要注意! あなたの身近に潜む”借金投資“の罠

NHK
2022年9月13日 午後5:00 公開

“真面目に働いていても、稼げない” 若者たちをはじめとする、将来に不安を抱く人たちに広がる「借金投資」。悪質な業者に指南され、ローンを不正利用して高額の投資につぎこむトラブルが続出しています。

クローズアップ現代で、5月に「借金投資」の問題について放送したところ、視聴者から200件を超える体験談などの情報提供が寄せられました。そこから見えてきたのは、身近なきっかけから、思いもよらず「借金投資」のトラブルに引きずり込まれてしまうという実態です。

(クローズアップ現代取材班)

【ケース①】人気の投資ユーチューバーなど、影響力のある“インフルエンサー”につられて…

個人投資の熱が高まっている今、カリスマ投資家がノウハウを紹介する動画がユーチューブで人気を集めています。しかし、こうした動画の一部には、悪質業者が関係し“借金投資”トラブルのきっかけになっているものがあるのです。

カリスマ不動産投資家のユーチューブ動画

カリスマ不動産投資家

〈カリスマ不動産投資家のユーチューブ動画 チャンネル登録者数は8万人〉

カリスマ不動産投資家の動画をきっかけに、4000万円のローンを組んで不動産への“借金投資”をした30代の男性が取材に応じてくれました。

不動産への“借金投資”をした30代の男性

〈不動産への“借金投資”をした30代の男性〉

2人目の子どもが生まれて、将来への資産形成に不安を抱えていた男性は、動画をきっかけに、この投資家が主催する投資セミナーや情報交換のための交流会に参加するようになりました。

そこでは、参加者一人一人に講師と呼ばれるアドバイザーがつき、投資のノウハウを教わるだけでなく、不動産業者や物件の紹介を受けることができました。

カリスマ不動産投資家主催のセミナーの様子

〈カリスマ不動産投資家が主催するセミナーの様子〉

男性は、講師から紹介された不動産業者を通して物件を購入することを決意します。
その時、業者から提案されたのは、本来は投資に使うことができない住宅ローンの不正利用でした。居住用にしか使えない住宅ローンを利用して、投資用に不動産を購入することです。不正が発覚すると、金融機関側からローンの一括返済を求められます。

男性は投資家や講師に信頼を抱いていたことから、言われるままに“借金投資”をしてしまいます。

しかし購入後、物件の価格が相場より1000万円ほど高くつり上げられていたことが発覚。慌てて講師に問い合わせても、既に音信不通となっており、投資家に問い合わせても「講師が勝手にやったことだ」と、取り合ってはもらえませんでした。

番組に寄せられた情報によれば、こうした投資ユーチューバーだけでなく、さまざまな分野のインフルエンサーが“借金投資”の入り口になっている可能性が浮かび上がってきました。

【ファイナンシャルプランナーから番組に寄せられた情報】

「不動産業者から『住宅ローン・フラット35を活用した不動産投資をお客様に提案してほしい』と依頼がくる事もあります。報酬として100万円を提示されたこともあります」

【投資コラムニストから番組に寄せられた情報】

「私のSNSには、さまざまな不動産業者から『“ブローカー”になって、客を紹介してくれないか?』 と多数のメッセージが届きます。業者はフラット35でファミリー向けのマンションに投資してくれる投資家を探しているといいます。ターゲットは若者やギャンブル等の借金で困っている人だと言っていました」

【ケース②】ネイルサロンやエステなどのサービスを無料で受けられる、という勧誘につられて…

もともと投資には興味がなかったという人が、意外なきっかけから“借金投資”のトラブルに巻き込まれてしまうことも少なくありません。

20代の女性が数千万円の不動産に“借金投資”をしてしまったきっかけは、ネイルサロンやエステなど、憧れのサービスを無料で受けられるという誘いでした。

ネイルサロンのイメージ

女性は、交友関係があった経営者の男性から「仕事で提携しているネイルサロンやエステ、美容室などのサービスを無料で受けさせてあげる」という申し出を受けます。たびたびサービスを受けさせてもらううちに、男性への感謝の気持ちと、信頼感が芽生えていきました。そして、男性から不動産投資を勧められ、疑うこともなく不正なローンを組んで物件を購入してしまったのです。

【ケース③】副業コミュニティの仲間につられて…

収入の確保や仕事のスキル向上のために増え続けている「副業」。ちまたには副業の始め方についてのアドバイスや求人情報などを得られる「副業コミュニティ」が、数多く存在します。しかし、こうした場にも“借金投資”の罠が潜んでいるのです。

取材に応じてくれた20代の男性は、当時付き合っていた彼女と共に副業コミュニティに参加しました。そのコミュニティでは参加者同士で親交を深め情報交換をするための交流会がたびたび開催されていました。あるとき男性が交流会に参加すると、副業コミュニティの主催者から懇意にしているという不動産業者を紹介されます。

その後、男性は業者から再三にわたって「不動産投資をしないか」と声を掛けられるようになりました。もともと投資には興味が無かったものの、「副業コミュニティでも多くの人がやっている」「サブリース※だから、家賃収入が保証されている」などと執拗に勧誘され、“借金投資”に踏み切ってしまいました。

※サブリース
所有者から業者が物件を借り上げて、入居者に又貸しする仕組み。
物件の管理を業者に任せる代わりに、たとえ空室があっても定額の家賃収入が保証される契約になっている場合が多い。  

副業コミュニティをきっかけに借金投資をした男性

〈副業コミュニティをきっかけに“借金投資”をした男性〉

【ケース④】ネットワークビジネスの仲間につられて…

若者たちの間で広がる「ネットワークビジネス」のコミュニティも、“借金投資”のターゲットを探す不動産業者にとって格好の草刈り場になっていることがわかりました。

ネットワークビジネスとは、会員が口コミによって友人や知人に商品を販売したり、会員になるよう勧誘していく仕組みのこと。次々と勧誘して商品が売れたり会員を増やしたりすると、その分の報酬が入ることになっています。

取材に応じてくれた30代の男性が参加していたのは、ホテルの宿泊会員権などを販売するネットワークビジネスのコミュニティでした。

ネットワークビジネスのホームページを見る男性

〈ネットワークビジネスのホームページを見る男性〉

しかし、男性はうまく収入をあげられず、数百万円ほどの借金を抱えることになってしまいます。困り果てていた時、コミュニティのリーダーから「稼げる話がある」と声を掛けられました。

そしてリーダーから紹介されたのは、知人だという不動産業者。
「不動産投資をすれば、安定した家賃収入が得られ、物件は将来の資産にもなる。借金を帳消しすることができる」と持ちかけられます。

不動産業者に“借金投資”を持ちかけられるイメージ

「なんとか借金を返済したい」と、わらにもすがる思いだった男性は、コミュニティのリーダーに後押しされ、“借金投資”に踏み切りました。

しかし、業者に言われるまま契約したのは、投資に使うことができない住宅ローン。
さらに購入後、物件は相場よりも1000万円も高いことが発覚しました。

このコミュニティのリーダーと不動産業者は結託して、男性と同様に多くの会員を“借金投資”に誘っていたと見られています。

取材では、ネットワークビジネスのコミュニティに出入りしている不動産業者に話を聞くことができました。「こうしたコミュニティでは、影響力を持つリーダーが勧めれば疑うことなく投資に踏み切るため、ターゲットを見つけやすい」と言います。そして、契約が成立すると、リーダーには多くて200~300万ものキックバックが支払われると言います。

【ケース⑤】婚活やマッチングアプリなど、出会いの場につられて…

婚活やマッチングアプリなど、出会いを目的とした場にも“借金投資”の罠が潜んでいます。

情報を寄せてくれた女性が、“借金投資”のトラブルに巻き込まれたきっかけは婚活パーティで出会った男性に「投資を教えてあげる」と誘われた事でした。

マッチングアプリをきっかけにした“借金投資”のトラブルも続出しています。取材では、不動産業者がマッチングアプリでの勧誘を仕事とする“勧誘員”を雇い、組織的に“借金投資”のターゲットを探している実態が明らかになりました。

実際に、不動産業者のもとで“勧誘員”をしていたという20代の女性に話を聞いたところ、不動産業者が女性の顔写真や身分証を使ってマッチングアプリに登録し、たくさんの男性にメッセージを送っていたと言います。

そして、実際に出会うことができると「投資に興味があるから一緒に勉強して欲しい」「将来結婚する人には投資などで稼いでいて欲しい」など巧みに投資へと誘い込み、不動産業者へと紹介していくのです。

番組には、実際にマッチングアプリを介して女性から“借金投資”に誘われたという20代の男性からも情報提供がありました。不審に思い投資を断ると、今度は「チームの仲間にならないか?」と誘われたと言います。

スマートフォンの画面(イメージ)

男性は高額の報酬を提示され、不動産業者の指示を受けて何人かの女性にマッチングアプリで“借金投資”の勧誘をしてしまったといいます。

“借金投資”に狙われる若者世代が、アルバイト感覚でトラブルを拡大させてしまっている実態も明らかになっています。

今回の番組では、「スクープリンク」に寄せられた視聴者のみなさまからの情報で取材を進めることができました。これからも身近に起きているさまざまな情報提供を募集しています。みなさんの声をお寄せください。

👉 クローズアップ現代 スクープリンク

●相談窓口はこちら

国民生活センターや各地の消費生活センターでは、消費トラブルの相談に応じています。自分が不正をしてしまったという負い目を感じる人も、遠慮なく相談して欲しいとのことです。

👉 独立行政法人 国民生活センター (※NHKサイトを離れます)

👉 消費者ホットライン188(いやや!) (※NHKサイトを離れます)

(局番なしで)電話番号 188 におかけください。日本全国のお近くの消費生活相談窓口につないでくれます。商品やサービスなど消費生活に関する苦情や悩み、問い合わせなどに専門の相談員が対応します。

※土日祝日に都道府県の消費生活センターなどが開いていない場合には、国民生活センターに電話がつながります。

【関連番組】

関連番組「追跡!投資ブームの影で広がる借金投資

クローズアップ現代 2022年9月13日放送

👉 追跡!投資ブームの影で広がる借金投資 ローン不正利用の実態(※9月20日まで見逃し配信)

【あわせて読む】

前回放送「トラブル急増!不正ローンで広がる“借金投資”」

👉 前回放送「トラブル急増!不正ローンで広がる“借金投資”」(2022年5月24日)のダイジェスト記事はこちら

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