いの予定がびっしりと埋まっている

(事務所のホワイトボードにびっしりと書き込まれた予定。裁判への付き添いは最低でも2人1組で行っている)

 

④ 自助グループ支援

殺人事件や交通犯罪などで大切な人を亡くした遺族が安心して気持ちを語り合える場を提供することも大きな役割の一つです。

毎月の定例会では「話す人を批判しない」、「ここで聞いたことは外にもらさない」などいくつかのルールを守りながら、事件当時を振り返って思うこと、周囲の対応で傷つけられたことや助けられたこと、最近感じていることなどを思いのままに話してもらい共有します。被害者の孤立感の軽減という意味でも大切な時間です。

“再び自分の足で歩ける日まで”

相談員たちは、直接的支援が終わった後も、亡くなった方の命日には遺族に手紙を送り続けているといいます。どのような思いで被害者に向き合っているのか。

被害者支援に携わって20年以上になるという都民センターの事務局長兼相談支援室長の阿久津照美さん(54)は元警察官。被害者に対応する部署に異動したことをきっかけにこの道に進むことになったといいます。

被害者支援都民センター・阿久津照美・事務局長兼相談支援室長

相談員 阿久津照美さん

「警察官としてさまざまな事件に関わってきましたが、被害者対応の担当になるまでは被害に遭った人たちの気持ちにまで考えが至っていませんでした。被害者の皆さんからお話を聞くようになって、事件そのもので受けた悲しみや痛みはもちろん、その後の生活でも周囲から心ない言葉を浴びせられたり、仕事に復帰できずにいたりと何重にも苦しんでいる現実を目の当たりにして、何かしなければという思いに駆られるようになりました」

事件のあと被害者や遺族が向き合う裁判などの司法手続きは、ただ負担であるだけでなく、その後の人生を歩んでいく上で重要な機会になる――だからこそ、心がけていることがあると言います。

相談員 阿久津照美さん

「被害に遭ったことで、確かに一時的には力を失っている状態かもしれない。でもいずれは自分の足でまた歩いていかなければならないから、力を取り戻してもらうことが重要なんです。特に刑事手続きにおいては、私たちがリードするのではなく、あくまでも選択肢を提示するのみ。つい先が見えていると言いたくなるときもありますがぐっと堪えて、被害者・遺族自身が自分で決める主体性を大事にしています。“やり遂げられた”と実感し自信をつけてもらうことが、次への一歩につながるのです。

被害者に100%寄り添えるのは私たちしかいないとも思っています。例えば、被害者参加制度(※)で法廷に立った後、“大変だったね”“がんばったね”と声をかけたり、思いのはけ口になれたりするのは相談員だけ。警察や検察、弁護士は捜査や裁判が終わればつながりは終わりますが、私たちは民間だからこそ、中長期的に関わっていくことができます」

(※刑事裁判に被害者や遺族が参加し、法廷に立って加害者に直接質問したり、刑の重さについて意見を述べたりすることができる制度のこと)

被害者支援都民センター内にあるポスター。「1人で苦しまないで 安心してご相談ください」の文字がある

特別な言葉はいらない、周囲の人にもできることはある

最後に阿久津さんが語ったのは、社会の理解が必要だということ。

特に刑事手続きの中では、相談員が裁判の傍聴席も取れないこともあるなど、支援者の立場・地位が非常に低いと感じるといいます。そして「自分からは遠い話だ」と感じている多くの人に、関心を持ってほしいと語りました。

被害者支援都民センターの電話相談の様子

相談員 阿久津照美さん

「『大変な被害に遭った人に、何て声をかけたらいいかわからない』『そっとしておいてあげた方がいい』、周囲の人はそんなふうに思うかもしれません。確かに自分が体験しなければ、その状況や心情は正直わからないのかもしれません。

でも、もし『その人のために何かできたら……』という思いがあるのであれば、一歩踏み出してほしいと思います。『わからない』のであれば、ぜひ『知ろう』としてください。被害者がどんな状況や心情になるのか、どんなことが助けになるのか、多くの方々に知ってほしいのです。周囲の人ができることはたくさんあります。決して無理をしないでできる範囲でやれることをやればいいのです」

都民センターでは、周囲の人ができることとして、次のようなことをあげています。

○家事、育児、介護、仕事、学業など、日常生活上での具体的な手伝いを申し出る。

○相手の様子を見つつ、これまでと変わらない付き合いを心がける。

○慰めや励ましなど特別な言葉をかけようとするより、相手が話したいときに聞き役にまわる。「寄り添う」姿勢が大きな支えになる。

相談員  阿久津照美さん

「自分の気持ちを理解してくれる人がいるということが、被害者にとって何よりも安心感につながります。被害者が自分から行動を起こさなくても充実した支援が受けられ、周囲に安心して自分の気持ちを話せる。そんな環境になるよう、私たちも努力を続けたいと思っています」

 

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