働くみんなでお金を出資して、事業を立ち上げ、みんなで話し合いながら経営していく。そんな「協同労働」という働き方が、注目されています。
ㅤ
協同労働では、自ら出資して経営方針にも関わるため、上下のないフラットな人間関係を築きやすいです。そのため、一方的に辞めさせられることはまずありません。そして、みんなでの話し合いがまとまれば、新しい事業に挑戦することもできます。
協同労働は、具体的にどんな働き方なのでしょうか?
コロナ禍で出会った「協同労働」- 仕事への “やりがい” を見つけた
ㅤ
千葉県に住む石山翔太さん(25)は、コロナ禍で失業していましたが、去年10月から、協同労働の団体が運営する、介護施設の送迎バス運転手の仕事につきました。
石山さんの所属する協同労働の団体が手がける事業は、介護施設の送迎バスの運行、ヘルパーの派遣、清掃などで、売り上げは年間約5億円、220人が働いています。協同労働は、働くみんなで話し合って経営方針を決めていくため、この団体では月に1回会議を開いています。働き始めて半年の石山さんも会議に出席し、積極的に発言。同僚と議論を戦わせるそうです。
石山さんは、以前食品関係の会社の正社員として7年間働いていましたが、体調が悪くても休みを取ることもできないことから退職。その後、非正規雇用の仕事を転々としていました。協同労働は、これまでの働き方とは、まったく異なるものだったといいます。
石山さん「最初の仕事をやっていたときは、機械じゃないですけど、上から命令されて物事ぼんぼんぼんやるだけの感じだったんです。けれど、ここに入ってからは、みんなで相談して協力してやるっていうのが、ここで働けて良かったですね。」
この半年で仕事にやりがいを見いだした石山さん。「急な体調不良にもっと対応してほしい」という利用者の声を聞き、同僚とともに臨時の送迎に対応するチームを編成し、好評を博しました。
石山さん「仕事に対する姿勢も変わってきていると自分でもちょっと思ったりして。自分がやりたい仕事ができているというのがあるかもしれないですね。」
非正規労働で“部品のように”働かされたと感じ、その後コロナ禍で失業していた石山さん、「協同労働」と出会うことで、働く意欲を取り戻したばかりか、事業所の業績アップに大きく貢献したのです。
「協同労働」の力で、大企業に対抗 ― 生活がガラリと変わった!
ㅤ
タクシー運転手「コロナ禍で本当に苦しかったけど、協同労働のアプリやサポートのおかげで、すべてが変わったんだ!」
アメリカ、ニューヨークで、協同労働の新たな取り組みが注目を浴びています。タクシー運転手たちが「プラットフォーム協同組合」という協同労働の団体で運営する配車アプリです。利用者は、アプリを通じてタクシーを予約することができます。
ㅤ
これまで、こうしたアプリは、大手IT企業が管理するものが一般的でした。運転手は個人事業主と位置づけられ、手数料を払った残りが収入になっていました。一方、協同労働にして自分たちでアプリを運営すると、同じように一定の金額をひかれるものの、その割合は自分たちで話し合い決めることができます。その金額は、大手IT企業の手数料より低いことが一般的で、運転手の利益の確保につながると期待されているんです。
5月26日のクローズアップ現代+「グローバル企業にも負けない!? 世界で注目の働き方」では、このほか、地方活性化に一役買っている日本独自の取り組みなど、「協同労働」の最新情報をお届けします。
あわせて読みたい「協同労働」の記事
▶ ワーカーズコープ連合会 古村伸宏理事長に聞く!協同労働とは?