吉永小百合主演、早坂暁脚本で描いた人間模様
医師免許を持っていなかった木原医師(ケーシー高峰)は、子宮がんの芸者・千代春(楠トシエ)と連れ立って静かに町を出ていき、芸者・雀(大信田礼子)も旅役者の辰夫と姿を消す。山根(林隆三)は、この町で自分を見つめ直すために刑事を辞めることを決意。金魚(秋吉久美子)に育てられた時子(中村久美)は晴れて芸者・小夢に。別れと出会いをくり返し、人々がひととき肩を寄せ合った温泉町にも、間もなく厳しい冬が訪れる。
煙草屋旅館の跡取り・泰男(岡田裕介)は、かつて夢千代(吉永小百合)とともに東京へ出て行った過去がある。しかし、胎内被爆がもとで健康を害した夢千代はひとり故郷に戻り、母の営む置き屋を継いだのだ。泰男は、母である女将・春江(加藤治子)に旅館を近代化する話をもちかけるが、春江は昔ながらの旅館を維持したいと断る。一方、刑事に追われる市駒(片桐夕子)がようやく夢千代の前に姿を現し、事件の経緯を語りはじめる。
芸者・金魚(秋吉久美子)のもとへ、彼女と心中をはかった相手の母と妻がやって来た。生き残った金魚に子どもがいると知り、引き取りたいと言うのだ。一方、山根刑事(林隆三)は胃潰瘍が悪化し、木原医師(ケーシー高峰)の診断で療養を余儀なくされるが、市駒(片桐夕子)逮捕への執念を捨てきれない。そんな山根に、木原は鳥取の大きな病院に行くよう強く勧めるのだった。ある晩のこと、夢千代(吉永小百合)は市駒の声を聞く。
山根刑事(林隆三)が殺人容疑で追っていたのは、かつて夢千代(吉永小百合)の置屋にいた元芸者の市駒(片桐夕子)だった。市駒が夢千代と連絡を取っているのではないかと疑う山根は、事件当時の情報を得るために、夢千代の病床日記を見せてほしいと頼み込む。その日の日記は病院にあった。山根と地元の警察署の藤森刑事(中条静夫)は、病院で日記を調べるうちに、夢千代の病状について知ってしまうことになる。
山陰のひなびた温泉町で芸者の置屋「はる家」を営む夢千代(吉永小百合)は<胎内被爆>という宿命を背負っていた。夢千代のもとには、様々な過去を抱えた芸者たちが集まってくる。夢千代はある日、神戸の病院から帰る急行列車の中で、殺人容疑で元芸者の市駒を追ってきたという神奈川県警の山根刑事(林隆三)と出会う。その後山根は、市駒の捜査のために夢千代が住む温泉町に姿を現し町の人々に聞きこみを始めた。