Z世代と“戦争” 3千人アンケート

NHK
2023年8月15日 午後6:50 公開

太平洋戦争の終戦から78年がたち、日本では戦争を直接経験していない世代が大多数となりました。一方、世界に目を転じるとロシアによるウクライナ侵攻など、戦争・紛争のニュースが連日伝えられています。そんな中、いまの日本の若い世代は戦争と平和についてどのような考えを持っているのでしょうか?

8月15日放送のNHKスペシャル「Z世代と“戦争”」ではインターネットを通じてアンケートを実施し、全国の13歳から29歳の男女3,000人から回答を得ました。

(Z世代…1990年代から2000年代に生まれた10代20代の若者) 

(放送から1週間はNHKプラスで見逃し配信)

​​​ ※アンケート実施期間 2023年7月7日~8日 

 ※性年代人口構成比に合わせ回収 

 ※文中のグラフは小数点以下切り捨て 

■10年以内に日本が戦争に巻き込まれる可能性はあると思うか? 

アンケートで『10年以内に日本が戦争に巻き込まれる可能性はあると思うか?』を尋ねたところ、「あると思う」が17%、「どちらかといえばあると思う」が38%となり、あわせると半数を超えていました。一方、「どちらかといえばない」は21%、「ないと思う」は13%でした。 

「あると思う」「どちらかといえばあると思う」と答えた人たちからは、自由記述で次のような回答がありました(一部抜粋) 。

  • 朝鮮半島における緊張感も高まっていると思うから(男性・16歳) 

  • 台湾有事が起こった際には、日本の自衛隊もアメリカ軍と共に派遣されると考えられるから(男性・17歳) 

  • 集団的自衛権が行使される可能性があると思ったから(女性・18歳) 

  • 戦争経験者が少なくなってしまい、また同じ過ちをしてしまうかもしれないから(男性・18歳) 

  • 日本にはアメリカの基地があるためそこを攻撃されることがあると思ったから(男性・16歳) 

  • チャットGPTなど、いろいろなテクノロジーを使った争いが起こり得ると思うから(女性・28歳) 

一方、「ないと思う」「どちらかといえばないと思う」と答えた人たちからは、自由記述に次のような回答が寄せられました(一部抜粋) 。

  • 日本は戦争の恐ろしさを学んでいるため、反対派が多数を占めていると思うから(男性・22歳) 

  • アメリカの核の傘に入っているから(男性・25歳) 

  • 日本は憲法で戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認を定めているので(女性・19歳) 

  • 戦争に参加する兵力がないから(男性・14歳) 

  • 国民が許さないと思うから(女性・28歳) 

  • 日本人が戦争はこりごりだと思っているため(女性・27歳) 

■もしも日本が戦争に巻き込まれたらどうするか?

『もしも日本が戦争に巻き込まれたらどうするか?』という質問に対しては、「戦闘に参加せず戦争反対の声を上げる」が36%と、最多となりました。 

「戦闘に参加せず国外に逃げる」は21%、「戦闘には参加しないが戦いを支持する活動に参加する」は10%、「戦闘に参加する」は5%、「わからない/答えたくない」は22%となりました。 

この設問について、番組に参加した専門家からは次のような指摘がありました。 

長 有紀枝さん

立教大学 社会学部教授 国際NGO「難民を助ける会」会長   

「平時であれば、『きょうごはん何食べようかな』とかいろんなことを個人が決められるが、ひとたび戦争が始まってしまったら、自分や家族の命に関わることでさえ、場合によっては国が決めたことに従わなければいけなくなる。また、病気の方とか、あるいはヤングケアラーでどなたかの面倒を見ている方などは、たとえ『好きにしていいですよ』と言われても、動くこともできなくなる。戦争の実際というのは、このアンケートのような選択肢すらなくなるものだと思う」 

小泉 悠さん 

東京大学先端科学技術研究センター専任講師(ロシア軍事・安全保障政策) 

「戦争のときに『戦いますか?』という問いかけは、われわれが『徴兵制』などの軍事的な制度を受け入れて「社会の中に実装する覚悟があるかどうか」という問いかけでもあると思う。ウクライナの人たちが今、あれだけ幅広く戦えているのは徴兵制があるからであり、毎月仕事の合間に軍事訓練させる制度があったからでもある。今回のアンケートは、『戦う意思がある日本国民は、その気になったら戦争で戦える』という前提で作られているが、実際はなかなか簡単ではない」 


ロシアによるウクライナ侵攻は、双方に多くの犠牲者を出しながらいまも収束の兆しは見えません。世界中で繰り返されてきた戦争の悲劇は、Z世代の目にどう映っているのでしょうか。アンケートでは、戦争そのものについての質問も行いました。 

■この世界から戦争はなくせると思うか?

『この世界から戦争はなくせると思うか?』という質問に対し、「なくせる」が23%だった一方、「なくせない」が50%となりました。「わからない/答えたくない」は25%でした。 

「なくせる」と答えた人たちからは、自由記述で次のような回答がありました(一部抜粋) 。

  • 世界中の人々がお互いを尊重し合えるようになればなくせると思う(男性・22歳) 

  • 国連などが正しく機能すれば無くすことができると思う(女性・29歳)

  • グローバル化によって少しずつ交流も増えていってるから (男性・15歳)

  • 戦争に完全な勝者がいないことを知っているため(女性・19歳)

一方「なくせない」と答えた人たちからは、自由記述で次のような回答がありました(一部抜粋) 。

  • 資源の偏りなど、不平等がある限りなくならない(男性・17歳) 

  • 自分たちの正義が人それぞれ違うから(女性・22歳) 

  • 人々の戦争の記憶は年月がたつと薄れてしまうから(女性・22歳) 

  • 戦争はビジネスになってしまうから(男性・16歳) 

  • 人は常に他国より自国を優先するから(男性・14歳)

■戦争について知りたいことは何ですか?

『戦争について知りたいこと・疑問に思うことは何か?』を複数回答で尋ねました。もっとも多かったのは「誰がどうすれば戦争を回避できるのか」で43%、次いで「戦争はどうして起きるのか」で41%した。さらに「日本で戦争が起きたらどうなるのか」「日本で戦争が起きる可能性はどれくらいか」が上位に並びました。 

また、「どうやったら戦争をなくせるのか」が33%、「なぜ人は戦争を繰り返すのか」が31%などとなりました。 

■平和の実現に向けてあなたにできることは?

『平和の実現に向けてあなたにできることは何か?』を複数回答でたずねたところ、「学校の授業で平和について学ぶ」が40%、「外国の文化・価値観を学ぶ」が36%でした。平和のためにみずから学ぶことが大切だと感じている様子がうかがえました。 

次いで、「政治の動向に意識的にある」、「戦争や平和について世代を越えて話し合う」が上位となりました。 


今回のアンケートでは、終戦からことしで78年となる『太平洋戦争』についても尋ねました。太平洋戦争では多くの若者が戦地に送り出され、命を失いました。戦争を直接経験した世代が少なくなる中、Z世代は過去の戦争にどんな考えを持っているのでしょうか。

■太平洋戦争について知りたいことは何ですか?

『太平洋戦争について知りたいことはなにか?』を複数回答で尋ねたところ、「戦地に行った若者の思い」と「被害が拡大しても戦争を続けた理由」が29%で、もっとも多い結果となりました。 

次いで、「開戦に至った経緯」や「当時の日本人は政府に反対しなかったのか」、「戦争責任は誰にあるのか」が多い結果となりました。「とくにない」は25%でした。 

■メディアから発信される太平洋戦争の情報に関心は?

太平洋戦争については、NHKを初め多くのメディアが情報発信を続けてきました。Z世代に『メディアから発信される太平洋戦争の情報に関心があるか?』を尋ねたところ、「とても関心がある」が11%、「ある程度関心がある」が43%となり、あわせると半数を超えていました。 

一方、「あまり関心がない」は28%、「まったく関心がない」は6%でした。 

■太平洋戦争の情報に「関心がある」理由は?

先ほどの質問で「とても関心がある」「ある程度関心がある」と答えた人に、その理由を複数回答で尋ねました。結果は、「二度と戦争を起こさないようにしたいから」が60%、「歴史上 大きな出来事だったから」が55%で上位となりました。 

次いで、「国際的な問題として今もなお続いているから」が28%、「諸外国との関係を考える上で知るべきだから」27%、「今の社会や暮らしにも影響があると思うから」が27%となりました。 

■太平洋戦争の情報に「関心がない」理由は?

一方で、メディアから発信される太平洋戦争の情報に「まったく関心がない」「あまり関心がない」と答えた人に複数回答で理由を尋ねたところ、「暗い話題にふれたくない」が29%で最多となりました。 

次いで、「内容が難しい」が28%、「内容がマンネリ化している」が20%、「自分とは関係ないと感じる」が18%、「話が大きすぎて考えても仕方がない」が15%となりました。 


8月15日放送のNHKスペシャル「Z世代と“戦争”」では、スタジオに全国のZ世代が集まり、このアンケート結果をもとに「戦争を起こさないために自分たちは何ができるのか」、専門家とともに議論します。(放送から1週間はNHKプラスで見逃し配信)